大法会のために建てられた大書院

重要文化財の客殿の北側に、これと向かい合って建つ大きな建物が西教寺書院である。桁行13間・梁間9間という規模で、入母屋造・桟瓦葺の屋根が広くのびる。大正5年(1916)の建築で、翌大正6年に営まれた不断念仏の大法会に合わせて用意された。

西教寺は文明18年(1486)に真盛上人が不断念仏の道場と定めて以来、一日も念仏を絶やさぬ寺として知られる。念仏相続の節目に大規模な法会が営まれ、多くの参詣者を迎えるための場としてこの書院が建てられた。伏見城の遺構と伝わる桃山の客殿と並び立つことで、境内の中心部に近代の大空間が加わった。

表書院と裏書院の二重構成

内部は南側の表書院4室と、北側の裏書院6室からなる。接客や儀礼の表向きの座敷と、その奥に控える実務の座敷とを、屋根の下でひとつにまとめた構成である。伝統的な書院造の枠組みを踏まえつつ、柱や梁は太く、造作は端正で力強い。

客殿が桃山の華やかさを見せるのに対し、この書院は近代の職人が伝統様式を大づかみに再構成した趣がある。細部の繊細さより、部材の太さと構えの大きさで見せる建築で、大人数の法会を支える実用の器としての性格が表れる。2001年(平成13)8月28日に登録有形文化財となった。

回廊で結ばれた伽藍を歩く

書院は本堂・客殿とともに回廊で結ばれ、拝観順路のなかで客殿とあわせて巡ることができる。客殿の狩野派の襖絵や小堀遠州作と伝わる庭を見たあと、向かいの書院に移ると、同じ座敷建築でも性格の違いが感じ取れる。

静かな境内で、書院の広い畳の間に座ると、大法会に集った人々の気配が想像される。派手な見せ場は少ないが、不断念仏という西教寺の営みを支えてきた建築として、腰を据えて眺めたい一棟である。

Q&A

Q書院はいつ、何のために建てられましたか。
A大正5年(1916)の建築で、翌大正6年の不断念仏の大法会に合わせて、多くの参詣者を迎えるために建てられました。
Q客殿とはどう違いますか。
A客殿は伏見城の遺構と伝わる桃山期の重要文化財で、書院はその向かいに建つ大正の登録有形文化財です。書院は表書院・裏書院の10室からなります。
Q見学はできますか。
A本堂・客殿とともに回廊で結ばれ、拝観順路のなかで巡ることができます。客殿等の拝観は有料です。
Q書院造とは何ですか。
A床の間や違い棚、付書院などを備えた武家・寺院の座敷様式で、近世の住宅建築の基本形です。この書院は太い部材で端正にまとめられています。

基本情報

名称西教寺書院(さいきょうじしょいん)
所在地滋賀県大津市坂本本町3210
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2001年(平成13)8月28日
年代大正5年(1916)
員数1棟
構造木造平屋建、瓦葺、入母屋造、桁行13間・梁間9間、建築面積490㎡
所有者宗教法人西教寺
拝観客殿とあわせ拝観可(有料)。目安9:00〜16:30

参考文献

西教寺書院 — 国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002273
西教寺 — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/西教寺
西教寺 — 滋賀県観光公式サイト
https://www.biwako-visitors.jp/spot/detail/88/
西教寺 — びわ湖大津 観光公式(大津市観光協会)
https://otsu.or.jp/tendai3souhonzan/saikyoji/saikyoji.html

最終更新日: 2026.07.08