西江家住宅とは

西江家住宅は、岡山県高梁市成羽町坂本にある豪農商西江家の屋敷で、江戸時代後期の主屋と明治初期の門・座敷・蔵など計9棟が、平成15年(2003年)に登録有形文化財となった。地元では「西江邸」の名で知られる。

屋敷は坂本の谷を見下ろす斜面に築かれ、石垣を三段に積んで平場をつくっている。高梁市の文化財解説はこの石垣を城郭の構えにたとえている。正面の東側に門と座敷、馬小屋が並び、奥へ進むほど蔵と私的な座敷が増える構成で、1軒の住宅が9件の登録に分かれているのはそのためである。

西江家住宅は現在も西江家の人々が暮らす個人の住まいである。見学は予約を受けた日に限って案内される。

西江家住宅の成り立ち ― 庄屋と弁柄の家

家伝と高梁市の解説によれば、西江家は室町時代末期にこの地へ移り住んだ一族を祖とし、戦国時代には毛利氏に従い、関ヶ原の戦いののち武士をやめて農に帰った。江戸時代の坂本一帯は幕府領で、西江家は郡中惣代庄屋として村々のとりまとめにあたり、屋敷は代官御用所を兼ねた。所有者の案内は、西江家住宅に白洲跡・郷蔵・駅馬舎・手習い場といった役所としての施設が残ることを挙げている。

家の富を支えたのは赤色顔料の弁柄である。家伝では正保4年(1647年)に3代目が弁柄づくりに着手し、6代目の西江兵右衛門が宝暦元年(1751年)に本山鉱山を開いて、原料の緑礬(ローハ)を大量に生産できるようにしたという。高梁市の文化財解説は量産化の年を寛延3年(1750年)としており、資料によって1年のずれがある。

吹屋の弁柄は伊万里焼や九谷焼の上絵付け、漆器、建物の塗料として全国に出回った。安価な工業製の酸化鉄に押されて製造は昭和期に途絶え、その年を所有者の案内は昭和49年(1974年)、市の解説は昭和46年(1971年)とする。18代目は平成20年(2008年)に新しい製法で弁柄を復活させている。

令和2年(2020年)、西江家住宅は「西江家住宅主屋ほか」として日本遺産「『ジャパンレッド』発祥の地 -弁柄と銅の町・備中吹屋-」の構成文化財に加わった。

西江家住宅の年代 ― 伝承と登録の食い違い

所有者と高梁市観光協会は、現存する建物の創建を宝永・正徳年間(1704〜1715年)としている。これに対し、文化庁の登録は主屋と穀蔵を江戸時代後期(1751〜1829年)、残る7棟を明治初期のものとし、主屋は明治27年(1894年)頃に改造されたと記す。本サイトの西江家住宅の各棟のページは、文化庁の登録の年代に従って書いている。

所在地の表記にも違いがある。文化庁のデータベースは9棟のうち8棟を「高梁市坂本1604」、旧馬小屋及び男部屋だけを「高梁市成羽町坂本1604」と載せる。現在の住所表記は後者で、所有者・高梁市ともこちらを使っている。

西江家住宅の配置 ― 門から奥へ

西江家住宅の正面は東を向く。敷地の東端に入母屋造の櫓門(門)が開き、その北には崖の石垣上に門座敷が載り、南には東西に長い旧馬小屋及び男部屋が延びて、西端で主屋に取り付く。外から見上げたとき最初に目に入るこの3棟が、屋敷の顔をつくっている。

門をくぐると、東を向いた間口約27メートルの主屋が正面に構える。主屋の背後、浴室の南西に続く奥まった位置に隠居座敷があり、主屋の土間の裏から裏庭の奥にかけて味噌蔵と道具蔵が並んで屋敷の西辺を固める。北側では敷地北東隅の崖上に2階建の穀蔵が立ち、その西に露地をはさんで平屋の書庫がある。

屋根はいずれも桟瓦葺で、主屋には赤褐色の石州瓦が使われている。蔵の腰や隅には海鼠壁の瓦張りが繰り返される。9棟を見比べると、同じ仕上げが建物の格に応じて使い分けられているのが分かる。

  • 主屋(江戸時代後期・明治27年頃改造、登録番号33-0077)
  • 隠居座敷(明治初期、33-0078)
  • 門(明治初期、33-0079)
  • 門座敷(明治初期、33-0080)
  • 穀蔵(西江家資料館)(江戸時代後期、33-0081)
  • 書庫(明治初期、33-0082)
  • 道具蔵(明治初期、33-0083)
  • 味噌蔵(明治初期、33-0084)
  • 旧馬小屋及び男部屋(明治初期、33-0085)

西江家住宅の見学とアクセス

西江家住宅は完全予約制で公開されている。見学・体験の申し込みは2日前の午後4時までに行い、開館は午前10時から午後4時、休館日は月曜・火曜と年末年始である。所有者は2026年度の予約枠がほぼ埋まっていると告知しており、10名以上の団体一般見学(大人500円)も2026年度分の受付を終えている。高梁市観光協会の案内では、当主の説明とお茶・菓子が付く特別見学が1,650円(税込)である。料金と枠は変わることが多いので、予約時に確かめたい。

撮影はスマートフォンなどで可能だが、展示品は撮影できず、商用目的の撮影もできない。建物や外観の撮影は入館後に案内される。入館時は靴下の着用が求められ、大きな荷物は受付で預ける。

車の場合、中国自動車道新見ICから約24分、岡山自動車道賀陽ICから成羽川沿いのルートで約54分。県道33号沿いに無料駐車場(高梁市成羽町坂本1625-1、普通車30台・バス5台)がある。公共交通では、JR伯備線の備中高梁駅(岡山駅から普通列車で約50分、特急やくもで約35分)からタクシーで約45分、新見駅からはタクシーで約25分。備北バスなら備中高梁駅から坂本まで約50分、新見駅から約45分かかる。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「西江家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003706
文化遺産オンライン「西江家住宅主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/179926
高梁市 文化財マップ「西江家住宅主屋ほか」
https://www.city.takahashi.lg.jp/bunkazai/map/0153.html
高梁市公式ホームページ「西江邸」
https://www.city.takahashi.lg.jp/soshiki/9/nishie4240131k.html
高梁市 日本遺産「『ジャパンレッド』発祥の地」
https://www.city.takahashi.lg.jp/site/japan-heritage/
文化庁 日本遺産ポータルサイト「『ジャパンレッド』発祥の地」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story102/
西江邸 公式サイト Activity(公開・予約・注意事項)
https://inishiekaoru1647.wixsite.com/nishie-residence/%E6%96%BD%E8%A8%AD%E5%85%AC%E9%96%8B
西江邸 公式サイト Access
https://inishiekaoru1647.wixsite.com/nishie-residence/access
西江邸 公式サイト History
https://inishiekaoru1647.wixsite.com/nishie-residence/history
高梁市観光協会「西江家住宅(登録有形文化財)」
https://takahasikanko.or.jp/modules/spot/index.php?content_id=28
JAPAN RED 備中吹屋「西江家住宅主屋ほか」
https://fukiya-japan.red/point/detail/44/

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称西江家住宅
所在地岡山県高梁市成羽町坂本1604
所有者個人
指定登録有形文化財 9件
座標34.86896, 133.44938