旧街道の北側に主屋、南へ酒蔵が延びる酒造場

光栄菊酒造は、佐賀県小城市三日月町織島にある明治中期(1883〜1897年)以来の建物を残す酒造場で、通り蔵及び本蔵をはじめとする6件の建造物が令和3年(2021年)2月26日に国の登録有形文化財に登録された。

読みは「こうえいぎく」。敷地のある織島一帯は、江戸時代には佐賀の大和町方面から小城へ向かう道筋の宿場で、街道沿いに商家が軒を連ねていたと小城市は説明している。いまも旧道の両側に古い建物が点在し、光栄菊酒造の主屋はその旧道に北面して建つ。

敷地の北は旧街道、東と南は田畑である。敷地の境には水量の多い水路が巡る。平坦な田園の中で、南からは田の向こうに大きな酒蔵の屋根と煉瓦の壁が、北の旧道からは赤煉瓦の煙突が見える。小城市はこの二つの眺めを、地域の目印として親しまれている姿として紹介している。

敷地の配置と、工程をなぞる歩き方

中心にあるのは、南北に長い2棟の蔵を東西に並べ、南端でつないだ通り蔵及び本蔵である。平面はコの字形で、建築面積は955平方メートルに及ぶ。登録された6件のうち、残りの5件はこの大きな蔵の北側と東側に取り付く。

北側には、通り蔵に軸を少し振って接続する洗い場及び釜場があり、その東に煉瓦造の煙突が立つ。本蔵の東側には、北からモトクラ、ムロマエ、旧麹室の3棟が南北に連なる。敷地の西側には検査室と瓶詰め倉庫があり、瓶詰め倉庫はかつて米蔵と精米所だった。この西側の建物と主屋は登録の対象に含まれていない。

配置を酒造りの順に読むと、北の洗い場で米を洗い、釜場の大釜で蒸す。煙突はその釜の火の煙を抜く設備である。東側の3棟は麹と酒母にかかわる区画で、名称のムロは麹室、モトは酒母を指す酛(もと)に由来するとみられる。仕込みと貯蔵は中央の大きな蔵が担った。北の旧道側から入り、洗い場、釜場、東側の3棟、中央の蔵へと進むと、作業の流れをおおむねなぞることになる。

建てられた時期には幅がある。施設内で最も古いのはムロマエで、明治中期の建築とされる。通り蔵が大正9年(1920年)、本蔵が昭和2年(1927年)、モトクラが昭和5年(1930年)で、通り蔵と本蔵はともに昭和11年(1936年)に改修を受けた。洗い場及び釜場、旧麹室、煙突は昭和前期(1926〜1945年)の建築とされる。明治から昭和戦前まで、設備を足しながら使い続けた過程が建物の並びに残っている。

廃業、再開、そして6件の登録

光栄菊酒造は2006年にいったん酒造りを終え、蔵は使われないまま残っていた。日本酒専門媒体SAKETIMESの取材記事によれば、テレビ番組の制作に携わっていた2人がこの蔵の存在を知ったのは2018年6月で、創業家から土地と建物を譲り受け、2019年2月に改修工事に着手した。

工事が進んでいた2019年8月末、九州北部を襲った豪雨で蔵は床上浸水の被害を受け、仕上がっていた麹室の床はやり直しになったという。それでも同年12月には再開後最初の酒が出荷され、銘柄名には旧蔵と同じ「光栄菊」が引き継がれた。

国の文化審議会は2020年11月20日、光栄菊酒造の建造物6件を登録有形文化財とするよう答申し、令和3年(2021年)2月26日、第98回の登録として告示された。登録番号は通り蔵及び本蔵の41-114から煙突の41-119までの連番で、6件すべてが「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という同じ基準による。小城市の案内では、2023年2月1日に「22世紀に残す佐賀県遺産」にも認定されている。

個々の建物を単独で見れば、94平方メートルのムロマエや98平方メートルの旧麹室のように小さなものも含まれる。6件がそろって登録されたことで、再び稼働を始めた酒造場の作業空間が、工程の順序ごと文化財として扱われることになった。

訪ねる

光栄菊酒造は現役の酒造場で、文化財として内部を公開している施設ではない。2026年9月25日時点で、蔵元による一般向けの蔵見学、試飲、直売の案内は確認できなかった。敷地や周囲の田畑は私有地なので、立ち入らずに外から眺めることになる。

外観を見るなら二つの方向がある。北の旧道からは、主屋の奥に立ち上がる赤煉瓦の煙突が見える。南側では、田の向こうに通り蔵及び本蔵の大屋根と、煉瓦を張った旧麹室の壁が並ぶ。撮影について蔵元が公表している規則は見当たらないため、道路上から、作業や通行の妨げにならない範囲で撮るのが無難である。

最寄り駅はJR唐津線の小城駅で、酒造場は駅から北東へ直線でおよそ3キロ離れている。徒歩では距離があるため、タクシーか車での移動が現実的である。来訪者向けの駐車場は案内されていない。所在地は佐賀県小城市三日月町織島2602-3。掲載した内容は2026年9月25日に確認した。

参考文献

国指定文化財等データベース 光栄菊酒造通り蔵及び本蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013767
国指定文化財等データベース 光栄菊酒造ムロマエ(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013770
国指定文化財等データベース 光栄菊酒造煙突(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013772
文化遺産オンライン 光栄菊酒造通り蔵及び本蔵
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/541611
小城市の文化財(登録有形文化財) 小城市教育委員会文化課
https://www.city.ogi.lg.jp/main/9887.html
佐賀県・光栄菊酒造が約20年ぶりに復活!(SAKETIMES、2020年3月11日)
https://jp.sake-times.com/knowledge/sakagura/sake_g_koueigiku
光栄菊酒造(小城市)、国の登録文化財に(佐賀新聞、2020年11月20日)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/602595

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称光栄菊酒造
所在地佐賀県小城市三日月町織島字下七本六割2602-3
所有者光栄菊酒造株式会社
指定登録有形文化財 6件
座標33.29927, 130.22634