戦後の大頓集落に建て直された赤瓦の屋敷

屋宜家住宅は、沖縄県島尻郡八重瀬町字大頓にある昭和27年(1952年)から昭和30年(1955年)頃にかけて建てられた沖縄の伝統的な屋敷で、主屋・アサギ・井戸・ヒンプン・石垣の5件が平成21年(2009年)11月2日に国の登録有形文化財に登録された。

読みは「やぎけじゅうたく」。敷地では平成19年(2007年)11月から「沖縄そばと茶処 屋宜家」が営まれていて、こちらは「やぎや」と読む。同じ字を書いても、文化財の名称と店の名前とで読みが分かれる。

八重瀬町によると、5件の登録は沖縄県内で70件目にあたり、町では初めての国の登録文化財だった。町は、赤瓦葺の主屋に斜め向かいのセメント瓦葺のアサギ、主屋前面のヒンプン、後方の井戸がそろい、沖縄の伝統的な屋敷構えをよく残していると紹介している。

屋宜家住宅の成り立ち

店を営む屋宜家の案内によれば、屋敷そのものはこの地に100年以上前からあり、いまの主屋は戦後まもなく一代目の屋宜松が建てた。終戦直後で資材が乏しく、材木を積んだ船が港に入るたびに目当ての木を探して回り、苦労して材料を集めた家づくりは集落でも評判になったという。

松は沖縄の屋敷づくりにまつわる風水をよく調べていたと伝わる。家屋の配置、ヒンプン、井戸、家畜小屋、屋敷囲い、踏み段の高さ、植栽にまで気を配ったとされる。

文化庁の記録では、主屋・井戸・ヒンプンが昭和27年(1952年)、アサギが昭和30年(1955年)頃の建築で、石垣は昭和27年に築かれ、昭和29年(1954年)に改修されている。屋宜家住宅の5件は、数年のうちに一つの屋敷としてそろったことになる。

屋宜家住宅の屋敷構え

文化庁の解説と屋宜家の案内を突き合わせると、屋敷の配置が見えてくる。敷地は通りの西側にあり、主屋は敷地の北寄りに南を向いて建つ。主屋の真正面にはヒンプンが立ち、アサギは主屋の東南に建つ。井戸は主屋の裏座の東、通りに近い位置にある。屋宜家の案内図では、西側に家畜小屋も置かれていた。石垣は敷地の南辺を東と西から延び、中央で北へ折れて、屋敷に入る通路をつくる。

屋宜家によると、屋敷は通路と裏庭、傾斜地を含めて約360坪ある。台風に備えて周りより低い場所に構えており、強まる東寄りの風を受けにくい。風向きが変わっても石垣やフクギ、作業小屋が風を遮るため、60年以上にわたって大きな被害を受けていないという。

ヒンプンと石垣、井戸の周りの石積みには、いずれも町内の港川で採れる琉球石灰岩が使われている。文化庁は石垣の解説で、石垣際の花木と主屋の赤瓦、白い目地漆喰、石灰岩の肌合いが重なって、屋宜家住宅に独特の眺めをつくっていると評している。

屋宜家住宅の登録有形文化財5件

  • 主屋(登録番号47-0071):昭和27年(1952年)建築。木造平屋建、寄棟造赤瓦葺、建築面積77平方メートル。登録基準は「造形の規範となっているもの」
  • アサギ(47-0072):昭和30年(1955年)頃の建築。木造平屋建、寄棟造セメント瓦葺、建築面積25平方メートル
  • 井戸(47-0073):昭和27年(1952年)築造。石造、面積3.6平方メートル
  • ヒンプン(47-0074):昭和27年(1952年)築造。石造、延長3.6メートル
  • 石垣(47-0075):昭和27年(1952年)築造、昭和29年(1954年)改修。石造、延長50メートル

主屋以外の4件の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。5件は同じ日に登録され、登録番号も続いている。登録の告示は平成21年(2009年)11月19日。文化庁のデータベースでは所在地がいずれも八重瀬町字大頓1172で、所有者名は載っていない。

屋宜家住宅への行き方と見学

屋宜家住宅は個人の屋敷で、敷地に入れるのは「沖縄そばと茶処 屋宜家」の営業時間に店を利用するときである。店の案内では、入店できるのは午前11時から午後3時までで、営業は午後4時に終わる。定休日は火曜日と1月1日で、台風の接近や旧盆などで臨時に休むこともあるため、出かける前に店のホームページで確かめたい。見学料の案内はなく、食事をせずに見学だけできるかも示されていないので、希望する場合は店に問い合わせるのが確実である。

席は主屋の座敷と、主に予約客を通す離れのアサギに分かれる。座敷へは縁側で靴を脱いで上がる。建物は今も屋宜家が手入れを続けている家なので、柱や建具に寄りかからないようにしたい。撮影についての公式の案内はなく、ほかの客が写り込む場面では配慮が要る。

車なら那覇空港からおよそ30分で、店の近くに駐車場がある。路線バスでは、那覇バスターミナルから琉球バス交通の50番百名線(東風平経由)に乗り、「大屯」で降りる。バス停の表記は「屯」の字だが、地名の大頓と同じ場所を指す。そこから屋宜家住宅までは約200メートル、歩いて3分ほどである。

参考文献

国指定文化財等データベース「屋宜家住宅主屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007947
国指定文化財等データベース「屋宜家住宅アサギ」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007948
国指定文化財等データベース「屋宜家住宅井戸」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007949
国指定文化財等データベース「屋宜家住宅ヒンプン」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007950
国指定文化財等データベース「屋宜家住宅石垣」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007951
屋宜家住宅主屋(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/164831
屋宜家住宅アサギ(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/192872
屋宜家住宅井戸(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/207473
屋宜家住宅ヒンプン(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/140444
屋宜家住宅石垣(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/174175
平成21年度県指定文化財と国の登録文化財について(八重瀬町)
https://www.town.yaese.lg.jp/docs/2014032000233/
沖縄そばと茶処 屋宜家(公式サイト)
https://www.ne.jp/asahi/to/yagiya/index.html
屋宜家 STORY 2(屋宜家公式サイト)
https://www.ne.jp/asahi/to/yagiya/story2.html
屋宜家 STORY 3(屋宜家公式サイト)
https://www.ne.jp/asahi/to/yagiya/story3.html
客席(屋宜家公式サイト)
https://www.ne.jp/asahi/to/yagiya/kyakuseki.html
予約について・営業時間(屋宜家公式サイト)
https://www.ne.jp/asahi/to/yagiya/yoyaku.html
50番百名線(東風平経由)停車順(ジョルダン)
https://mb.jorudan.co.jp/os/bus/4703/line/36726.html

最終更新日: 2026.10.03

基本情報

名称屋宜家住宅(八重瀬町)
所在地沖縄県島尻郡八重瀬町字大頓1172
指定登録有形文化財 5件
座標26.12728, 127.73699