敷地でもっとも古い建物

天海家住宅土蔵(あまがいけじゅうたくどぞう)は、栃木県栃木市嘉右衛門町にある明治28年(1895年)建築の土蔵造2階建で、平成16年(2004年)2月17日に登録有形文化財となった。主屋の西方、敷地の奥に東西棟で建つ。

同じ敷地に登録された他の2棟より29年古い。街道に面する店舗も、その背後の主屋も大正13年(1924年)の建築である。つまり天海家が敷地の前面を建て替えたとき、この土蔵は動かされなかった。商家にとって土蔵は最も費用のかかる建物であり、同時に最も建て替えられにくい建物でもあった。厚い土壁の内側に、火から守るべきものを収めていたからである。

寸法の対応が明快である。桁行5間・梁間2間半、およそ9.1メートル×4.5メートル。建築面積41平方メートルは、この軸部の寸法とほぼそのまま一致する。屋根は切妻造、桟瓦葺。南面には土間庇を差し掛け、2階には2箇所の窓を開ける。

ひとつの屋根の下の二つの蔵

内部は2室に分けられる。この分割こそが、この建物を丁寧に見る理由になる。

東側は文庫蔵とし、妻入とする。西側は荷蔵とし、平入とする。一棟のなかに、妻側からの出入りと平側からの出入りという二つの動線が並存する。それぞれの室が何を収めるための場所であったかに応じて、開口の向きが選ばれている。

理屈は実際的である。文書や帳簿を納める文庫蔵は開ける機会が少なく、封じの確実さが優先される。だから建物の端に一箇所の出入口を設ければ足りる。対して商品や家財を納める荷蔵は出し入れが頻繁で、平側に開口を取り、土間庇の下へ直接荷を運び出せるほうが都合がよい。登録基準は「造形の規範となっているもの」。この計画の合理性が、その根拠の少なからぬ部分を占める。

もうひとつ、名前が残っている。墨書から棟梁が早川辰造であることが判明している。この規模の土蔵で施工者の名が特定できる例は多くない。明治期の土蔵の大半は、地域の類型としてしか作り手を語れないまま伝わってきた。棟梁名を読み取れる墨書があることで、この建物は記録を伴う一棟になった。

登録番号は09-0094、第40回登録である。

見えるものと見えないもの

天海家の3棟のうち、最も見にくいのがこの土蔵である。奥行の深い敷地の最奥、店舗と主屋の背後に位置し、個人所有で公開もない。拝観受付や開館時間の設定もない。この建物の要点である内部の2室構成は、来訪者が立てる範囲からは確認できない。

訪問を計画する前に、この点は先に伝えておきたい。嘉右衛門町へは、この一棟のためではなく、街道の町並みを見るために行くのがよい。土蔵は、前面を実際に確かめられる商家敷地の一要素として読むことになる。

アクセスは、JR両毛線・東武日光線の栃木駅から北へ約1.6キロ、徒歩約20分。東武日光線の新栃木駅からは南西へ約1キロ。市街地にはレンタサイクルもある。公道からの撮影に制限はないが、生活の場であることには配慮したい。

内部に入れる蔵を見たいのであれば、地区内に選択肢がある。嘉右衛門町は平成24年(2012年)7月に重要伝統的建造物群保存地区に選定された。栃木県で最初の選定で、面積約9.6ヘクタール、伝統的建造物は92棟。江戸末期から昭和前期にかけて建てられた見世蔵や石蔵が街道沿いに並ぶ。天海家の敷地から北へ200メートルほどの伝建地区拠点施設ガイダンスセンターは味噌工場の跡を利用した施設で、蔵の構法に関する展示があり、公開されている建物の案内も受けられる。開館日は時期により変わる。

Q&A

Q天海家住宅土蔵はどこにありますか。アクセス方法は。
A栃木県栃木市嘉右衛門町、旧日光例幣使街道に面する敷地の奥、主屋の西方に建ちます。JR両毛線・東武日光線の栃木駅から北へ約1.6キロ、徒歩約20分。東武日光線の新栃木駅からは南西へ約1キロです。
Q天海家住宅土蔵の内部は見学できますか。
Aできません。個人所有で一般公開されておらず、拝観料や開館時間の設定もありません。奥行の深い敷地の最奥、店舗と主屋の背後に建つため、公道からもほとんど見えません。
Q天海家住宅土蔵の内部はどのような構成ですか。
A2室に分けられ、東側が妻入の文庫蔵、西側が平入の荷蔵です。文書類を収める室と商品や家財を収める室とで、出入口の向きが変えられています。
Q天海家住宅土蔵は誰が建てましたか。
A墨書から、棟梁が早川辰造であることが判明しています。この規模の土蔵で施工した棟梁の名が特定できる例は多くありません。
Q天海家住宅土蔵は同じ敷地の他の建物と比べてどれくらい古いですか。
A明治28年(1895年)の建築で、いずれも大正13年(1924年)建築の店舗・主屋より29年古い建物です。敷地前面の建て替えを経ても残されました。

基本情報

名称天海家住宅土蔵(あまがいけじゅうたくどぞう)
所在地栃木県栃木市嘉右衛門町5他
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号09-0094
指定年平成16年(2004年)2月17日登録/同年3月4日告示(第40回登録)
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、建築面積41平方メートル。桁行5間、梁間2間半、切妻造、桟瓦葺、南面に土間庇
所有者個人
公開状況非公開(公道からもほとんど見えない)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 天海家住宅土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003791
とちぎの文化財 天海家住宅土蔵
https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/cultural/【天海家住宅土蔵】/
栃木市 栃木市嘉右衛門町伝統的建造物群保存地区
https://www.city.tochigi.lg.jp/soshiki/5/1568.html
栃木市観光資源データベース「蔵ナビ!」 嘉右衛門町(伝統的建造物群保存地区)
https://www.tochigi-city-kura-navi.jp/spot/page.php?id=31

最終更新日: 2026.08.04