はじめに

大阪の大動脈・御堂筋と本町通が交わる本町3交差点の北西角に、ひときわ重厚な佇まいで建つ御堂ビルディング。1965年(昭和40年)に大手ゼネコン・竹中工務店の本社ビルとして竣工したこの建物は、有田焼の伝統を受け継ぐ磁器タイルの外壁と、先進的なセンターコア構造を持つ戦後モダニズム建築の傑作です。竣工から60年以上が経過した現在もなお現役の本社ビルとして使われ続けており、2024年(令和6年)3月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。

歴史的背景

御堂ビルディングは、日本の高度経済成長期のさなかに建設されました。1610年創業という400年以上の歴史を誇る竹中工務店が、大阪本社のために選んだのは、本願寺津村別院(北御堂)の境内南東側という由緒ある一等地でした。「御堂筋」の名前の由来となった北御堂と南御堂、その北御堂のすぐ隣に位置するこのビルは、大阪の歴史と深く結びついています。

設計を指揮したのは、当時の竹中工務店設計部長・岩本博行です。岩本は九州勤務時代に有田焼と出会い、その後竹中工務店が手掛ける多くの建築物にタイルを用いるようになりました。御堂ビルディングはその代表的な作品のひとつです。当時は百尺規制と呼ばれる建築高さ制限があり、高さを31メートルに収める必要がありました。そこで1階の床面を道路面より約1メートル下げるという工夫を凝らし、7・8階の吹き抜けの受付ホールを含む9層のオフィス空間を確保しています。

文化財としての価値

2023年(令和5年)11月に文化審議会が登録有形文化財への登録を答申し、2024年(令和6年)3月6日に正式に登録されました。文化庁が評価したポイントは主に以下の3点です。

第一に、エレベーターや階段などの設備を建物中央部にまとめたセンターコア方式の採用です。これにより外周部に柱のない広々としたオフィス空間を実現しました。第二に、フルウェブ梁や軽量コンクリートなど当時最先端の技術を駆使して大スパン構造を実現した構造技術です。そして第三に、単窓を規則正しく繰り返した壁面に茶・灰・土の3色の磁器タイルを貼り、格調高い外観に仕上げた意匠性です。登録基準として「造形の規範となっているもの」に該当すると認められました。

見どころ・魅力

有田焼タイルの外壁

御堂ビルディングの最大の特徴は、茶色・灰色・土色の3色で構成された磁器タイルの外壁です。佐賀県の有田焼の伝統に着想を得たこのタイルは、焼きムラによる微妙な色合いの変化が自然な風合いを生み出しています。竣工から半世紀以上を経た現在も、外観の印象はほとんど変わっておらず、建築の永続性を体現しています。

セットバックした1階壁面

1階の壁面は2階の壁面より1.2メートル後退させて設計されています。これにより建物基部に深い陰影が生まれ、立体的なファサードを形成するとともに、ショーウィンドーとしての機能も兼ね備えています。

エントランスホールと「のぼり太鼓」

1階のエントランスホールには、著名な彫刻家・流政之による壁面レリーフ「のぼり太鼓」が飾られています。鑿(のみ)や鉋(かんな)など大工道具をモチーフにしたこの作品には、「職人こそいい建築を作るための最大要素の一つである」という竹中工務店の建築哲学が込められています。ホール両側には御堂ビルディングの歴史を記したパネルも展示されています。

屋上庭園

ビルの屋上には緑豊かな空中庭園が設けられており、ここで働く人々の憩いの場となっています。都心のビルの屋上とは思えないほど緑に覆われた空間で、御堂筋の変遷を見守り続けてきたこのビルの歴史の重みを感じることができます。

イノベーションスペースへのリニューアル

2016年から2018年にかけて実施された「御堂ビルディングイノベーションスペース整備プロジェクト」により、各フロアを内部階段「閃き階段」で結び、紙資料の60%削減と個人執務机の30%ダウンサイジングを実現。歴史ある外観からは想像できないほどモダンで開放的なオフィス空間に生まれ変わりました。このリニューアルは2018年に日経ニューオフィス賞、2019年にBELCA賞ロングライフ部門を受賞しています。

アクセス・見学情報

御堂ビルディングは現役の企業本社ビルであるため、一般の内部見学は原則として行われていません。ただし、建物外観は御堂筋を歩くだけで間近に鑑賞でき、特に南東側からは建物全体のファサードと磁器タイルの美しさを堪能できます。1階エントランス付近の歴史パネルや「のぼり太鼓」のレリーフは、業務時間内であれば目にすることができる場合があります。

最寄り駅はOsaka Metro御堂筋線・中央線・四つ橋線の本町駅で、6番出口を出てすぐの場所に位置しています。

周辺情報

御堂ビルディングのすぐ北側には、御堂筋の名前の由来となった本願寺津村別院(北御堂)があります。天正19年(1591年)に創建された浄土真宗本願寺派の寺院で、1階には無料で見学できる「北御堂ミュージアム」が設けられており、北御堂と大阪の歴史を学ぶことができます。

御堂筋そのものも散策の価値があります。約970本のイチョウ並木が植えられた沿道には、ヘンリー・ムーアやオーギュスト・ロダン、高村光太郎など国内外の著名な彫刻家による29体の彫刻作品が展示されており、野外美術館のような雰囲気を楽しめます。秋にはイチョウが黄金色に色づき、冬にはイルミネーションが通り全体を彩ります。

本町駅から直結の船場センタービルでは、約800軒もの問屋や飲食店が東西1キロメートルにわたって並んでおり、ショッピングや大阪グルメを楽しめます。また、南へ少し歩けば心斎橋・道頓堀の繁華街にもアクセスできます。

Q&A

Q御堂ビルディングはどのような文化財ですか?
A御堂ビルディングは、2024年(令和6年)3月6日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。「造形の規範となっているもの」として、センターコア構造や磁器タイル貼りの格調高い外観が評価されています。
Q一般の見学はできますか?
A御堂ビルディングは現役の企業本社ビルのため、一般の内部見学は原則として行われていません。ただし、建物外観は御堂筋から自由にご覧いただけます。1階エントランス付近は業務時間内に目にできる場合もあります。
Q外壁のタイルにはどのような特徴がありますか?
A外壁には茶色・灰色・土色の3色の磁器タイルが使用されています。佐賀県の有田焼の伝統に着想を得たもので、焼きムラによる自然な色合いの変化が特徴です。設計を指揮した岩本博行が九州勤務時代に有田焼と出会い、この建物に採用しました。
Q最寄り駅はどこですか?
AOsaka Metro御堂筋線・中央線・四つ橋線の本町駅が最寄りです。6番出口を出てすぐ、御堂筋と本町通が交わる本町3交差点の北西角に位置しています。
Q御堂ビルディングの設計者は誰ですか?
A竹中工務店設計部が設計を担当し、当時の設計部長であった岩本博行が設計を指揮しました。岩本は「全部員の英知を集めて設計を完成させよう」と提案し、多くの設計部員のアイデアが随所に採り入れられた共同設計の成果です。

基本情報

名称 御堂ビルディング(みどうびるでぃんぐ)
文化財種別 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 2024年(令和6年)3月6日
登録番号 27-0899
竣工年 1965年(昭和40年)
構造 鉄骨鉄筋コンクリート造 地上9階地下4階建、建築面積3,442㎡、塔屋付
設計 竹中工務店設計部(設計部長:岩本博行)
所有者 株式会社TAKプロパティ
所在地 大阪府大阪市中央区本町四丁目27-12他
アクセス Osaka Metro御堂筋線・中央線・四つ橋線「本町」駅 6番出口すぐ

参考文献

御堂ビルディング - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/583452
国指定文化財等データベース - 御堂ビルディング
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014872
御堂ビル - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%A1%E5%A0%82%E3%83%93%E3%83%AB
本社ビル「御堂ビルディング」が国の登録有形文化財(建造物)へ - 竹中工務店
https://www.takenaka.co.jp/newslog/2023/11/03/
御堂筋になじむ、現役本社ビルのレトロ建築 - OSAKA NOSTALGIC SOUND TRIP
https://www.osaka-soundtrip.com/spot/history13394/
御堂ビルディング - 大阪ビルディング協会
https://www.osaka-birukyo.or.jp/blog/topics/

最終更新日: 2026.04.12