眠雲閣落合樓とは

眠雲閣落合樓(みんうんかくおちあいろう)は、静岡県伊豆市湯ヶ島にある温泉旅館の建築群で、昭和8年から昭和12年(1933年から1937年)を中心に建てられた7棟が国の登録有形文化財に登録されている。本谷川と猫越川が合流して狩野川となる地点の左岸に敷地が広がり、玄関棟、本館、眠雲亭、紫檀宴会場、配膳室階段棟、住居棟及び廊下、応接棟の7棟が渓流に沿って連なる。

このうち5棟は平成11年(1999年)11月18日に、残る2棟は平成17年(2005年)2月9日に登録された。登録基準はいずれも「造形の規範となっているもの」である。眠雲閣落合樓の建物は展示施設ではない。旅館として現役で使われており、客室や宴会場や階段室として日々人が通っている。

金山経営者の拠点から文人の宿へ

創業は明治7年(1874年)。宿の説明によれば、伊豆の金山事業を営んでいた足立三敏が、本谷川と猫越川の落ち合う地に拠点を構え、関係者や客人を泊める施設として始めたのが起こりだという。屋号は当初「眠雲樓」であった。

明治14年(1881年)、逗留していた旧幕臣の山岡鉄舟が「落合樓」と命名し、これが現在の名称になった。文化庁の国指定文化財等データベースも、この改称を名称の由来として記載している。以後、田山花袋、島崎藤村、川端康成、北原白秋といった書き手が滞在した宿として知られてきた。

今日の眠雲閣落合樓を形づくっているのは、昭和8年(1933年)に始まる大改築である。最初に玄関棟が建ち、本館、眠雲亭、紫檀宴会場、配膳室階段棟が続いた。近在の大滝に住む棟梁、青木清平が一連の工事を手がけている。昭和10年(1935年)頃には旅館主の住居棟と、その南の応接棟が加わった。

屋号はその後「落合楼村上」を経て、令和元年(2019年)9月26日に「おちあいろう」となり、改修のうえ営業を再開した。所有者は株式会社おちあいろうである。

敷地の歩き方

眠雲閣落合樓の敷地は、道路に面した玄関棟から川に向かって下がっていく。玄関棟から東へ廊下が伸び、旅館主の居宅だった住居棟につながる。住居棟の南には、一室だけの小さな洋館である応接棟が立つ。

本館は敷地の南東部、渓流にもっとも近い位置を占める。そこから南へ向かうと紫檀宴会場が持越街道に沿って建ち、配膳室階段棟をはさんで、敷地南端の最奥に眠雲亭が控える。眠雲亭と紫檀宴会場は配膳室階段棟で結ばれ、玄関棟と住居棟は廊下で結ばれている。棟から棟へ屋内を歩いて移れる箇所が多いのは、旅館という用途がそのまま平面計画になった結果である。

登録されている7棟

各棟の年代・構造・規模は文化庁の国指定文化財等データベースによる。建築面積は同データベースの数値である。

  • 玄関棟 昭和8年(1933年)/木造平屋建、桟瓦葺、建築面積80平方メートル/平成11年(1999年)登録
  • 本館 昭和8年から昭和10年(1933年から1935年)/木造2階建、銅板葺、建築面積356平方メートル/平成11年(1999年)登録
  • 眠雲亭 昭和8年から昭和12年(1933年から1937年)/木造2階建、瓦葺、建築面積215平方メートル/平成11年(1999年)登録
  • 紫檀宴会場 昭和8年から昭和12年(1933年から1937年)/木造2階建、瓦葺、建築面積378平方メートル/平成11年(1999年)登録
  • 配膳室階段棟 昭和8年から昭和12年(1933年から1937年)/木造2階建、瓦葺、建築面積73平方メートル/平成11年(1999年)登録
  • 住居棟及び廊下 昭和10年(1935年)頃/木造地上2階地下1階建、瓦葺、建築面積128平方メートル、廊下は木造平屋建、鉄板葺、建築面積20平方メートル/平成17年(2005年)登録
  • 応接棟 昭和10年(1935年)頃/木造2階建、瓦葺、建築面積18平方メートル/平成17年(2005年)登録

いずれも国の登録有形文化財であり、登録番号は玄関棟の22-0057から応接棟の22-0098まで続く。7棟が同じ敷地に残り、しかも用途ごとに書き分けられている点が、眠雲閣落合樓という群の値打ちである。

名称の表記と読み

眠雲閣落合樓の読みは「みんうんかくおちあいろう」。「樓」は「楼」の旧字体で、文化庁の登録名称には旧字体が使われている。旅館の営業名は現在「おちあいろう」であり、以前は「落合楼村上」を名乗っていた。宿の名で調べると、この3通りの表記に行き当たる。

平成17年(2005年)に登録された2棟について、伊豆市の文化財一覧は「住居棟」と「廊下、応接棟」に分けて掲げている。文化庁の国指定文化財等データベースでは「住居棟及び廊下」と「応接棟」の2件である。数え方は同じだが区切り方が異なるため、本サイトでは文化庁の名称に従っている。

見学とアクセス

眠雲閣落合樓の7棟は営業中の旅館の建物であり、一般公開はされていない。建物を間近に見られるのは宿泊者に限られ、日帰り入浴の受け入れもない。宿泊者に対しては、館内の登録文化財を巡る案内が宿のスタッフによって行われている。

最寄り駅は伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅で、東海道新幹線の三島駅から約35分。修善寺駅北口からは宿の無料送迎車が出ており、午後2時15分、午後3時15分、午後4時15分、午後5時15分の4便がある。3日前までに到着時刻を伝えて予約する必要がある。

路線バスなら修善寺駅南口の5番のりばから東海バスに乗る。「新宿(あらじゅく)」下車で約35分、そこから徒歩約1分。「湯ヶ島温泉口」下車なら約30分だが、徒歩約15分を要する。車では新東名高速道路の長泉沼津インターチェンジ、または東名高速道路の沼津インターチェンジから約45分で、駐車場がある。

送迎の時刻や運行の条件は変わることがある。出かける前におちあいろうの公式サイトで確かめておきたい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓玄関棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001412
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001413
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓眠雲亭
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001414
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓紫檀宴会場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001415
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓配膳室階段棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001416
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓住居棟及び廊下
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004551
文化庁 国指定文化財等データベース 眠雲閣落合樓応接棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004552
伊豆市 国指定・登録文化財
https://www.city.izu.shizuoka.jp/soshiki/1013/8/3/1090.html
伊豆市 伊豆市の文化財一覧
https://www.city.izu.shizuoka.jp/soshiki/1013/8/3/1020.html
おちあいろう おちあいろうについて
https://www.ochiairo.co.jp/about/
おちあいろう アクセス
https://www.ochiairo.co.jp/access/
おちあいろう 愉しむ
https://www.ochiairo.co.jp/facility/entertainment/

最終更新日: 2026.09.13

基本情報

名称眠雲閣落合樓
所在地静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
所有者株式会社おちあいろう
指定登録有形文化財 7件
座標34.88952, 138.92759