境内から離れて立つ門
雲樹寺四脚門(大門)は、島根県安来市の臨済宗妙心寺派の古刹、瑞塔山雲樹寺の参道に立つ四脚門で、文化庁は室町前期(1333年〜1392年)の建立とし、明治37年(1904年)2月18日に重要文化財として指定された記録を残している。
四脚門という名は支え方から来ている。棟を受ける本柱2本の前後に控柱を4本添える形式で、この控柱が「四つの脚」にあたる。平安時代以来、寺院や邸宅の門に用いられてきた。屋根は簡素な切妻造、葺きは平瓦と丸瓦を交互に並べる本瓦葺である。
訪れた人がまず戸惑うのは、この門の位置だろう。山門・仏殿・方丈が並ぶ雲樹寺の中心伽藍は、ここからかなり東にある。参道は中海に注ぐ伯太川のほとりから始まり、県道に沿って東へ延びる。大門はその途中に、ぽつんと立っている。この一帯は両端に水路が通るため、地元では浮き道とも呼ばれてきた。門から東へ歩けば簡素な石門があり、断酒と息災を祈る酒断ち地蔵を過ぎ、道が大きくカーブしたところでようやく山門が現れる。
大門は西を向いている。彼岸の頃、時刻を選んで振り返ると、門の開口部に夕日が収まる。
文化庁の記録では所在地が安来市宇賀荘町、寺務所は清井町にある。この住所の差が、かつての参道の長さを示している。
明治37年という指定年の意味
指定年月日として記録されている明治37年2月18日には、一度立ち止まる価値がある。日本の近代的な文化財保護は明治30年(1897年)の古社寺保存法に始まり、この格の建造物は当時「特別保護建造物」と呼ばれた。その地位は昭和4年(1929年)の国宝保存法に引き継がれ、昭和25年(1950年)の文化財保護法施行にともなって重要文化財へと読み替えられた。文化庁データベースの明治37年という日付は最初の指定日であり、この門が島根県内でも最初期に保護対象となった建造物であることを示している。
評価の根拠の多くは、生き残ったという事実にある。雲樹寺の創建は元亨2年(1322年)。当地の地頭が孤峰覚明、のちの三光国師を招き、沼地を干拓して寺を開いたと伝わる。後醍醐天皇と後村上天皇の勅願寺となり、最盛期には塔頭20余院を数えたという。ところが文政3年(1820年)の火災で堂塔の大半が焼失する。難を逃れたのが大門、山門、薬師堂、そして庭園だった。仏殿・方丈・開山堂など今日目にする伽藍は、江戸時代後期以降の再建である。
木組みの細部には、鎌倉時代に南宋から伝わった禅宗様の手法が見て取れる。現地の案内板は、その構造を四脚門としては他に類を見ないものと説明している。寺伝は創建期の鎌倉時代末期にさかのぼる建物としており、文化庁の室町前期という年代とはわずかに食い違う。両者が異なる場合は文化庁の記載に従うべきだろう。
雲樹寺が伝える重要文化財はこの門だけではない。開山堂に安置される高麗梵鐘(朝鮮鐘)もそのひとつで、日本に現存する朝鮮鐘のなかで最古とも言われている。
拝観と見どころ
大門をくぐるだけなら費用はかからない。参道は公道に沿っており、雲樹寺の参拝自体も無料で、門は常識的な時間帯であれば自由に見学・撮影できる。有料なのは案内付きの拝観のほうで、本堂外廊・開山堂・元禄の庭園を案内人の説明とともに巡る。料金は大人500円、中学生以下300円。受付は8時30分から17時まで。年末年始とお盆の期間は拝観を休止する。団体は電話予約が必要である。
方丈の背後に広がる枯山水庭園は、元禄3年(1690年)の伽藍大修理完成を記念して作庭されたと伝わる。裏山の斜面を活かして植えられたツツジとサツキが、4月から6月にかけて波のように重なって咲く。見頃は5月。地元でサツキ寺、ツツジ寺と呼ばれるのはこのためだ。同じ斜面は秋に色づき、雪をかぶった姿もよい。
門の外観撮影に制限はない。案内付き拝観の内部撮影については受付で確認してほしい。
アクセスは安来ICから車で約8分。JR安来駅からイエローバスで約15分、「雲樹寺入口」下車すぐ。駐車場は無料で30台から50台分ある。同じ安来市内には清水寺があり、名庭で知られる足立美術館も近い。雲樹寺は出雲国神仏霊場の第十二番札所にあたるため、巡拝の朱印を受けることもできる。
Q&A
- 雲樹寺四脚門(大門)は無料で見学できますか。
- 見学できます。門は参道沿いに立っており、参拝も含めて無料で、撮影も自由です。有料になるのは本堂外廊・開山堂・元禄の庭園をめぐる案内付き拝観のみで、大人500円、中学生以下300円です。
- 雲樹寺四脚門はいつの建物で、いつ指定されましたか。
- 文化庁は室町前期(1333年〜1392年)の建立とし、指定年月日を明治37年2月18日と記録しています。これは古社寺保存法による特別保護建造物としての指定で、昭和25年の文化財保護法施行により重要文化財となりました。寺伝はこれよりやや早い鎌倉時代末期としています。
- 雲樹寺四脚門はどのような構造ですか。
- 四脚門です。棟を受ける本柱2本の前後に控柱を4本添える形式で、屋根は切妻造、葺きは平瓦と丸瓦を交互に用いる本瓦葺です。木組みには南宋から伝わった禅宗様の手法が見られます。
- 雲樹寺四脚門はなぜ伽藍から離れて立っているのですか。
- 雲樹寺の参道が伯太川のほとりから県道沿いに東へ長く延びており、大門はその途中に位置するためです。中心伽藍はさらに東へ進んだ先にあります。文化庁の記録では門の所在地が宇賀荘町、寺務所は清井町となっています。
- 雲樹寺を訪れるのに適した時期はいつですか。
- 庭園斜面のツツジとサツキが咲く4月から6月、なかでも5月が見頃です。秋の紅葉と冬の雪景色も枯山水によく合います。受付は8時30分から17時まで、案内付き拝観は年末年始とお盆に休止します。彼岸の頃には西向きの大門の開口部に夕日が入ります。
基本情報
| 名称 | 雲樹寺四脚門(大門)/うんじゅじしきゃくもん(だいもん) |
|---|---|
| 所在地 | 島根県安来市宇賀荘町(寺務所:安来市清井町281) |
| 指定区分 | 重要文化財(近世以前/寺院)/指定番号 00317 |
| 指定年 | 明治37年(1904年)2月18日/古社寺保存法による特別保護建造物としての指定に始まる |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 四脚門、切妻造、本瓦葺 |
| 所有者 | 雲樹寺 |
| 公開状況 | 参道上にあり常時見学可・外観撮影自由。案内付き拝観は8時30分〜17時、大人500円/中学生以下300円。年末年始・お盆は拝観休止。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/雲樹寺四脚門(大門)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2964
- 文化遺産オンライン/雲樹寺四脚門(大門)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/148161
- 瑞塔山 雲樹寺 公式サイト
- https://unjuji.com/
- 安来市観光協会/雲樹寺
- https://yasugi-kankou.com/spot/unjuji-temple/
- しまね観光ナビ(島根県公式観光情報サイト)/雲樹寺
- https://www.kankou-shimane.com/destination/21591
- 出雲国神仏霊場/第十二番 雲樹寺
- https://shinbutsu.jp/shrines-temples/unjuji/
最終更新日: 2026.08.21