墓を抱く縄文の集落 根古谷台遺跡
1980年代の初め、宇都宮市が姿川右岸の段丘に市営墓地を造ろうと地面を掘り進めたところ、計画していたものよりはるかに古い建物の跡が現れた。1982年から1988年にかけての発掘で、中央の広場を取り囲むように木造の建物が環状に並び、その広場に339基の墓壙が穿たれていたことが明らかになる。およそ5,500年前、縄文時代前期の集落である。発見の重みを受けて市は墓地の計画を縮小し、遺構を現状のまま残した。1988年(昭和63年)5月17日、この場所は史跡「根古谷台遺跡」として国の指定を受けている。
遺跡があるのは上欠町、姿川右岸の段丘の上である。広がりは東西約300メートル、南北約150メートルにおよび、東日本の縄文集落のなかでも大型の部類に入る。
墓壙を囲む建物の環
根古谷台の特徴は、その配置にある。中央付近に339基の墓壙が、5基から10基ほどのまとまりをつくって並ぶ。一基の直径はおよそ1メートル、深さは50から60センチほど。これを囲んで、竪穴住居27軒、掘立柱建物18棟、方形建物11棟、長方形大型建物16棟が環状に配されていた。
とりわけ注目されてきたのが長方形大型建物である。長さは14メートルから24メートルにわたり、構造に規格性が見て取れる点は、この時期の建物としては例の少ないものだ。最大の第1号建物は長さ23メートル、幅9.8メートル。復元された縄文建物としては、青森県の三内丸山遺跡にある全長32メートルの大型建物に次ぐ規模になる。
掘立柱建物のなかに、ほかと様子の違う一棟がある。特に太い8本の柱が楕円形に並ぶもので、ふつうの住まいとは考えにくい。集落の中心近くに置かれていることから、祭りや儀礼の場、いわゆるウッドサークルではないかと見られている。
なぜ史跡に指定されたのか
根古谷台が一般の縄文集落と異なる点は二つある。一つは、日常の道具や食料の残りかすよりも、祭祀にかかわる遺物が多く出土したこと。もう一つは墓そのものだ。副葬品を伴う墓は縄文時代には珍しく、当時の人々が死者をどう扱ったかを探るうえで、この遺跡から出た品は大きな手がかりになる。
339基のうち7基の墓壙から、石製の装身具と石器の一群が見つかった。玦状耳飾4個、丸玉2個、小玉5個、管玉13個、石匙5個、石鏃3本である。出土の状態がよく語っていた。玦状耳飾は2個ずつ対になり、玉類はいくつかが組み合って並ぶ。装身具を身に着けたまま葬られた遺体の姿をうかがわせる並び方だ。耳飾や玉は厳選された石材を高い技術で加工したもので、なかには石製装身具の製作技法をよく示す一品もある。これらは1990年(平成2年)に重要文化財に指定された。
日常的なごみの乏しさ、祭祀遺物の多さ、墓を囲む大型建物の環。これらを合わせて考えると、根古谷台は単なる住まいの場ではなかったらしい。血縁や地縁で結ばれた集団が葬送や儀礼を営んだ場、おそらく周囲のいくつものムラが集う拠点だったと推定されている。
いま訪ねて見られるもの
遺跡は現在、「うつのみや遺跡の広場」として公開されている。開園は1991年(平成3年)。長方形大型建物の一つをはじめ、いくつかの建物が当時の位置に復元され、発掘した人々を驚かせた規模を、すぐそばに立って確かめられる。環が中央の広場を囲む様子も、復元からよく読み取れる。
園内の資料館では、発掘で得られた出土品を展示し、柱穴や土坑の痕跡から集落をどう読み解いたかを解説している。地面のしみの集まりから復元された村へとたどる過程に関心があるなら、散策の前後に立ち寄りたい。
季節をねらうなら晩春がよい。園の西側斜面にはおよそ1万株のニッコウキスゲが育ち、5月中旬から下旬にかけて花の盛りを迎える。見ごろに合わせて市はキスゲ祭りを催し、復元建物を背にした黄色い斜面が、多くの来訪者の記憶に残る景色になる。
アクセスと周辺
広場は宇都宮市の西端に位置する。車なら東北自動車道の宇都宮インターから約15分、鹿沼インターからは約5分。バスの場合はJR宇都宮駅から関東バスの楡木車庫行きまたは運転免許センター行きに乗り、約20分の「聖山公園入口」で降りて徒歩10分ほど。駐車場は無料だが10台ほどと限られる。入園も無料である。
同じ台地には将軍塚古墳がある。7世紀前半に築かれた墳丘で、名がつくほどの規模をもつが、誰の墓かは分かっていない。縄文前期の祭祀の場から古墳時代の墓まで、一度の訪問で数千年をまたぐことができる。
Q&A
- 遺跡はどのくらい古いのですか。
- およそ5,500年前、縄文時代前期のものです。発掘調査は1982年から1988年にかけて行われました。
- 墓に使われたのに、なぜ「集落」と呼ぶのですか。
- 住居や集落らしい配置をもつ一方で、祭祀遺物の多さと墓を囲む大型建物の環から、日常の暮らしの場であると同時に、葬送や儀礼の場だったと考えられています。周囲のいくつかのムラが共に使った可能性も指摘されています。
- 復元建物の中に入れますか。
- いくつかの建物が当時の位置に復元され、間近で見学できます。資料館では出土品と解説展示を見られます。公開状況は事前にご確認ください。
- 訪れるのによい時期はいつですか。
- 5月中旬から下旬です。西側斜面に約1万株のニッコウキスゲが咲き、市のキスゲ祭りも開かれます。
- 料金はかかりますか。
- 入園は無料です。月曜(祝休日のときは翌日)と年末年始は休園で、冬期は開園時間が短くなります。
基本情報
| 名称 | 根古谷台遺跡(別名 聖山公園遺跡) |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県宇都宮市上欠町151-1 |
| 指定区分 | 国指定史跡(1988年〈昭和63年〉5月17日指定) |
| 関連指定 | 根古谷台遺跡土壙出土品 重要文化財(1990年〈平成2年〉指定) |
| 時代 | 縄文時代前期(約5,500年前) |
| 規模 | 東西約300メートル×南北約150メートル、墓壙339基 |
| 施設 | うつのみや遺跡の広場(資料館・復元建物) |
| 料金 | 無料 |
| 開園時間 | 4月1日〜10月31日 9:00〜17:00(入園は16:30まで)/11月1日〜3月31日 9:00〜16:30(入園は16:00まで) |
| 休園日 | 月曜(祝休日のときは翌日)、祝休日の翌日、12月29日〜1月3日 |
| アクセス | JR宇都宮駅から関東バス約20分「聖山公園入口」下車、徒歩約10分/東北自動車道宇都宮ICから車で約15分 |
参考文献
- 文化遺産オンライン「根古谷台遺跡」(文化庁)
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/162271
- 国指定文化財等データベース「根古谷台遺跡」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/495
- とちぎの文化財「根古谷台遺跡土壙出土品」(栃木県)
- https://bunkazai.pref.tochigi.lg.jp/cultural/根古谷台遺跡土壙出土品/
- 宇都宮観光ナビ「うつのみや遺跡の広場」
- https://www.utsunomiya-cvb.org/spot/detail_10080.html
- 宇都宮の歴史と文化財「根古谷台遺跡」
- https://utsunomiya-8story.jp/search_post/根古谷台遺跡/
最終更新日: 2026.05.28