太陽軒:大正ロマン薫る国登録有形文化財の西洋料理店

川越の蔵造りの町並みから路地を入ると、淡いピンク色の色漆喰が印象的な洋館が静かに佇んでいます。大正11年(1922年)に創業した西洋料理店「太陽軒」(現・モダン亭太陽軒)は、昭和初期に建てられた建物とともに100年以上の歴史を刻み続けてきました。平成16年(2004年)には国の登録有形文化財に指定され、関東大震災後の復興商業建築の貴重な遺構として、その建築的価値が高く評価されています。

歴史的背景

太陽軒は大正11年(1922年)、日本が西洋文化を積極的に取り入れていた大正時代に、西洋料理店として創業しました。現存する建物は昭和4年(1929年)頃に建てられた木造漆喰塗り2階建ての洋館で、大正12年の関東大震災後の復興期における商業建築の雰囲気をよく伝えています。

平成16年(2004年)には竣工当時の姿を復元する大規模な改修工事が行われ、同年11月8日に国の登録有形文化財に指定されました。創業以来、洋食一筋を貫いてきた太陽軒は、改修を機に「モダン亭太陽軒」と名称を改め、歴史ある建物とともに新たな時代を歩み始めました。現在も小江戸川越を代表する老舗西洋料理店として、多くの人々に親しまれています。

文化財指定の理由

太陽軒が登録有形文化財に指定された主な理由は、関東大震災後の復興商業建築の雰囲気をよく伝える建造物であることにあります。

建物は寄棟造、スレート葺の木造2階建てで、軒をやや深く突出させて屋根を隠したつくりが特徴です。特に東南角部には表現主義的な造形意匠が施されており、隅切りの玄関、玄関上部の円形庇、2階の尖頭隅窓、独特の柱頭を持つ隅柱など、当時の先端的なデザインが見られます。

建築内外とも建設当時の意匠やプランがよく残されており、川越市内に残る洋風モダン建築の中でも比較的規模が大きいことから、昭和初期の雰囲気を今に伝える貴重な建築遺構として評価されています。

建築・意匠の見どころ

太陽軒の最大の特徴は、外壁に施された色漆喰塗りです。淡いピンク色を帯びたこの仕上げは、他の洋風モダン建築にはほとんど見られない独特のもので、建物全体に温かみのある雰囲気を与えています。

建物の内外には放物線を描くアーチが多用され、優美なリズム感を生み出しています。ステンドグラスから差し込む色鮮やかな光は、店内を温かく照らし、大正時代にタイムスリップしたかのような空間を演出しています。

1階はステンドグラスの光を浴びながら食事を楽しめるレストランフロアで、建設当時の木材の温もりが感じられる落ち着いた空間です。2階は和洋折衷の大正ロマンを体感できる御座敷となっており、最大56名まで収容可能な大広間として利用できるほか、職人が趣向を凝らした小さな和室など、1階とはまた異なる魅力があります。

その独特の佇まいから、映画「海月姫」やNHKドラマ「昭和元禄落語心中」「芙蓉の人〜富士山頂の妻〜」「仮面ライダー電王」など、数多くの映像作品のロケ地としても使用されてきました。

ご利用案内

太陽軒は現在も西洋料理店として営業しており、食事をしながら文化財建築を堪能することができます。料理は埼玉県の「S級グルメ」に認定されており、地元の食材を活かした伝統的な西洋料理が楽しめます。ランチにはモダン亭洋食セットなどのセットメニューが用意されており、ディナーには西洋懐石コース(7,700円〜)をお召し上がりいただけます。

営業時間は水曜日から日曜日までで、ランチが11:00〜15:00(ラストオーダー14:00)、ディナーが17:00〜21:30(ラストオーダー20:30)です。月曜日と火曜日が定休日ですが、祝日の場合は営業いたします。ディナーは完全予約制となっておりますので、事前のご予約をお勧めいたします。

最寄り駅は西武新宿線の本川越駅で、徒歩約16分です。JR・東武東上線の川越駅からは徒歩約25分です。東武バス「市役所前」バス停、または小江戸巡回バス「市役所」バス停からは徒歩約1分とたいへん便利です。

周辺の観光スポット

太陽軒は川越の歴史的な町並みの中心に位置しており、「小江戸」と呼ばれるこの街の魅力を存分に楽しむことができます。

すぐ近くには「蔵造りの町並み」が広がっています。黒漆喰の壁を持つ江戸時代の商家が立ち並ぶこの通りは、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されており、現在の東京では見ることのできない江戸の面影を今に伝えています。

蔵造りの町並みにひときわ高くそびえる「時の鐘」は、約400年前から川越の時を告げ続けてきた高さ約16メートルの鐘楼です。現在も1日4回鐘が鳴り響き、その音色は環境省の「残したい日本の音風景100選」にも選ばれています。

色とりどりのガラスが散りばめられた石畳の道に約20軒の菓子店がひしめく「菓子屋横丁」では、懐かしい手作りのお菓子を楽しめます。縁結びの神社として名高い「川越氷川神社」、江戸時代の面影を残す「川越城本丸御殿」なども徒歩圏内にあり、一日かけてじっくり散策するのに最適なエリアです。

Q&A

Q食事をせずに建物だけ見学することはできますか?
A太陽軒は営業中のレストランですので、建物内部を見学するには食事のご利用をお勧めいたします。ただし、色漆喰の外壁やアーチ型の玄関、ステンドグラスなど、建物の外観は自由にご覧いただけます。ランチタイムにご予約の上お越しいただくと、お食事とともに文化財建築をゆっくりお楽しみいただけます。
Q2階の座敷は利用できますか?
A2階の御座敷は、ご宴会やお祝い事、ご法事などの団体利用に対応しております。4名様から最大52名様までの完全個室としてご利用いただけます。ご利用の際は事前のご予約が必要です。
Qどのような料理が楽しめますか?
A大正11年の創業以来、伝統的な西洋料理(洋食)を提供しています。特大エビフライ、カツレツ、ホワイトシチュー、ロールキャベツなど、昔懐かしい洋食メニューが楽しめます。埼玉県の「S級グルメ」にも認定されており、川越市の洋食店としては唯一の認定店です。
Q東京から日帰りで訪れることはできますか?
Aはい、川越は東京から気軽にアクセスできます。池袋駅から東武東上線の急行で約30分で川越駅に到着します。新宿駅からは西武新宿線で本川越駅まで約50分です。川越の歴史的な町並みの散策とあわせて、太陽軒での食事を楽しむ日帰り旅行に最適です。
Q駐車場はありますか?
A太陽軒周辺には有料のコインパーキングがございます。ただし、蔵造りの町並み周辺は特に土日祝日は大変混雑いたしますので、公共交通機関のご利用をお勧めいたします。東武バス「市役所前」バス停や小江戸巡回バス「市役所」バス停からは徒歩約1分です。

基本情報

名称 太陽軒(モダン亭太陽軒)
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)(平成16年11月8日登録)
分類 近代その他 / 昭和以降
竣工 昭和4年(1929年)頃
構造 木造2階建、スレート葺、建築面積154㎡
創業 大正11年(1922年)
所有者 株式会社太陽軒
所在地 〒350-0062 埼玉県川越市元町1-1-23
電話番号 049-222-0259
営業時間 ランチ 11:00〜15:00(LO 14:00)/ ディナー 17:00〜21:30(LO 20:30)
定休日 月曜日・火曜日(祝日の場合は営業)
アクセス 西武新宿線 本川越駅より徒歩約16分 / JR・東武東上線 川越駅より徒歩約25分
公式サイト https://taiyouken.co.jp/

参考文献

太陽軒 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/117214
国登録有形文化財 | モダン亭太陽軒 公式サイト
https://taiyouken.co.jp/kunitouroku/
モダン亭 太陽軒 | 川越ロケーションライブラリ
https://www.city.kawagoe.saitama.jp/locationlibrary/location/094.html
太陽軒|スポット情報 - 小江戸川越観光協会
https://koedo.or.jp/spot_038/
太陽軒の歴史 | モダン亭太陽軒 公式サイト
https://taiyouken.co.jp/history/

最終更新日: 2026.04.13