高澤家住宅 ― 行田市長野に残る養蚕豪農の屋敷
高澤家住宅(たかざわけじゅうたく)は、埼玉県行田市長野三丁目にある豪農の屋敷で、江戸末期の主屋と安政6年(1859年)建立の長屋門を中心とする5棟が、平成19年(2007年)5月15日に登録有形文化財に登録された。
登録されたのは主屋・離れ・土蔵・納屋・長屋門の5棟で、登録番号は11-0102から11-0106までの連番になっている。建物の年代は江戸後期の土蔵から明治30年(1897年)頃の離れまでおよそ1世紀の幅があり、主屋と納屋の2階にはどちらも蚕室が設けられている。行田市はこの屋敷を、江戸時代末の豪農の暮らしぶりを伝える養蚕農家の住居として紹介している。
5棟のうち主屋だけが「造形の規範となっているもの」、ほかの4棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で国の登録有形文化財となった。屋敷は現在、主屋の一部が「髙澤記念館」のカフェギャラリーとして週末に開かれている。
高澤家の歩み
高澤家がいつからこの地に住んだかを直接示す文書は知られていないが、菩提寺に寛文6年(1666年)に亡くなった高澤三右ェ門の名が残ることから、江戸時代の初めには長野村に居を構えていたと考えられている。
屋敷の建物で年代がはっきりしているのは長屋門である。門には「安政六年己未吉日高澤磯右ヱ門建立」と記した棟札が伝わり、幕末の当主が表構えを整えたことがわかる。
明治末から昭和初期にかけての当主、高澤俊徳は長野村の村長と埼玉県議会の議長を務めた。長野村信用組合の設立、坂巻導水路の建設、小針沼の干拓などに関わり、地域の基盤づくりに力を尽くした人物として記念館で紹介されている。高澤家住宅の離れは、奉公人が増えたために主人の住まいとして明治30年頃に増築されたと記録されており、明治に入っても屋敷に手が加えられ続けたことがわかる。
5棟の配置と年代
高澤家住宅の建物群は、敷地の中央やや北寄りに南を向いて建つ主屋を起点に組み立てられている。主屋の正面、敷地の南端に長屋門が開き、門をくぐると正面に主屋が見える構えである。
主屋の西側には、内廊でつながる離れが続く。主屋の北には土蔵が南を向いて建ち、敷地の東寄りには、「篠屋(しのや)」と呼ばれる納屋が西を向いて立つ。行田市の説明では納屋の位置を主屋の南東としている。
年代を登録の記録で並べると、江戸後期(1751〜1829年)の土蔵、江戸末期(1830〜1867年)の主屋、安政6年(1859年)の長屋門、明治3年(1870年)頃の納屋、明治30年(1897年)頃の離れの順になる。主屋には明治期と昭和期の増築があり、長屋門も昭和50年(1975年)頃に改修されている。
主屋の2階の蚕室、納屋の2階の蚕室、そして両方の建物に開けられた換気用の高窓は、この屋敷が養蚕で家を支えていたことを外観からも示している。
景観賞と現在の使われ方
高澤家住宅は、行田市が平成17年(2005年)に始めた「浮き城のまち景観賞」の第1回で、「行田らしさ部門」の1件に選ばれた。選定理由には、江戸後期の名主屋敷のたたずまいが往時の面影を残していること、前庭を抜けて門をくぐると町の音が遠のくことが挙げられている。
屋敷はその後も住まいとして使われながら、染色や陶芸の工房ギャラリーとしての役割を担ってきた。埼玉県女流工芸作家協会を創設した高澤英子の作品が館内に展示され、現在は同協会会長のアトリエ兼住宅となっている。
高澤家住宅の見学について
高澤家住宅は個人の住宅であり、行田市の文化財一覧では公開状況を「外観のみ」としている。そのうえで、所有者側が運営する髙澤記念館の公式サイトによると、2026年9月の時点で金曜日・土曜日・日曜日の午前11時から午後4時まで、主屋の一部をカフェギャラリーとして一般に開けている。ランチは午前11時から午後2時まで。開館時間は時期によって変わり、夏季と年末年始には休館期間があるため、出かける前に公式サイトで確かめたい。
見学料の案内はなく、主屋の内部に入れるのはカフェギャラリーを利用する場合に限られる。離れ・土蔵・納屋の内部は公開されていない。撮影についての決まりは公式サイトに示されていないので、店内や展示作品を撮るときはその場で声をかけてほしい。敷地の奥や建物の裏手へは回らず、長屋門から主屋へ向かう通路とその周りにとどめるのが礼儀である。
車の場合、長屋門の入口の西側に専用駐車場があり、普通車およそ18台と、その東側に6台分が用意されている。カーナビには長屋門側の「行田市長野3丁目6-18」を入れるよう案内されている。
公共交通では、埼玉県の景観資源データシートが秩父鉄道の東行田駅から徒歩20分としている。JR高崎線の行田駅からは行田市の市内循環バス「観光拠点循環コース」で「長野新大橋」まで約13分、運賃は大人200円で、停留所からは北へ歩く。本数は1日9便なので、帰りの時刻も先に確認しておくとよい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 高澤家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005796
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 高澤家住宅長屋門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006013
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 高澤家住宅離れ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006015
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 高澤家住宅土蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006011
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 高澤家住宅納屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006012
- 文化遺産オンライン ― 高澤家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/118674
- 行田市 ― 高澤家住宅(主屋等5棟)
- https://www.city.gyoda.lg.jp/soshiki/shougaigakusyubu/bunkazaihogo/gyomu/rekishi_bunkazai/1/2323.html
- 行田市 ― 浮き城のまち景観賞
- https://www.city.gyoda.lg.jp/soshiki/toshiseibibu/toshi_keikaku/gyomu/kaihatsu_keikaku/1316.html
- 埼玉県景観資源データベース ― 高澤家住宅
- https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/65003/1120607003_20211223.pdf
- 行田市 ― 市内循環バス
- https://www.city.gyoda.lg.jp/kurashi/doro_kotsu/kokyokotsu/5949.html
- 行田市 ― 観光拠点循環コース時刻表(令和8年7月1日から)
- https://www.city.gyoda.lg.jp/material/files/group/15/newdaiyakankoukyoten20260701.pdf
- 髙澤記念館 公式サイト
- https://takazawakan.jimdofree.com/
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 高澤家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県行田市長野3-5-41 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 5件 |
| 座標 | 36.13953, 139.47336 |