大阪府内最古の春日造

意賀美神社本殿は、大阪府泉佐野市上之郷にある室町時代中期の神社建築で、嘉吉2年(1442年)の建立、大正13年(1924年)4月15日に国の重要文化財に指定された。読みは「おがみじんじゃほんでん」。

泉佐野市は大阪府の南端、和歌山県境に近い。関西国際空港の対岸にあたるが、上之郷はそこから山側へ入った内陸で、樫井川のほとりに里山と田が広がる。赤い欄干の橋を渡ると社叢が見えてくる。

祭神は高龗神。水と雨を司る龍神で、古くは「雨の神さま」「武塔の天神」と呼ばれた。『延喜式』神名帳の和泉国日根郡に「意賀美神社」の記載があり、式内社に比定される。樫井川流域の農民にとっては水源の神であり、この地方の祈雨の中心だった。

訪ねる前に一点、整理しておきたい。大阪府内には同名の意賀美神社が枚方市と岸和田市にもあり、いずれも式内社の比定を受けている。重要文化財の本殿を持つのは泉佐野市上之郷の当社である。

構造と細部を読む

台帳の記載は簡潔である。一間社春日造、正面軒唐破風付、檜皮葺、一棟。

春日造は奈良の春日大社に始まる形式で、切妻造の小規模な社殿を妻入りとし、正面の階段上に向拝を差し掛ける。一間社は正面の柱間が一間であることを指すから、社殿そのものは驚くほど小さい。檜皮葺は檜の樹皮を薄く重ねて葺くもので、屋根の稜線がわずかに膨らむ独特の柔らかさはここから来る。

特徴は正面軒の唐破風にある。唐破風は中央を持ち上げ両端で反転する曲線の破風で、これを春日造の軒に付ける例は多くない。輪郭が単純な三角形から動きのあるものへ変わる。

細部を見ていくと年代の手がかりが揃う。梁の間に置かれた蟇股には緻密な彫刻が入り、木鼻は禅宗様の意匠を取る。頭貫は虹梁形につくられ、繋梁には和様が用いられている。全体には彩色が施されており、室町中期の特色を細部様式に読み取ることができる。春日造の建築としては大阪府内で最も古い。

指定年について一点補足しておく。文化庁の国指定文化財等データベースは重文指定年月日を大正13年(1924年)4月15日と記録する。一方、地元の観光案内などには昭和25年(1950年)とするものが少なくない。戦前の制度下で指定を受けた物件が、昭和25年施行の文化財保護法へ移行した経緯によるものと考えられるが、両論があることは書き添えておきたい。

参拝と季節の楽しみ

境内は開かれており、参拝に料金はかからない。ただし当社は整備された文化財施設ではなく、地域の氏神として営まれている神社である。その前提で訪ねたい。

本殿は拝殿の背後に建つため、参拝者が見るのは外観になる。内部は公開されていない。蟇股の彫りや正面の唐破風の反りが判る位置まで近づき、時間をかけて眺めたい。規模ではなく細部で見せる建物である。上拝殿などは平成19年(2007年)に改修されており、およそ70年ぶりの手入れだったと伝わる。

春は境内の桜が知られ、地元では隠れた花見の場所として親しまれている。目の前の樫井川を南へたどると、両岸およそ1キロにわたって梅並木が続く。地元のライオンズクラブが植栽した紅白の梅約450本で、見頃は2月下旬から3月上旬。

正月には「開運六社参り」の一社となる。意賀美神社、奈加美神社、加支多神社、八幡神社、蟻通神社、日根神社の六社をめぐって一年の開運を祈る、泉佐野の年始の習わしである。

アクセスはJR阪和線長滝駅から徒歩約20分、または日根野駅からコミュニティバスで「上之郷」下車、徒歩約10分。コミュニティバスは南回りのみが停車する。車の場合は阪和自動車道上之郷インターチェンジが近い。駐車場の明示はないが、境内南側から数台分の駐車スペースに入れる。

撮影の可否について明示的な案内は確認できなかったため、気になる場合は事前に問い合わせるとよい。祭礼中は神職の指示に従う。社務所は常時対応しているとは限らず、御朱印や参拝時間を確かめたい場合の連絡先は072-468-0540。

Q&A

Q意賀美神社本殿は見学できますか。拝観料は必要ですか?
A境内は自由に参拝でき、料金はかかりません。本殿は拝殿の背後に建つため外観の拝観となり、内部は公開されていません。受付や常駐の職員がいるわけではないので、その点は承知のうえで訪ねてください。
Q意賀美神社(泉佐野市)へのアクセスは?最寄り駅とバスを教えてください。
AJR阪和線長滝駅から徒歩約20分、または日根野駅からコミュニティバス「上之郷」下車で徒歩約10分です。コミュニティバスは南回りのみ停車します。車では阪和自動車道上之郷インターチェンジが近く、住所は泉佐野市上之郷45。
Q意賀美神社本殿はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されたのですか?
A建立は嘉吉2年(1442年)、室町時代中期です。指定年月日は文化庁のデータベースでは大正13年(1924年)4月15日。地元資料では昭和25年(1950年)とするものもあり、これは文化財保護法施行に伴う移行を指すとみられます。
Q意賀美神社本殿の「一間社春日造、正面軒唐破風付」とはどのような形式ですか?
A春日造は奈良の春日大社に由来する形式で、切妻造の社殿を妻入りとし、正面の階段上に向拝を設けます。一間社は正面の柱間が一間、つまり小規模であることを示します。唐破風はその向拝の軒に付いた曲線の破風で、春日造では珍しい意匠です。屋根は檜皮葺。
Q意賀美神社は枚方市や岸和田市にもありますが、重要文化財があるのはどこですか?
A泉佐野市上之郷の意賀美神社です。枚方市と岸和田市にも同名の神社があり、いずれも水の神を祀る式内社の比定を受けていますが、嘉吉2年建立の本殿が重要文化財に指定されているのは泉佐野市の当社です。

基本情報

名称意賀美神社本殿(おがみじんじゃほんでん)
所在地大阪府泉佐野市上之郷(上之郷45)
指定区分重要文化財(建造物)
指定年大正13年(1924年)4月15日(指定番号00794)
員数1棟
構造一間社春日造、正面軒唐破風付、檜皮葺/嘉吉2年(1442年)建立
所有者意賀美神社
公開状況境内自由・無料。本殿は外観のみ、内部非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 意賀美神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2174
文化遺産オンライン 意賀美神社本殿
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/147371
大阪観光局 意賀美神社
https://osaka-info.jp/spot/ogamijinja/
泉佐野市観光協会 意賀美神社
https://www.kankou-izumisano.jp/50on/a/1565832725708.html
泉佐野市観光サイト ここ旅泉佐野 意賀美神社
https://visitizumisanojpn.com/ogami-shrine/

最終更新日: 2026.08.19