兵火を免れた一棟
清水寺本堂(きよみずでらほんどう、寺では根本堂と呼ぶ)は、島根県安来市清水町にある室町時代中期の仏堂で、明徳4年(1393年)の建立、明治37年(1904年)2月18日に国の指定を受け、現行の文化財保護法のもとで重要文化財となっている。山陰を代表する天台宗寺院・瑞光山清水寺の中心堂宇であり、京都の清水寺や長崎の清水寺本堂とは別の建物である。
寺伝によれば、開山は用明天皇2年(587年)、尊隆上人による。その後一時廃れ、大同元年(806年)に平城天皇の勅旨を受けた盛縁上人が復興したと伝わる。さらに承和14年(847年)、唐からの帰路に立ち寄った円仁(慈覚大師)が光明真言会を創始し、天台宗に帰依したという。いずれも寺伝によるもので、同時代の文書で裏づけられているわけではない。
年代がはっきりしているのは建物そのものである。明徳4年(1393年)にほぼ現在の寺域が定まり、根本堂もこの年に建てられた。棟札4枚が現存し、本堂とともに附として指定されている。
そして16世紀。安来周辺は尼子氏と毛利氏の合戦の舞台となり、山内の建物は根本堂を除いてすべて兵火で失われた。以後、毛利家、続いて松江藩松平家の庇護のもとで伽藍の再建が進む。最盛期には数十の僧坊を擁したという寺の、焼け残った一棟が今日まで立っている。
桁行七間・梁間七間、そして「五代目」という調査結果
文化庁の記録は簡潔である。桁行七間、梁間七間、一重、入母屋造、こけら葺。方七間という規模の中世仏堂は山陰に多くない。屋根は薄く割った木材を重ねるこけら葺で、瓦では出せない柔らかい軒の線をつくる。
明治37年(1904年)の指定は島根県内でも最初期にあたる。指定番号00318という数字が、国による寺院建築の悉皆調査が始まったばかりの時期であることを示している。
平成4年(1992年)に完了した解体修理は、この建物についてもっとも興味深い事実をもたらした。工事にともなう調査により、現在の建物がこの場所に建った5番目の堂であり、かつ最大の規模であることが確認されたのである。焼失と再建を繰り返しながら次第に大きくなり、明徳4年の建物でその系列が止まった。
堂内の本尊は十一面観世音菩薩で、精巧な漆塗りの厨子に秘仏として安置される。両脇には平安時代の作とされる四天王像が立つ。なお、平安時代・10世紀までに造立されたと考えられる木造十一面観音立像も国の重要文化財に指定されており、現在は宝物館に安置されている。寺の説明によれば、もともとはこの十一面観音が秘仏の御本尊で、現在本堂にまつられる四臂十一面観音は、井戸のある後陣に背中合わせでまつられる「裏観音」であったという。
堂内には奉納された絵馬7枚が掛かる。最も古いのは大きな黒馬を描いた室町時代のもの。目当てにする人が多いのは尼子十勇士の絵馬で、十人全員が描かれた資料はこの一点のみと寺は説明している。
石段を上がる ― 拝観の実際
参道は杉木立を抜ける長い石段である。樹齢千年とも伝わる杉が立ち並ぶ。境内は清水月山県立自然公園の一角、5万坪余の山腹に広がり、堂宇は石段で結ばれた段丘の上に配置されている。
最後の石段を上りきったら狛犬を見てほしい。腰が肩より高い、いわゆる尻上がりの姿勢をとる珍しい形で、地元では「尻上がりに良くなる」として縁起がよいとされてきた。
境内の拝観は無料である。本堂業務は午前9時から午後4時30分まで、祈祷受付は午後4時まで。開山時間は早朝からとされるが、令和7年(2025年)9月以降は当面の措置として時間が調整されているため、早朝に訪ねる場合は事前確認をおすすめする。
有料かつ予約制のものが二つある。ひとつは安政6年(1859年)建立の三重塔で、島根県指定有形文化財。本堂の左奥に建ち、最上階まで登って安来の農村と街並みを見渡せる。塔建築の訓練を受けていない地方の大工が三世代、33年をかけて仕上げたと伝わり、軒下の組物のあいだから覗く精緻な龍の彫刻が、その独学の到達点を示している。もうひとつは宝物館で、先述の十一面観音立像や平安時代末期の阿弥陀三尊などを収める。拝観料はそれぞれ大人500円、中学・高校生300円、小学生以下100円。拝観時間は午前9時から午後4時までで、正午から午後1時までは昼休みのため休止。申し込みは拝観日の1週間前まで。12月1日から3月31日までは予約受付を停止するが、宝物館は春と秋の特別拝観期間中に限り予約不要となる。
坐禅と念々写経のミニ修業体験は4月から11月末まで、各1,000円、所要約1時間、9時から12時と14時から16時の枠で予約を受け付けている。境内には旅館と、清水羊羹を扱う店が並ぶ。精進料理と羊羹はいずれも円仁が伝えたとの伝承をもつ。桜と紅葉の季節がもっとも混み合う。
アクセスは車が基本になる。駐車場は無料で約100台。安来ICから車で約10分、JR安来駅から車で約15分。庭園で知られる足立美術館も同じ安来市内にあり、午前中を清水寺、午後を美術館という組み立てがしやすい。
Q&A
- 安来の清水寺は、京都の清水寺と同じ寺院ですか?
- 別の寺院です。名称が同じだけで関係はありません。安来の清水寺は島根県の天台宗寺院で、本堂(根本堂)は明徳4年(1393年)建立の重要文化財です。京都の清水寺は世界遺産で本堂は国宝、長崎にも重要文化財の本堂をもつ清水寺があります。
- 清水寺本堂は拝観できますか。拝観料はかかりますか?
- 境内および本堂の拝観は無料です。本堂業務は午前9時から午後4時30分まで、祈祷受付は午後4時までです。三重塔と宝物館は別途有料かつ予約制で、大人500円、中学・高校生300円、小学生以下100円となっています。
- 清水寺本堂はなぜ重要文化財に指定されたのですか?
- 明治37年(1904年)2月18日に指定され、島根県内でも最初期の指定にあたります。明徳4年(1393年)建立の桁行七間・梁間七間、入母屋造こけら葺の大規模な中世仏堂で、16世紀の尼子・毛利の兵火を免れた山内唯一の建物です。平成4年の解体修理では、この場所で5番目かつ最大の堂であることが確認されました。
- 清水寺の三重塔には登れますか?
- 1週間前までに予約すれば登れます。安政6年(1859年)建立の島根県指定有形文化財で、最上階から安来の農村と街並みを見渡せます。12月1日から3月31日までは予約受付を停止しており、拝観日も正午から午後1時までは休止となります。
- 清水寺への行き方と駐車場を教えてください。
- 所在地は安来市清水町528番地。安来ICから車で約10分、JR安来駅から車で約15分です。駐車場は無料で約100台分あります。駐車場から本堂までは杉木立の長い石段が続くため、時間に余裕をもち、歩きやすい靴でお越しください。
基本情報
| 名称 | 清水寺本堂(きよみずでらほんどう)/寺号は瑞光山清水寺、天台宗。堂は根本堂とも呼ぶ |
|---|---|
| 所在地 | 島根県安来市清水町(寺院所在地:安来市清水町528番地) |
| 指定区分 | 重要文化財(指定番号00318) |
| 指定年 | 明治37年(1904年)2月18日 |
| 員数 | 1棟(附として棟札4枚) |
| 寸法 | 桁行七間、梁間七間、一重、入母屋造、こけら葺(明徳4年/1393年建立) |
| 所有者 | 清水寺 |
| 公開状況 | 境内・本堂の拝観は無料(本堂業務は午前9時-午後4時30分、祈祷受付は午後4時まで)。三重塔・宝物館は有料・予約制で大人500円、中高生300円、小学生以下100円、拝観時間は午前9時-午後4時(正午-午後1時は休止)。12月1日-3月31日は予約受付停止。駐車場無料約100台 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「清水寺本堂」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2963
- 文化遺産オンライン「清水寺本堂」(島根県)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/177733
- 安来清水寺 公式サイト
- https://www.kiyomizudera.jp/
- 安来清水寺「拝観案内」(拝観料・拝観時間)
- https://www.kiyomizudera.jp/visiting_information/
- 安来市観光ガイド「清水寺」
- https://yasugi-kankou.com/spot/kiyomizu-temple/
- 国土交通省 地域観光資源の多言語解説文データベース「清水寺」
- https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R2-01640.html
最終更新日: 2026.08.21