昭和九年竣工の木造庁舎

旧三野町役場庁舎は、徳島県三好市三野町芝生にある木造2階建の庁舎建築で、昭和9年(1934年)に竣工し、平成22年(2010年)に国の登録有形文化財となった。

旧三野町を東西に貫く旧県道に南面して建つ。正面幅は15メートル、屋根はスレート葺、建築面積は155平方メートルを測る。昭和52年(1977年)に改修が加えられ、その後も増改築が重ねられてきた。

三野町は平成18年(2006年)3月1日、池田町・山城町・井川町・東祖谷山村・西祖谷山村と合併して三好市となる。庁舎としての役割は新しい事務棟に移ったが、敷地は現在も三好市役所三野支所として使われ、昭和9年の建物はその傍らに残された。

平成27年(2015年)、三好市は保存活用計画を策定している。安全性と利便性を高めつつ建物を維持する方針を示したもので、公表資料には正面玄関、二階西側、二階旧議場、外壁上部の装飾、アーチ型の入口、そして昭和9年施工当時の写真が並ぶ。

登録の経緯と評価

登録年月日は平成22年1月15日、登録告示は同年2月3日。登録番号36-0080、第66回登録にあたる。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」が適用された。

この登録には二重の意味がある。ひとつは、三好市内で国の登録有形文化財となった最初の物件であったこと。もうひとつは、三好市の説明によれば、徳島県内で木造の役場庁舎として残るのが三野庁舎だけだという点である。日常的に目にされてきた建物が、県内唯一の遺構として位置づけ直されたことになる。

洋風意匠を木造で組み立てた庁舎建築は、戦前の地方に広く分布していた。組積造の語彙、すなわちアーチ、蛇腹、付柱といった要素を、木と漆喰に置き換えて構成する手法である。戦後の建て替えでその多くが鉄筋コンクリート造に姿を変えた。

三野の庁舎が生き延びた背景には、合併後も支所機能が同一敷地に置かれ続けたという事情がある。用途を失った建物が真っ先に取り壊される地方庁舎の一般的な経過とは、異なる道をたどった。

正面に集約された意匠

この建物の見どころは、南面する正面外観にほぼ集約されている。左右対称の構成をとり、中央および両翼の正面側に張出部をつける。2階には半円アーチ窓を開き、壁面の連続を断ち切る。

中央張出部の屋根は腰折屋根とし、途中で勾配を変える。文化庁の解説は、独特の意匠をもつ付柱とあわせて、これらを異彩を放つ要素として挙げている。車で通り過ぎるだけでは見落とす細部であり、正面に立って見上げたい。

内部で注目されるのは二階の旧議場である。三好市が公開した写真からは、板張りの壁面と、昭和初期の町議会にふさわしい小ぶりな規模がうかがえる。

見学については、現役の行政施設の敷地内であることを前提に考えたい。外観は前面道路から随時見ることができ、外からの撮影に制限はない。内部は常時公開されていないため、旧議場を見たい場合は三野支所または三好市教育委員会へ事前に問い合わせるのが確実である。最寄り駅はJR徳島線江口駅で、徒歩約14分。外観見学に料金はかからない。

なお、昭和52年の改修と度重なる増改築を経ているため、目にする部材のすべてが昭和9年当初のものではない。登録の解説が焦点を当てているのは、あくまで南面の左右対称な正面意匠である。

Q&A

Q旧三野町役場庁舎は内部を見学できますか。
A常時公開はされていません。三好市役所三野支所の敷地内にあり、観光施設として運営されているわけではないためです。外観は前面道路から随時見学できます。二階の旧議場をご覧になりたい場合は、三野支所または三好市教育委員会へ事前にお問い合わせください。
Q旧三野町役場庁舎はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A昭和9年(1934年)の竣工です。登録年月日は平成22年(2010年)1月15日、登録告示は同年2月3日で、登録番号は36-0080、第66回登録にあたります。
Q旧三野町役場庁舎への公共交通機関でのアクセスを教えてください。
AJR徳島線江口駅から徒歩約14分です。所在地は徳島県三好市三野町芝生1039で、旧三野町を東西に貫く旧県道に面しています。
Q旧三野町役場庁舎の建築上の特徴は何ですか。
A洋風意匠を木造で実現した庁舎建築である点です。左右対称の正面、中央と両翼の張出部、2階の半円アーチ窓、中央張出部の腰折屋根、そして独特の意匠をもつ付柱が特徴として挙げられます。三好市によれば、木造の役場庁舎として県内に残るのはこの建物のみとされています。
Q旧三野町役場庁舎は写真撮影できますか。
A前面道路からの外観撮影に制限はありません。南面する正面は午前中の光でよく映えます。ただし現役の行政窓口が置かれた敷地であるため、来庁者や職員が写り込まないよう配慮し、外観以外の撮影については事前に許可を得てください。

基本情報

名称旧三野町役場庁舎(きゅうみのまちやくばちょうしゃ)
所在地徳島県三好市三野町芝生1039
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号36-0080
指定年平成22年(2010年)1月15日登録 同年2月3日告示
員数1棟
寸法木造2階建、スレート葺、建築面積155平方メートル、正面幅約15メートル
所有者国指定文化財等データベースに記載なし。敷地は三好市役所三野支所として使用
公開状況外観は前面道路から随時見学可、無料。内部は常時公開なし、事前問い合わせが必要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧三野町役場庁舎」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008067
文化遺産オンライン「旧三野町役場庁舎」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/163678
三好市教育委員会「国登録有形文化財(建造物)旧三野町役場庁舎保存活用計画」
https://www.miyoshi.i-tokushima.jp/education/docs/2015042000077.html
三好市「三野支所」
https://www.miyoshi.i-tokushima.jp/shisei/soshiki/soumu/mino/
文化庁「登録有形文化財(建造物)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html

最終更新日: 2026.08.23