1基の石碑 ― 1952年に国宝
那須国造碑は、栃木県大田原市湯津上にある石碑で、1952年(昭和27年)11月22日に国宝に指定された。所有は笠石神社である。
文化庁データベースの重要文化財指定年月日の欄は空で、重要文化財を経ずに国宝へ指定されている。これまで扱った中で27件目にあたる。
栃木県は区分を有形文化財の古文書とする。石に刻まれたものが、文書として分類されている。
日本の碑に、中国の元号が刻まれている
碑文の年号が、日本のものではない。
栃木県は、永昌元年(689年)四月に、那須直韋提が評督という官職を授かった、という趣旨が刻まれていると記す。
続けて、永昌は中国の唐の時代に周を建国した武則天の元号である、とする。
日本の地に建てられた碑に、中国の元号が使われている。
六祖恵能伝では、ト書の欄に貞元十九年という唐の元号があった。ただしあちらは国の欄が中国で、中国で作られたものである。
本件は日本で建てられた碑である。書風についても、碑の文字が古代中国で発達した六朝の書風である、とされる。渡来人と非常に密接な関係のある資料として注目される、と結ばれる。
19字8行で、ちょうど152字になる
碑文の量が、数で示される。
碑文は19字8行、全152字からなる、とある。
19と8を掛けると152である。行と字数と総数が過不足なく合う。
北海道白滝遺跡群出土品では、約669万点、総重量約12トンと概数で規模が示されていた。金銅密教法具では、三つの杵が0.9センチメートルの差に並んでいた。
本件は、刻まれた字が一字も余らずに数え上げられている。
高さの測り方にも断りが付く。江戸時代に設置された台石より上の部分の高さは約148センチメートルである、とされる。後から据えられた台石を除いて測っている。
近寄ると怪我をする石とされていた
顕彰される前は、恐れられる石だった。
栃木県は、延宝四年(1676年)に奥州岩城の牢人で僧になった円順が、湯津上村を通りかかった時のことを記す。
里の人が近寄ると怪我をしたり、馬をつなぐと足をくじいたり、血を吐いたりするといわれる不思議な石であるという話を聞きつけた、とある。
円順がこれを小口村の庄屋大金重貞に伝え、重貞が碑文を写し取ったことから、徳川光圀と地元の人びとの尽力による顕彰が始まる。
線刻千手観音等鏡像では、工事中に掘り出された鏡がすぐに祀られ、そのために神社が生まれた。
本件は逆である。長く忌避されていたものが、通りかかった僧の耳に入り、そこから価値が確かめられていった。
鑑賞
所在は栃木県大田原市湯津上で、所有は笠石神社である。
名の由来も記される。文字の刻まれた石の上に笠のように石を載せていることから笠石とも呼ばれている、とある。
沃懸地獅子文毛抜形太刀では、柄の中央の目貫の形から毛抜形と呼ばれると説明されていた。本件は、上に載る石の形から笠石と呼ばれる。
材は花崗岩である。碑文には、庚子の年(700年)の正月二日に那須直韋提が亡くなり、那須国造家の意斯麻呂らが碑を立てた、という趣旨が含まれる。
神社に祀られている石碑であり、拝観については神社の定めによる。訪問前に確認したい。
Q&A
- 那須国造碑はいつ国宝に指定されましたか。
- 1952年(昭和27年)11月22日です。重要文化財指定年月日の欄は空欄で、重要文化財を経ていません。所在は栃木県大田原市湯津上、所有は笠石神社です。
- 碑文の年号は日本のものですか。
- 違います。栃木県は「永昌は中国の唐の時代に周を建国した武則天の元号」と記します。日本に建てられた碑に中国の元号が使われています。
- 碑文は何字ありますか。
- 19字8行、全152字です。19と8を掛けると152になり、行と字数と総数が過不足なく合います。
- 高さはどのくらいですか。
- 江戸時代に設置された台石より上の部分で約148センチメートルです。後から据えられた台石を除いて測られています。
- どのように知られるようになったのですか。
- 栃木県は、近寄ると怪我をするなどといわれる不思議な石だという話を1676年に僧の円順が聞きつけ、庄屋の大金重貞に伝えたことから顕彰が始まったと記します。
基本情報
| 名称 | 那須国造碑(なすのくにのみやつこのひ)/上に載る石の形から笠石とも呼ばれる |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県大田原市湯津上 |
| 指定区分 | 国宝/栃木県は有形文化財の古文書に区分する/重要文化財を経ずに国宝へ指定 |
| 指定年 | 1952年(昭和27年)11月22日 国宝 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 花崗岩製で、江戸時代に設置された台石より上の部分の高さは約148センチメートル。碑文は19字8行、全152字。永昌元年(689年)と庚子の年(700年)の記事を含む |
| 所有者 | 笠石神社 |
| 公開状況 | 神社に祀られている石碑で、拝観は神社の定めによる |
参考文献
- とちぎの文化財 那須国造碑
- https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/
- 大田原市 文化財
- https://www.city.ohtawara.tochigi.jp/docs/2013082778383/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/
最終更新日: 2026.09.06