道修町の「神農さん」

少彦名神社は、大阪府大阪市中央区道修町にある薬の神を祀る神社で、安永9年(1780年)に創建され、明治43年(1910年)に建てられた本殿・幣殿・拝殿の3棟が平成12年(2000年)に国の登録有形文化財に登録された。祭神は日本の医薬の祖神とされる少彦名命と、中国の医薬の祖神とされる炎帝神農の2柱で、大阪では「神農さん」の愛称で通っている。

読みは「すくなひこなじんじゃ」。少彦名命を祀る同じ名の神社は各地にあるため、このサイトでは道修町の社を「少彦名神社(大阪市)」と書き分けている。

境内はオフィスビルに囲まれた狭い敷地で、通りから細い参道を入った奥に社殿が建つ。薬の町として続いてきた道修町の真ん中にあり、町の成り立ちと神社の由来は切り離せない。

薬種仲間の会所に招かれた神

道修町は「どしょうまち」と読む。くすりの道修町資料館の解説によれば、この町が薬の町になったきっかけは、寛永年間(1624〜1644年)に堺の商人小西吉右衛門が薬種屋を開いたことにある。享保7年(1722年)には、八代将軍徳川吉宗が道修町の薬種中買仲間124軒を株仲間と認め、中国からの唐薬種と国内産の和薬種を検査して値を付け、全国へ売る特権を与えた。

薬は人の命に関わり、品質の見極めも難しい。少彦名神社の由緒によると、仲間たちは仕事を正しく行えるよう神の加護を求め、安永9年(1780年)、京都の五條天神から少彦名命を仲間の寄合所に迎え、以前から祀っていた炎帝神農とあわせて祀った。いまの境内がそのまま会所の跡にあたる。

文政5年(1822年)に大坂でコレラが流行した際、薬種仲間は虎の頭骨などを配合した丸薬「虎頭殺鬼雄黄圓」を作り、神前で祈願したうえで張子の虎の御守と一緒に配ったと伝わる。少彦名神社の張子の虎は、この故事に由来する。

道修町の薬業者は、少彦名神社を崇敬する講「薬祖講」を結んで神社を支えてきた。大阪市教育委員会の資料では、薬祖講は現在およそ400社の薬業関係企業で構成されている。

明治43年の社殿と登録有形文化財の3棟

少彦名神社でいま登録有形文化財となっているのは、本殿・幣殿・拝殿の3棟である。文化庁のデータベースでは3棟とも明治43年(1910年)の建築で、木造平屋建、屋根は銅板葺とされる。登録番号は27-0119から27-0121までの連番で、平成12年(2000年)12月4日に同じ日付で登録され、登録基準はそろって「造形の規範となっているもの」である。

配置は参道の奥から本殿、幣殿、拝殿の順で、幣殿は本殿の正面に取り付き、拝殿がその前に立つ。大きさの差ははっきりしていて、建築面積は拝殿が26平方メートル、本殿が3.4平方メートル、幣殿が2.2平方メートルにすぎない。参拝者が向き合うのは拝殿で、その奥に小さな幣殿と本殿が一続きに控える。

3棟は造りの性格も違う。文化庁の解説では、本殿は装飾をほとんど持たない簡素な社殿で、対照的に幣殿は彫刻を多用し、本殿と一体で特徴のある構成をつくるとされる。拝殿は全体を簡素にまとめながら、正面だけを千鳥破風と軒唐破風で飾っている。簡素な本殿、彫刻の幣殿、正面を飾った拝殿という組み合わせは、境内に立って奥へ目を移していくと読み取れる。

神農祭と張子の虎

少彦名神社の例大祭は、毎年11月22日・23日の神農祭である。両日とも午前10時から午後8時まで行われ、五葉笹に張子の虎と御札を付けた御守が授与される。「大阪の祭りはえべっさんに始まり神農さんで終わる」と言われ、一年の祭りを締めくくる「とめの祭」とも呼ばれる。

神農祭は冬至祭とともに薬祖講が維持・運営しており、薬祖講の行事として大阪市の無形民俗文化財になっている。祭りの2日間は道修町の通りに提灯が並び、狭い境内は参拝者で埋まる。

少彦名神社への行き方と参拝の時間

少彦名神社の最寄り駅は、Osaka Metro堺筋線の北浜駅で、6番出口から歩いて5分ほどである。Osaka Metro御堂筋線の淀屋橋駅からは11番出口から徒歩10分、京阪本線の北浜駅からは27番出口から徒歩8分と神社は案内している。

境内の開門は午前8時から午後5時まで。御札・御守の授与は午前9時から午後4時30分まで、御朱印の授与は午前9時30分から午後4時までである。社務所ビルの3階には、平成9年(1997年)に開館したくすりの道修町資料館があり、平日と土曜日の午前10時から午後4時まで(最終入館は午後3時30分)開いている。

神農祭の11月22日は午前9時45分前後に境内への入場が規制されるほか、午後2時から3時ごろは混み合いやすく、混雑時にも入場規制がかかる。神社は午後4時以降が比較的すいていると案内している。

本殿・幣殿・拝殿はいずれも祭祀に使われている社殿で、ふだんの参拝で内部に入ることはできない。棟ごとの見どころと、どこから見るとよいかは各棟のページにまとめた。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):少彦名神社本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002058
国指定文化財等データベース(文化庁):少彦名神社幣殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002059
国指定文化財等データベース(文化庁):少彦名神社拝殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002060
少彦名神社(神農さん):ご由緒
https://www.sinnosan.jp/about/
少彦名神社(神農さん):アクセス
https://www.sinnosan.jp/access/
少彦名神社(神農さん):神農祭
https://www.sinnosan.jp/shinnousai/
くすりの道修町資料館
https://www.sinnosan.jp/kusuri/
大阪市教育委員会:大阪市指定文化財(平成18年度)
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000673968.html
大阪市教育委員会:少彦名神社の薬祖講行事(PDF)
https://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/cmsfiles/contents/0000673/673968/13.pdf

最終更新日: 2026.10.02

基本情報

名称少彦名神社(大阪市)
所在地大阪府大阪市中央区道修町2-1-8
所有者宗教法人少彦名神社
指定登録有形文化財 3件
座標34.68879, 135.50600