建築面積17平方メートルの登録有形文化財
金谷侍屋敷土蔵(旧金谷カッテージイン土蔵)は、栃木県日光市本町に所在する江戸末期の土蔵造二階建で、平成26年(2014年)4月25日に国の登録有形文化財(建造物)となった。
主屋の東側に建つ。規模は小さい。文化庁の国指定文化財等データベースは桁行4.7メートル、梁間3.7メートル、建築面積17平方メートル、員数1棟と記す。各階一室、それだけの建物である。
年代は西暦1830年から1868年、江戸末期にあたる。同じデータベースが江戸後期(1751〜1830年)とする主屋より新しく、金谷家が明治6年(1873年)に「金谷カテッジイン」を開業する以前から、この土蔵は敷地内に建っていたことになる。
土蔵は厚い土壁を漆喰で仕上げた防火の収蔵建築である。東照宮の楽人を勤めた金谷家にとって、楽器・文書・年中の調度を火から守る器がこの一棟だった。
置屋根・鉢巻・腰石という解答
細部はいずれも装飾ではなく処方である。
屋根は置屋根形式をとる。土蔵の躯体に小屋組を組み込まず、土壁の上に別構造の屋根を載せる工法で、土壁が屋根荷重を負わない。屋根の葺替えや修理を土壁に触れずに行える点、また土壁の乾燥収縮と屋根の動きが干渉しない点に利がある。現状の葺材は鉄板で、当初材からの替えとみられる。
外壁は漆喰塗とし、水平に鉢巻を廻す。壁面を伝う雨水を下方へ切って落とすための突出帯で、蔵の外観に横線を与える要素でもある。腰には長方形の石を張り、目地を漆喰で押さえる。跳ね返りの雨、積雪、凍結にもっとも傷みやすいのが土壁の脚部であり、日光の冬を考えればこの石張りは装飾以前の必需にあたる。
柱および内壁の仕上げにはクリ材を用いる。耐朽性・耐蟻性に優れ、この地方の建築で構造材・水回り材として選ばれてきた樹種である。
登録は第77回、登録番号09-0213。主屋の09-0212に続く番号で、同日に別個の物件として登録された。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁の解説文は、観光地の一郭にあって当地の歴史的景観を形づくる、という趣旨を記す。単体の建築的完成度より、街区の中での役割に評価の重心が置かれている。
公開の状況と見方
敷地は平成27年(2015年)3月から「金谷ホテル歴史館」として一般公開されている。入館料は大人550円、小学生275円で、主屋と庭を含む。開館時間は3月から11月が9時30分から16時30分(最終入館16時)、12月から2月が10時から16時(最終入館15時30分)。冬季のみ月2、3回の休館日がある。入館券は隣接するカテッジイン・レストランで扱う。
土蔵内部の公開について、公式に確認できる記載はない。庭から外観を見る前提で訪ねるのが妥当である。もっとも、この建物の情報量は外側に出ている。鉢巻の水平線、腰石の目地割り、壁から浮いた屋根の納まり。見るべきものは壁面にある。
JR日光駅・東武日光駅から中禅寺温泉行または湯元温泉行のバスで約15分、「金谷ホテル歴史館」下車すぐ。自動車では日光宇都宮道路日光ICから神橋方面へ、国道120号を田母沢御用邸前の信号手前まで進むと右側にある。駐車場はレストラン前8台と国道向かい8台の計16台。
庭のぼたんは5月上旬から中旬に咲く。白い蔵壁は花期の背景としても効く。館内および敷地の撮影可否について公式サイトに記載はないため、現地の掲示に従いたい。
東へ徒歩圏に世界遺産「日光の社寺」の建造物群がある。彫刻と漆・金箔で覆われた東照宮の門を見たあとで、漆喰と石だけで組み立てられたこの小さな箱を見ると、同じ時代の日本建築が抱えていた二つの方向がはっきりする。
Q&A
- 金谷侍屋敷土蔵は見学できますか。内部に入れますか。
- 「金谷ホテル歴史館」の敷地内にあり、入館料大人550円・小学生275円で庭から外観を見ることができます。土蔵内部の公開については公式に確認できる記載がないため、外観見学を前提にお訪ねください。
- 金谷侍屋敷土蔵の規模はどのくらいですか。
- 桁行4.7メートル、梁間3.7メートル、建築面積17平方メートルの土蔵造2階建、員数1棟です。登録有形文化財の建造物としてはかなり小規模な部類に入ります。
- 金谷侍屋敷土蔵の「置屋根形式」とは何ですか。
- 土蔵の躯体に小屋組を組み込まず、土壁の上に別構造の屋根を載せる工法です。土壁が屋根荷重を負わないため、葺替えや屋根の修理を土壁に触れずに行えます。土蔵建築で広く用いられました。
- 金谷侍屋敷土蔵はいつ建てられ、いつ登録されたのですか。
- 国指定文化財等データベースは江戸末期、西暦1830年から1868年の間としています。登録は平成26年(2014年)4月25日、登録番号09-0213で、主屋と同じ第77回登録です。
- 金谷侍屋敷土蔵へのアクセスを教えてください。
- JR日光駅・東武日光駅から中禅寺温泉行または湯元温泉行のバスで約15分、「金谷ホテル歴史館」下車すぐです。駐車場はレストラン前8台と国道向かい8台の計16台があります。
基本情報
| 名称 | 金谷侍屋敷土蔵(旧金谷カッテージイン土蔵) |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県日光市本町2249他(登録原簿)/運営者表記は日光市本町1-25 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号09-0213、第77回登録 |
| 指定年 | 平成26年(2014年)4月25日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、鉄板葺、桁行4.7メートル・梁間3.7メートル、建築面積17平方メートル |
| 所有者 | 個人所有(栃木県文化財記録による)/金谷ホテル歴史館の敷地内 |
| 公開状況 | 敷地は公開(有料)。土蔵内部の公開は未確認 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)金谷侍屋敷土蔵(旧金谷カッテージイン土蔵)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009896
- 文化遺産オンライン 金谷侍屋敷土蔵(旧金谷カッテージイン土蔵)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/274963
- とちぎの文化財 金谷侍屋敷土蔵(旧金谷カッテージイン土蔵)
- https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/cultural/
- 国指定文化財等データベース(文化庁)金谷侍屋敷主屋(同一敷地の登録物件)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009895
- 日光金谷ホテル歴史館 公式サイト(金谷ホテル歴史館・侍屋敷)
- https://nikko-kanaya-history.jp/house/
- 日光旅ナビ(日光市観光協会)金谷ホテル歴史館
- https://www.nikko-kankou.org/spot/975
- 金谷ホテル公式サイト 金谷ホテルのご案内
- https://www.kanayahotel.co.jp/appeal/
最終更新日: 2026.08.23