茅葺の屋根を二つ、瓦でつなぐ

旧大國家住宅は、岡山県和気郡和気町尺所にある江戸時代の大型民家で、主屋・蔵座敷・中蔵・乾蔵・酉蔵・井戸場の6棟が平成16年(2004年)7月6日に重要文化財に指定された。

屋敷が建つのは、和気の町なかを流れる金剛川の東岸の平地である。北側だけが街路に面したほぼ方形の敷地で、その北端に主屋が構え、西へ蔵座敷・中蔵・乾蔵・酉蔵が並ぶ。主屋の南には井戸場が置かれている。

大國家は戦国武将の大森新四郎道明の末裔と伝え、近世に和気へ移ってからは大森姓を名乗った。現在地に屋敷を構えたのは大森満體(1710年から1773年)の代で、酒造業と運送業で身代を大きくしている。のちに尺所村の大庄屋格を務め、19世紀半ばからは鉱山業にも手を広げた。明治中期にはそれらの事業をすべてたたみ、以後は土地経営を柱にしている。

指定を支えたのは柱の墨書

建築年代は、部材に残る墨書が直接語っている。酉蔵の二階柱の南面には宝暦10年(1760年)の春に父が本宅を建てたことを記す一文があり、これが主屋の建築年を定めた。蔵座敷の二階柱には享和元年(1801年)の日付と、大森満宣が16歳で書いたという断り書きが残る。中蔵・乾蔵・酉蔵の三棟は、同じく柱の墨書から文化5年(1808年)の建設と判明した。

指定基準は「流派的又は地方的特色において顕著なもの」。旧大國家住宅が江戸後期から末期にかけての大庄屋格の屋敷構えをよく保っていること、独特の屋根形状をもつ大規模な主屋と、洗練された数寄屋造風の意匠になる蔵座敷を備えることが評価された。指定は6棟と、附としての土塀1棟、それに宅地を含む。

主屋と蔵座敷については、平成12年(2000年)3月28日に岡山県の重要文化財となるのが先だった。建物と土地は平成14年(2002年)に和気町の所有となり、現在は大國家の名を冠した一般財団法人が保有している。

旧大國家住宅の屋根と内部

主屋は正面18.6メートル、側面18.8メートル。ほぼ正方形といってよい平面である。人がこの建物を見に来る理由は屋根にある。東西に棟を通した入母屋造・茅葺の屋根を南北に二つ平行に並べ、その中央を直交する瓦葺の部分で連結して煙出しを設ける。地上から見上げると、棟が「工」の字を描く。和気町はこれを比翼入母屋造と呼び、全国でも吉備津神社本殿(岡山市)など数例しか知られないとしたうえで、民家としては唯一ではないかと述べている。断定ではなく、開かれた問いとしての書き方である。

一階は東半分が奥まで抜ける土間、西半分が床上部で、四室を二列に並べた八室からなる。正面側にミセと座敷、その奥にオクノマ・ブツマ・ダイドコロが続く。土間の南半分は天井を張らずに吹き抜けとし、漆喰塗りの梁組をそのまま見せる。北西隅の座敷は竿縁天井で、ほかの部屋は根太天井が基本である。二階は中央に階段室を置き、北棟と南棟にそれぞれ小部屋を並べる。北棟の西端は蔵座敷の二階へ直接つながっている。

もう一つの見どころが蔵座敷である。桁行14.8メートル、梁間9.8メートルの土蔵造二階建てで、切妻造・本瓦葺の屋根に四面銅板葺の庇が回る。漆喰塗りに要所だけ瓦を張った重い外観は享和元年当時のままだが、内部はそうではない。床と棚を備えた北側の座敷は御成の間と呼ばれ、その南に茶室が続く。この一帯は江戸末期に軽やかな数寄屋風の意匠へ改められている。

西に並ぶ三棟の蔵は大きさがまるで違う。中蔵は桁行3.9メートル・梁間3.0メートル、乾蔵は桁行4.9メートル・梁間4.0メートル、酉蔵は桁行11.8メートル・梁間5.0メートル。いずれも二階建てで外壁は漆喰塗り、小屋組は登梁式である。主屋の南に建つ井戸場は桁行・梁間とも5.9メートルで、6棟のうちもっとも新しく江戸末期の建築にあたる。中蔵と乾蔵の北に延びる長さ8.6メートルの土塀が附指定になっている。敷地内には蔵座敷北側の池、北面の石橋、周囲の石垣も残る。

旧大國家住宅の見学方法

旧大國家住宅は現在、見学できない。和気町が保存修理工事を進めており、町の文化財ページにも「見学:不可」と明記されている。受付も開館時間も入館料も設定されていない。

そのかわり和気町は、工事中の現場を年に一度ほど一般公開している。日程が決まると町のホームページで告知される仕組みで、近年は土日の二日間を午前の部と午後の部に分け、参加費無料・申し込み不要で実施してきた。基礎の修理のために主屋を持ち上げた状態や、瓦を一枚ずつ外して点検し葺き直す工程など、工事が終われば二度と見られない場面が公開の対象になっている。訪ねる計画を立てるなら、まず町のホームページを確認してほしい。

公開時の撮影について、告知に制限の記載はない。町は歩きやすい服装で来るよう求めており、車いすでの見学は事前の問い合わせを案内している。車の場合は和気町中央公民館か和気町役場の駐車場を使う。いずれも尺所にあり、屋敷までは歩いてすぐである。

所在地は和気町尺所38番地。JR山陽本線の和気駅から徒歩15分ほどの距離にある。和気町の案内によれば和気駅から岡山駅までは電車で約30分なので、公開日が告知されたら県都から日帰りで足を運べる。

Q&A

Q旧大國家住宅は見学できますか。
A通常はできません。和気町は保存修理工事のため見学不可としています。工事中は年に一度ほど特別に一般公開され、日程は和気町のホームページで告知されます。
Q旧大國家住宅の屋根はどこが珍しいのですか。
A主屋は入母屋造・茅葺の屋根を二つ平行に並べ、その中央を切妻造の瓦屋根で連結しています。比翼入母屋造と呼ばれる形式で、和気町は全国でも数例しかなく、民家では唯一ではないかとしています。
Q旧大國家住宅はいつ建てられたのですか。
A主屋が宝暦10年(1760年)、蔵座敷が享和元年(1801年)の完成です。中蔵・乾蔵・酉蔵は文化5年(1808年)、井戸場は江戸末期の建築とされています。
Q旧大國家住宅のどの建物が重要文化財ですか。
A主屋・蔵座敷・中蔵・乾蔵・酉蔵・井戸場の6棟です。長さ8.6メートルの土塀1棟が附指定となっており、宅地も指定の対象に含まれます。
Q旧大國家住宅へは電車でどう行きますか。
AJR山陽本線の和気駅から徒歩15分ほどです。住所は和気町尺所38番地。和気町の案内では岡山駅から和気駅まで電車で約30分です。車の場合は町役場か中央公民館の駐車場を使います。

基本情報

名称旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所)
所在地岡山県和気郡和気町尺所38番地
指定区分重要文化財
指定年平成16年(2004年)7月6日
員数6棟(附として土塀1棟)
寸法主屋 正面18.6メートル・側面18.8メートル、蔵座敷 桁行14.8メートル・梁間9.8メートル、中蔵 桁行3.9メートル・梁間3.0メートル、乾蔵 桁行4.9メートル・梁間4.0メートル、酉蔵 桁行11.8メートル・梁間5.0メートル、井戸場 桁行5.9メートル・梁間5.9メートル、附の土塀 長さ8.6メートル
所有者一般財団法人大国家
公開状況保存修理工事のため非公開。和気町が年に一度ほど一般公開を実施し、日程は町のホームページで告知

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003870
文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 蔵座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003871
文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 中蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003872
文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 乾蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003873
文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 酉蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003874
文化庁 国指定文化財等データベース 旧大國家住宅(岡山県和気郡和気町尺所) 井戸場
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00003875
和気町 社会教育課 文化財 建造物
https://www.town.wake.lg.jp/soshiki/shakaikyoiku/gyomu/12/1/266.html
和気町 和気町のアクセスマップ
https://www.town.wake.lg.jp/soshiki/zaisei/gyomu/15/187.html

最終更新日: 2026.09.09

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