主屋の向かい、敷地南西の一棟
古畑家住宅離れは、大阪府高槻市大字中畑小字清谷にある大正末期の木造平屋建で、平成20年(2008年)7月8日に国の登録有形文化財(建造物)となった建物である。
敷地の南西、庭を挟んで主屋と向かい合う位置に建つ。桁行10メートル、梁間7.0メートル、建築面積74平方メートル。数値だけを追えば小規模な一棟だが、内部の割り方に特徴がある。
室は南北の二列。いずれの列も東端を土間とし、次の間を経て西端の主室に至る。同じ順序の動線が二本、平行して走る構成である。
屋根は入母屋造の桟瓦葺。
造形の規範という登録基準
登録有形文化財の登録基準は三項目からなる。本件が該当するのは第一項の「造形の規範となっているもの」で、登録番号は27-0486。文化庁の解説は、近代の大規模農家における離れ座敷の好例と位置づけている。
評価の核心は、二列の性格差にある。
南列の主室は座敷飾りを備える。床、棚、書院といった格式の装置を構え、接客の正面をつくる。対する北列は数寄屋風にまとめられる。部材を細く取り、面皮や自然材の肌合いを生かし、書院造が守る左右の均衡をあえて崩す作法である。
一棟のなかに格式の座敷と草庵風の座敷が並列する。応対する相手や場面に応じて使い分けられる構えといってよい。座敷飾りを構えた正式な離れ座敷を持つ農家は各地にあるが、性格の異なる二列を同一棟に収めた例はそう多くない。
登録の決定は平成20年7月8日、官報告示は同月23日。第60回の登録にあたる。
京都府に建ち、大阪府に残る
この離れが建てられた大正末年、住所は大阪府ではなかった。中畑は明治22年(1889年)に周辺四か村と合併して成立した京都府南桑田郡樫田村の一集落である。標高およそ350メートルの盆地状の地形にあり、水系も生活圏も、北の亀岡側ではなく南の高槻側を向いていた。
昭和33年(1958年)4月1日、樫田村は京都府を離れて高槻市に編入される。府県境を越えた市町村合併としては全国初の事例だった。地図上で大阪府北部が京都府側へ突き出す現在の府境の形は、このとき生まれている。建物は動いていない。周囲の行政区画のほうが動いた。
古畑家住宅として登録されたのは全8棟。主屋、この離れ、東一の蔵・東二の蔵・西の蔵・新蔵の四棟の土蔵、米蔵、そして長屋門である。主屋は建築面積261平方メートル、木造つし2階建で、正面上部に虫籠窓を穿つ。
いずれも個人所有の住宅として現在も使われており、内部は非公開。公開日や見学に関する案内は出されていない。敷地東辺を走る道路から外観を望むことができるのみで、居住者の生活への配慮が前提となる。JR高槻駅から高槻市営バスでおよそ40分、車であれば30分ほど山道を登った先にあたる。便数は限られるため、時刻の事前確認をすすめたい。
Q&A
- 古畑家住宅離れの内部は見学できますか。
- 見学できません。現に居住されている個人所有の住宅であり、公開のための入口や見学日は設けられていません。拝観料の設定もありません。敷地東辺の道路から外観を望むことは可能ですが、居住者の生活空間であることを踏まえた対応が求められます。
- 古畑家住宅離れはいつ建てられ、いつ文化財になりましたか。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは建築年代を大正末期、西暦では1912年から1925年の範囲としています。登録有形文化財としての登録は平成20年(2008年)7月8日、官報告示は同月23日で、第60回登録、登録番号27-0486にあたります。
- 古畑家住宅離れは国宝や重要文化財とどう違いますか。
- 本件は登録有形文化財であり、国宝・重要文化財という指定制度とは別系統の枠組みに属します。登録制度は平成8年(1996年)に発足したもので、近代以降の建物や現に使用されている建物を対象に、所有者の自由度を残したまま保護する仕組みです。指定に比べて規制は緩やかで、日常の使用を続けながら価値を認める点に特徴があります。
- 古畑家住宅離れの平面はどのような構成ですか。
- 南北二列に室を配し、いずれの列も東から土間、次の間、主室の順に並びます。南列の主室は座敷飾りを備えた格式ある構えとし、北列は数寄屋風にまとめられています。桁行10メートル、梁間7.0メートル、建築面積74平方メートル、入母屋造桟瓦葺です。
- 古畑家住宅離れのある中畑へはどう行きますか。
- 中畑は高槻市北端の樫田地区にある標高およそ350メートルの山間集落です。JR高槻駅から高槻市営バスでおよそ40分、自動車なら30分ほどの道のりになります。バスの便数は多くなく、集落内に鉄道駅や観光案内施設はありません。
基本情報
| 名称 | 古畑家住宅離れ(こばたけじゅうたくはなれ) |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府高槻市大字中畑小字清谷24 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号27-0486 登録基準「造形の規範となっているもの」 |
| 指定年 | 平成20年(2008年)7月8日登録/同年7月23日告示(第60回) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行10メートル、梁間7.0メートル、建築面積74平方メートル 木造平屋建、入母屋造桟瓦葺 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(居住中の個人住宅。外観のみ敷地外の道路から望見可能) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 古畑家住宅離れ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007257
- 文化庁 国指定文化財等データベース 古畑家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007256
- 文化遺産オンライン 古畑家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/143018
- 高槻市 指定登録文化財一覧表
- https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/history/4535.html
- 大阪府 大阪府内指定等文化財一覧表
- https://www.pref.osaka.lg.jp/bunkazaihogo/bunkazai/hunai-siteiichiran.html
最終更新日: 2026.08.20