2棟が登録された、鹿島の町家

吉田家住宅は、佐賀県鹿島市大字中村字本町103にある町家で、主屋と土蔵の2棟が2009年(平成21年)1月8日に登録有形文化財(建造物)となった。指定された文化財ではなく、登録された文化財である。2棟とも年代は明治、1868年から1911年の範囲とされる。

文化庁は主屋を、多良海道に西面する木造2階建の町家、と記す。多良海道は、この地を通る古い街道の名である。

新潟県の新潟市秋葉区と柏崎市にも同じ名の吉田家住宅があるが、いずれも別の家の別の建物である。

家は蔵のように、蔵は座敷のように造る

主屋と土蔵とで、互いの造りを取り入れている。

文化庁は主屋を、外壁を白漆喰仕上げの大壁とし、居蔵造の形態をよく伝える近代町家、と記す。大壁は、柱を壁のなかに塗り込めて見せない造りをいう。居蔵造は、住まいの壁を土蔵のように厚く塗り込める町家の造りである。

一方、土蔵については、2階を3室に間仕切り、西に納戸を配し、中央の四畳から東端の十畳にかけて舟底天井を張り、室境に欄間を設ける、とされる。町家に残る座蔵の一例、と結ばれる。

舟底天井は、船の底を逆さにしたように中央が高く上がる天井をいう。座蔵は、蔵のなかに座敷を設けたものである。

家は壁を塗り込めて蔵のように構え、蔵は2階に畳の部屋を設けて座敷のように使う。二つの建物の造りが、互いに入れ替わることになる。

小原屋原田商店の店蔵は、土蔵造のまま1階を店、2階を居室としていた。本件は、蔵とは別に建つ住まいそのものが、蔵の造りをとる。

通り土間に沿って、居室が並ぶ

主屋の間取りが、町家の型に沿っている。

文化庁は主屋を、内部は南側の通り土間、北側の居室からなる、と記す。通り土間は、表から裏まで通り抜ける土間をいう。

新潟県柏崎市の吉田家住宅主屋も、通り土間沿いに四室を一列に並べていた。胎内市の荒惣の店舗兼主屋も、通り土間に沿って部屋を並べていた。

本件も、南の土間と北の居室で主屋を二つに分ける。遠く離れた町家に、同じ型が見られることになる。

主屋は入母屋造桟瓦葺で、背面に直角に入母屋造を出す、とされる。

通りに向く棟の後ろに、もう一つの入母屋の棟が直角に付く。

銘木の座敷と、腰の煉瓦

見えるところと見えないところとで、材が選び分けられている。

文化庁は主屋について、座敷には黒檀ほかの銘木を使う、と記す。銘木は、木目や色の美しさで選ばれた上等の木材をいう。黒檀は黒く硬い南方の木である。

外について、側面は腰に煉瓦を積む、とされる。腰は壁の下部をいう。白漆喰の大壁の下に、煉瓦がのぞく。

小原屋原田商店の油蔵は、正面の腰壁をなまこ壁としていた。

本件は、腰を煉瓦とし、上を白漆喰とする。内の座敷には南方の銘木、外の腰には煉瓦と、明治の町家が異なる材を取り合わせることになる。

見学

所在は佐賀県鹿島市大字中村字本町103である。2棟とも同じ地番で記される。

主屋は建築面積228平方メートル、土蔵は49平方メートルである。土蔵は敷地の後方に東西棟で建つ、とされる。

土蔵は切妻造妻入、桟瓦葺で、1階を広い1室とする。

所有者の記録がなく、公開の有無や条件は所有者の定めによる。訪問前に確認したい。

2棟の年代は、いずれも明治の範囲で示される。

参考文献

文化遺産オンライン 吉田家住宅主屋(鹿島市)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144861
文化遺産オンライン 吉田家住宅土蔵(鹿島市)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/172902
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/
鹿島市
https://www.city.saga-kashima.lg.jp/

最終更新日: 2026.09.22

基本情報

名称吉田家住宅
所在地佐賀県鹿島市大字中村字本町103
指定登録有形文化財 2件
座標33.11612, 130.09525