十万石ふくさや行田本店店舗:明治の蔵造り建築が息づく埼玉銘菓の本拠地

埼玉県行田市の旧日光館林道沿いに堂々と佇む十万石ふくさや行田本店は、単なるお菓子屋さんではありません。国の登録有形文化財に指定されたこの重厚な土蔵造りの建物は、かつての城下町・行田の商人文化を今に伝える貴重な歴史遺産です。明治16年(1883年)に建てられた店蔵は、築140年を超えてなお、埼玉を代表する和菓子メーカー「十万石ふくさや」の本店として、歴史的建築の風格と温かなおもてなしを融合させています。

歴史的背景

現存するこの建物は、旧山田清兵衛商店の店蔵として明治16年(1883年)に建てられました。初代清兵衛から数えて第11代当主となる伊三郎によって建築されたものです。天保年間(1830〜1844年)の絵図には初代清兵衛が「呉服屋清兵衛」として記されており、古くから行田の町で呉服商を営んでいた名家であったことがわかります。

昭和44年(1969年)、国道拡幅工事に伴い、日本の伝統的な建物移動技術である「曳家(ひきや)」によって現在地に移されました。これを機に株式会社十万石ふくさやの店舗として利用されるようになり、現在に至っています。

十万石ふくさやは、看板商品「十万石まんじゅう」で埼玉県民に広く親しまれています。そのパッケージは板画家・棟方志功がデザインしたもので、「うまい、うますぎる」のキャッチコピーは、長年のテレビCMを通じて埼玉の文化に深く根付いています。

文化財指定の理由

十万石ふくさや行田本店店舗は、平成19年(2007年)10月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。明治期の土蔵造り商家建築の好例として、その保存状態の良さと意匠の質の高さが評価されています。

たちが高く、外観を漆喰で塗り込め、正面2階に観音開きの防火扉を3カ所配置し、大振りの鬼板を棟に載せるなど、重厚かつ洗練された意匠は、旧街道沿いの歴史的景観に大きく寄与しています。忍藩の城下町として栄えた行田の商業建築の伝統を現在に伝える貴重な建造物です。

さらに、平成29年(2017年)には「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」が埼玉県初の日本遺産に認定され、本建物はその構成文化財の一つに位置づけられています。

建築の見どころ

建物は土蔵造2階建で、建築面積は約96平方メートル。間口7.9メートル、奥行約13メートルの堂々たる構えです。屋根は切妻造の桟瓦葺で、街路に面する切妻棟の背面にT字形に棟が接続する特徴的な平面構成を持っています。

外観は黒漆喰塗りで仕上げられ、周囲の街並みに力強い存在感を放っています。2階正面には3カ所の観音開き扉が設けられており、これは火災から蔵内の商品を守るための伝統的な防火装置です。棟上に載る大振りの鬼瓦は、建物に威厳と風格を添えています。

内部は和菓子店の店舗として美しく改装されていますが、土蔵造りの分厚い壁や重厚な木組みの構造体は健在で、買い物をしながら明治の商家建築の趣を感じることができます。

訪問案内

十万石ふくさや行田本店では、名物の和菓子を購入しながら、明治の商家建築の雰囲気を楽しむことができます。店内では冷たい麦茶のおもてなしがあり、椅子も用意されているため、行田のまち歩きの休憩スポットとしても最適です。

毎月開催される「行田花手水week」の期間中は、店先に美しい花手水が飾られ、華やかな雰囲気が楽しめます。

秩父鉄道行田市駅から徒歩約10分。JR高崎線行田駅からは市内循環バスの利用が便利です。東京方面からは北陸新幹線で熊谷駅まで約36分、そこから秩父鉄道に乗り換えて約10分で行田市駅に到着します。

周辺の観光スポット

行田市には、本店と合わせて楽しめる歴史・文化スポットが数多くあります。

忍城址(おしじょうし):本店から徒歩約15分。室町時代に築城され、豊臣秀吉の関東平定の際に石田三成の水攻めにも耐えた名城として知られています。小説・映画『のぼうの城』の舞台としても有名です。隣接する行田市郷土博物館では、行田の歴史を古代から現代まで学ぶことができます。

足袋蔵めぐり:行田の裏通りには約80棟の足袋蔵が現存しています。土蔵、石蔵、モルタル蔵など多彩な建築様式の蔵が、カフェやそば店、セレクトショップなどに生まれ変わり、新たな魅力を発信しています。

さきたま古墳群:5世紀後半から7世紀にかけて造られた9基の大型古墳が集中する国の特別史跡です。日本最大の円墳・丸墓山古墳をはじめ、国宝の金錯銘鉄剣が出土した稲荷山古墳などが見どころです。

古代蓮の里:夏季には、1971年に行田市内で発見された約1,400〜3,000年前の蓮の種から育てられた古代蓮の花が一面に咲き誇ります。

行田花手水:忍城址や行田八幡神社を中心に、町中の店舗や神社で美しい花手水が飾られるイベント。毎月のライトアップイベントも人気です。

Q&A

Q十万石ふくさや行田本店の建物はどのような建築ですか?
A明治16年(1883年)に旧山田清兵衛商店の店蔵として建てられた土蔵造2階建の建物です。平成19年(2007年)に国の登録有形文化財に登録されました。間口7.9メートル、奥行約13メートル、建築面積約96平方メートルの堂々たる構えで、黒漆喰の外壁や大振りの鬼瓦が特徴です。
Q十万石まんじゅうとはどのようなお菓子ですか?
A北海道産小豆や国産のつくね芋などの厳選素材を使用した蒸し饅頭です。板画家・棟方志功がデザインしたパッケージと「うまい、うますぎる」のキャッチコピーで知られ、埼玉県を代表する銘菓として親しまれています。
Qアクセス方法を教えてください。
A秩父鉄道行田市駅から徒歩約10分です。JR高崎線行田駅からは市内循環バスをご利用ください。東京方面からは北陸新幹線で熊谷駅まで約36分、秩父鉄道に乗り換えて約10分で行田市駅に到着します。
Q建物の見学に入場料はかかりますか?
Aいいえ、入場料はかかりません。営業中の和菓子店ですので、どなたでも自由に入店して建築を鑑賞し、商品を購入することができます。冷たい麦茶のサービスや休憩用の椅子も用意されています。
Q日本遺産との関係は?
A平成29年(2017年)に認定された日本遺産「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」の構成文化財の一つです。行田は約300年の歴史を持つ日本一の足袋産地であり、町中に残る多様な足袋蔵とともに、本建物も城下町の歴史的景観を形成する重要な要素となっています。

基本情報

名称 十万石ふくさや行田本店店舗
指定区分 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成19年(2007年)10月2日
建築年 明治16年(1883年)/昭和44年(1969年)曳家
構造 土蔵造2階建、桟瓦葺
建築面積 約96㎡
規模 間口7.9m × 奥行約13m
所在地 埼玉県行田市行田20-15
所有者 株式会社十万石ふくさや
アクセス 秩父鉄道行田市駅より徒歩約10分

参考文献

十万石ふくさや行田本店店舗 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/197439
十万石ふくさや行田本店店舗 — 行田市公式サイト
https://www.city.gyoda.lg.jp/soshiki/shougaigakusyubu/bunkazaihogo/gyomu/rekishi_bunkazai/1/2327.html
十万石ふくさや行田本店店舗 — 日本遺産ポータルサイト(文化庁)
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/2993/
十万石行田本店 — 十万石ふくさや公式サイト
https://www.jumangoku.co.jp/shop/374/
国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006446
日本遺産「和装文化の足元を支え続ける足袋蔵のまち行田」— 行田市
https://www.city.gyoda.lg.jp/soshiki/shougaigakusyubu/bunkazaihogo/gyomu/rekishi_bunkazai/nihonisan/10389.html

最終更新日: 2026.04.10