師団司令部の衛兵所として建った

岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団司令部衛兵所)は、岡山市北区津島中の岡山大学津島キャンパス正門脇に建つ明治44年(1911年)建築の木造建築で、平成19年(2007年)5月15日に国の登録有形文化財に登録された。

衛兵所は、兵営や司令部の入口で歩哨が勤務した建物である。師団司令部には必ず置かれた。この一棟は桁行7.3メートル、梁間5.5メートル、建築面積40平方メートルの木造平屋建で、寄棟造の屋根に瓦を葺く。

外壁の仕様には固有の呼び名がある。ドイツ下見板張。板の上端に決りを入れ、上の板が下の板に噛み合うように張る方式で、通常の下見板張のような段状の影ができず、水切りも良い。明治期に西洋の技法として導入され、官庁や軍の建物に多く用いられた。その下部は腰縦板張とし、基礎は煉瓦積とする。平側には上下窓が並ぶ。

陸軍第十七師団の創設は明治40年(1907年)11月。日露戦争後の軍備拡張にともなって新設された師団のひとつで、司令部は岡山に置かれた。津島の敷地はその用地である。衛兵所はその四年後に建てられた。

勤務の期間は長くなかった。大正14年(1925年)5月、陸軍大臣宇垣一成の主導した軍備整理により、第十七師団は第十三・第十五・第十八師団とともに廃止される。歩哨が立ったのは十四年ほどということになる。用地はのちに転用され、昭和24年(1949年)に発足した岡山大学へと引き継がれた。

戦争遺跡としての価値

岡山県の解説は、この建物を小規模ながら丁寧なつくりと評し、正門まわりの景観を整えていると記す。登録基準に採られたのも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」であった。登録番号は33-0150で、同じ日に登録された岡山大学の三件のうち最初の番号にあたる。

建築の記述だけでは掬いきれない価値がもう一つある。戦前の陸軍施設の遺構は、日本の都市にほとんど残っていない。兵舎は焼け、司令部は撤去され、練兵場は競技場や住宅地に変わった。師団に属する建物が登録に耐える状態で残っている事例は貴重で、岡山県も県内に残る戦争遺跡の遺構のひとつとして位置づけている。

平成8年(1996年)に始まった登録有形文化財の制度は、こうした建物のためにある。指定のように現状を固定するのではなく、届出制のもとで使い続けることを認める。大学はその余地を十分に生かした。衛兵所は現在、キャンパスの歴史を扱う展示室として使われている。建物自身がその場所の来歴を語る位置に立っているわけである。

展示には、戦後の岡山大学が陸軍の施設をそのまま使い、年を追って建て替えていった過程を示す資料が含まれる。この一棟が属していた風景が消えていく経緯を、その一棟の内側から確認できる構成になっている。

訪ねる

岡山大学の登録有形文化財三件のうち、内部に入れるのはここだけである。岡山県の資料によれば入館は無料、開室時間は9時から16時30分まで。休館は土日・祝日、年末年始、夏季一斉休業日。問い合わせは岡山大学総務・企画部総務課広報係(086-251-7292)。大学施設の運用は変わることがあるため、遠方から向かう場合は事前に確認しておきたい。

周囲のキャンパスが開かれている点も特筆に値する。岡山大学は、津島キャンパスには学外との境に塀がなく、どなたでも自由に入構して敷地内を散策できると案内している。土日祝日や夏季・年末年始の休業期間も散策自体は可能で、ただし事務室の窓口は閉まる。制限は二つ。研究・実験・講義に使われている建物には立ち入れないこと、そして大学入学共通テストや個別学力検査前期日程などの入学者選抜実施日はキャンパス内に立ち入れないこと。自動車での来学は控えるよう求められている。

市街地からは近い。岡電バス「岡大西門」下車で徒歩約1分。JR岡山駅西口からは車でおよそ7分の距離である。

入る前に足元の煉瓦積を見ておきたい。明治44年に積まれた基礎で、周囲のコンクリート基礎の建物とは床の浮かせ方が違う。瓦葺の寄棟屋根、平側に連なる上下窓の並びも、この時期の軍建築の標準的な表情を伝えている。

せっかく自由に歩けるキャンパスである。師団時代の建物は構内に他にも残り、正門から続くイチョウ並木は11月下旬の岡山を代表する眺めのひとつになっている。

Q&A

Q岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団司令部衛兵所)は見学できますか。料金は。
A見学できます。入館は無料です。岡山県の資料では開室時間9時から16時30分、休館は土日・祝日、年末年始、夏季一斉休業日とされています。大学施設のため運用が変わる可能性があり、訪問前に岡山大学総務課広報係(086-251-7292)へ確認することをおすすめします。
Q岡山大学情報展示室はもともと何の建物だったのですか。
A明治44年(1911年)に陸軍第十七師団司令部の衛兵所として建てられました。第十七師団は明治40年(1907年)に創設され、司令部は現在の津島キャンパスの敷地に置かれました。師団は大正14年(1925年)5月、宇垣一成陸軍大臣による軍備整理で廃止されています。
Q岡山大学情報展示室へのアクセスを教えてください。
A岡電バス「岡大西門」下車、徒歩約1分です。JR岡山駅西口からは車で約7分。所在地は岡山市北区津島中1-1-1です。
Q岡山大学情報展示室を訪ねるとき、津島キャンパス内を歩いても構いませんか。
A構いません。大学は津島キャンパスに学外との境の塀がなく、どなたでも自由に入構して散策できると案内しています。ただし研究・実験・講義に使用中の建物には立ち入れず、入学者選抜の実施日はキャンパス内への立ち入りができません。自動車での来学は控えるよう求められています。
Q岡山大学情報展示室の建築上の特徴は何ですか。
A桁行7.3メートル、梁間5.5メートル、建築面積40平方メートルの木造平屋建で、寄棟造の瓦葺です。外壁はドイツ下見板張、腰は縦板張、基礎は煉瓦積とし、平側に上下窓を配します。

基本情報

名称岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団司令部衛兵所)
所在地岡山県岡山市北区津島中1-1-1(岡山大学津島キャンパス)
指定区分登録有形文化財(建造物・建築物) 登録番号33-0150
指定年平成19年(2007年)5月15日
員数1棟
寸法建築面積40平方メートル 桁行7.3メートル、梁間5.5メートル 木造平屋建、寄棟造、瓦葺、基礎煉瓦積
所有者国立大学法人岡山大学
公開状況公開(無料) 9時から16時30分 休館:土日・祝日、年末年始、夏季一斉休業日

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団司令部衛兵所)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006037
文化遺産オンライン(文化庁)岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団司令部衛兵所)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171342
岡山県ホームページ 岡山大学情報展示室(旧陸軍第十七師団衛兵所)解説・公開状況(PDF)
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/260994.pdf
岡山県ホームページ(文化財課)岡山県内の国登録文化財
https://www.pref.okayama.jp/page/detail-50777.html
岡山大学 キャンパス散策
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/prospective/campus_tour.html

最終更新日: 2026.08.04