真光寺三重塔:備前の丘に佇む室町の名塔

岡山県備前市西片上の丘陵に静かに佇む真光寺三重塔は、室町時代中期に建造された高さ18.24メートルの優美な三重塔です。慶長18年(1613年)に瀬戸内市牛窓の蓮華頂寺から移築され、昭和28年(1953年)に国の重要文化財に指定されました。中世日本の仏教建築の技法と美意識を今に伝える貴重な文化遺産です。

真光寺の歴史

真光寺は高野山真言宗の寺院で、山号は御瀧山(おたきさん)。寺伝によれば、天平11年(739年)に行基菩薩によって創建され、薬師如来が安置されたと伝えられています。天平勝宝年間(749〜757年)には、孝謙天皇の勅命を受けた報恩大師により、備前四十八箇寺のひとつに加えられました。

南北朝時代には兵火により衰退しましたが、室町時代の応永年間(1394〜1428年)に良宗法印によって中興されました。その後、戦国時代に再び衰退するものの、江戸時代には岡山藩の保護を受けて復興を遂げます。慶長7年(1602年)に心王院勢恵上人が仁和寺に招かれ、「御室」の一字を賜って山号を小滝山から御瀧山へと改称しました。現在は塔頭として花蔵院と自性院の二院が残されています。

三重塔の建築的価値

真光寺三重塔は方三間の三重塔婆で、屋根は本瓦葺です。室町時代中期に建造されたと伝えられ、もとは瀬戸内市牛窓町の蓮華頂寺にあったものを、慶長18年(1613年)に移築しました。附属する棟札がこの移築の歴史を裏付けています。

軒は二軒繁垂木(ふたのきしげだるき)という格式高い構造を採用しています。初重の各面には、中央間に室町時代の特色を示す蟇股(かえるまた)が配され、月輪(がつりん)に梵字の種子を彫刻した意匠が施されています。脇間には蓑束(みのづか)が置かれ、中央間には板唐戸、脇間には連子窓が設けられています。各重には擬宝珠高欄(ぎぼしこうらん)付きの縁がめぐらされ、塔全体に上品な雰囲気を与えています。

内部には二本の来迎柱を立てて来迎壁を設け、その前に須弥壇が配されています。壇上には桃山時代の仏師・八木浄慶が三石のろう石で彫った大日如来坐像が安置されており、真言密教の中心的な仏である大日如来の荘厳な姿を拝することができます。

重要文化財に指定された理由

真光寺三重塔は昭和28年(1953年)11月14日に、本堂とともに国の重要文化財に指定されました。その指定の背景には、いくつかの重要な価値が認められています。

まず、室町時代中期の宗教建築として優れた保存状態にあることが挙げられます。蟇股に彫られた梵字種子の意匠は、建造年代を推定する重要な手がかりとなっています。また、慶長18年の移築を記録した棟札が残されていることで、移築の経緯が明確に裏付けられ、近世初期の建築技術を知る貴重な資料ともなっています。当初の規模と主要な建築要素を維持していることから、西日本における塔建築の変遷を研究する上で重要な位置づけにあります。

見どころ・魅力

真光寺を訪れると、三重塔以外にも多くの文化財と出会うことができます。朱塗りの三重塔は参道から見上げると特に美しく、背後の緑に映える鮮やかな姿は印象的です。JR西片上駅からも塔の姿を望むことができ、訪問への期待を高めてくれます。

本堂もまた重要文化財に指定されており、室町時代後期の建築で永正13年(1516年)に改修されました。屋根の曲線と鬼瓦の迫力は圧巻です。仁王門はJR赤穂線の南側に建ち、宝永8年(1711年)に再建された八脚門で、かつての広大な寺域を偲ばせます。花蔵院正門は元禄14年(1701年)建立の武家風四脚門で、切妻造の本瓦葺です。

境内には石塔や石仏が点在し、袴壁を持つ二階建ての鐘楼も見ごたえがあります。春には桜、夏には新緑、秋には紅葉と、四季折々の自然が歴史的建造物を彩り、何度訪れても新たな発見があります。

周辺情報

備前市は、日本六古窯のひとつに数えられる備前焼の産地として知られています。真光寺から電車で数駅の伊部地区には、窯元やギャラリー、登り窯の煙突が立ち並び、土ひねり体験も楽しめます。天津神社では、参道の敷石から狛犬まで境内の至るところに備前焼が使われており、備前焼の文化を肌で感じることができます。

真光寺から車で約20分の場所にある特別史跡・旧閑谷学校は、寛文10年(1670年)に岡山藩主池田光政が庶民教育のために創立した学校で、備前焼の瓦が葺かれた国宝の講堂をはじめ、多くの重要文化財建造物が残されています。平成27年(2015年)には日本遺産第一号に認定されました。秋には楷の木の紅葉が見事です。

寺の近隣にある茶臼山公園からは片上湾と瀬戸内海を一望でき、特に桜の季節は絶景です。海の幸を楽しむなら、備前市日生地区が有名で、冬場の牡蠣や活気あふれる五味の市での新鮮な魚介類は格別です。

Q&A

Q真光寺へのアクセス方法は?
AJR赤穂線・西片上駅から徒歩約5分です。岡山駅からJR赤穂線(播州赤穂方面行き)に乗車し、西片上駅で下車してください。所要時間は約40分です。駅から西方向に朱色の三重塔が見えますので、目印にしてお越しください。
Q拝観料はかかりますか?
A境内は一般に無料で参拝できます。ただし、三重塔内部の拝観には制限がある場合がありますので、最新の情報は寺院または備前市観光協会にお問い合わせください。
Q真光寺の重要文化財は三重塔だけですか?
Aいいえ、本堂も国の重要文化財に指定されています。いずれも昭和28年(1953年)11月14日に指定されました。また、仁王門と花蔵院正門は備前市指定文化財となっています。
Qおすすめの訪問時期はいつですか?
A真光寺は一年を通じて美しいお寺ですが、春の桜や秋の紅葉の時期は特に朱塗りの三重塔との調和が見事です。近隣の旧閑谷学校も訪問される場合は、楷の木の紅葉が見頃となる11月上旬〜中旬がおすすめです。
Q駐車場はありますか?
A寺院周辺に駐車スペースがありますが、道が入り組んでいる場合があります。公共交通機関のご利用が便利です。お車の場合は、事前にルートをご確認ください。

基本情報

名称 真光寺三重塔(しんこうじさんじゅうのとう)
寺院名 御瀧山 真光寺(おたきさん しんこうじ)
宗派 高野山真言宗
本尊 阿弥陀如来
所在地 〒705-0021 岡山県備前市西片上1513
建造年代 室町時代中期(15世紀);慶長18年(1613年)に現在地へ移築
構造 三間三重塔婆、本瓦葺
高さ 18.24メートル
文化財指定 国指定重要文化財(建造物)/昭和28年(1953年)11月14日指定
所有者 真光寺花蔵院/真光寺自性院
アクセス JR赤穂線 西片上駅から徒歩約5分

参考文献

真光寺三重塔 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/124067
国指定文化財等データベース - 文化庁
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3060
真光寺 (備前市) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E5%85%89%E5%AF%BA_(%E5%82%99%E5%89%8D%E5%B8%82)
山陽路・岡山県の塔 真光寺三重塔
https://kawai25.sakura.ne.jp/okayama-sinkouji.htm
御滝山 真光寺 | 重要文化財の三重塔がある寺院【岡山県備前市】
https://okayamastyle.com/shinkouji/
岡山県備前市の文化資源の概要 - 備前市
https://www.city.bizen.okayama.jp/uploaded/attachment/19189.pdf

最終更新日: 2026.03.22