鎌村家住宅とは

鎌村家住宅(かまむらけじゅうたく)は、徳島県美馬市美馬町字坊僧にある屋敷で、天保10年(1839年)建築の主屋を中心とする9件の建物と工作物が、平成19年(2007年)12月5日にそろって登録有形文化財に登録された。

登録されたのは、主屋・蔵・納屋・風呂・便所の建物5棟と、北井戸・東井戸の石組井戸2基、中庭土塀・西土塀の土塀2条である。登録番号は36-0061から36-0069までの連番で、登録の基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされた。

美馬市はこの屋敷を、江戸末期から明治時代にかけて建てられ、武家屋敷の特徴を残す屋敷と紹介している。母屋だけでなく、蔵や納屋、井戸や便所といった暮らしを支える付属の建物までが一つの敷地にまとまって残り、それぞれが個別に登録されている点に、この屋敷の性格がよく表れている。

屋敷の配置 ― 主屋を中心に東西へ広がる

敷地は山を背にしたおよそ1,200平方メートルの広さで、その中央に主屋が南を向いて建つ。美馬市の説明によれば、主屋の西に蔵と便所、東に納屋と風呂が配される。

文化庁のデータベースの解説を重ねると、配置はもう少し細かく読める。蔵は主屋の西に南北棟として建ち、その南に便所がある。便所のさらに西には、敷地の西端を区切る西土塀が蔵の南妻から南へ延びる。東側では、納屋が主屋の東に南北棟として建ち、その北隣に風呂が並ぶ。風呂の北方、主屋から見て東の位置に東井戸があり、北井戸は主屋の北に掘られている。

納屋の東は水田で、納屋は切石積の石垣の上に載っている。水田の側から見上げると、石垣と納屋の壁が一続きの構えをつくる。

かつては屋敷地全体を土塀が囲んでいたとみられ、いまは蔵の南側にその一部が残る。中庭土塀は延長16メートル、西土塀は延長14メートルの長さで登録された。

建てられた順序

年代のはっきりしている建物を並べると、屋敷がどのように整えられてきたかがおおよそ見えてくる。

  • 主屋:天保10年(1839年)
  • 中庭土塀・西土塀:江戸末期
  • 蔵:明治24年(1891年)
  • 納屋:明治30年(1897年)頃
  • 風呂・便所・北井戸・東井戸:明治中期

江戸後期に主屋と土塀で屋敷の骨格ができ、明治に入ってから蔵・納屋や水まわりの施設が建て替えや新築で加わった、という流れになる。西土塀の北端は、現在の蔵より前にあった建物に取り付いていたと推定されており、明治24年(1891年)の蔵がそれ以前の建物に代わって建てられたことがうかがえる。

建物5棟の屋根はいずれも本瓦葺である。井戸2基には、地元で青石と呼ばれる石の板材が用いられている。

坂本龍馬の来訪を伝える家伝

鎌村家には、幕末の文久2年(1862年)、坂本龍馬が当主の鎌村熊太を訪ねて身を寄せたという伝承がある。2019年に旅行メディアが紹介した内容によれば、龍馬が隠れたとされる部屋や、使ったと伝わる布団などが主屋に残るという。

ただし、この話は家に伝わるものとして紹介されており、文化庁のデータベースや美馬市の説明には触れられていない。同時代の記録による裏づけは、今回参照した資料の範囲では確かめられなかった。登録の理由も、この伝承ではなく、屋敷構えが残す景観的な価値に置かれている。

見学とアクセス

鎌村家住宅は個人が所有し、住まいとして使われている屋敷である。敷地に自由に立ち入ることはできない。2019年の紹介記事では、見学は所有者への事前申し込みによるとされ、申し込みはFAX・葉書・手紙で受け付けると案内されていた。受付方法や見学の可否はその後変わっている可能性があるため、訪問を考える場合は、この物件の問い合わせ先として美馬市観光サイトに掲載されている美馬市教育委員会地域学習推進課に、最新の状況を確かめておくと確実である。

所在地は美馬市美馬町字坊僧231で、吉野川の北岸にあたる。徳島自動車道の美馬インターチェンジから車で10分ほどと紹介されており、同じ記事では敷地内に駐車スペースがあるとされている。鉄道の最寄りは吉野川の対岸を走るJR徳島線の貞光駅方面になるが、屋敷まで歩いて行くには距離があり、車かタクシーを使うのが現実的である。

撮影の可否は公表された情報が見当たらない。住まいとして使われている建物なので、見学の申し込みの際にあわせて確認したい。

名称と表記

読みは「かまむらけじゅうたく」。文化庁のデータベースでは、各件が「鎌村家住宅主屋」「鎌村家住宅蔵」のように、屋敷名に建物名を続けた名称で登録されている。英語では Kamamura Family Residence と表記する。

参考文献

鎌村家住宅主屋(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006728
鎌村家住宅主屋(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/143991
鎌村家住宅蔵(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006729
鎌村家住宅蔵(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/172032
鎌村家住宅納屋(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006730
鎌村家住宅納屋(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/186633
鎌村家住宅風呂(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006731
鎌村家住宅風呂(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/119604
鎌村家住宅便所(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006732
鎌村家住宅便所(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/153335
鎌村家住宅北井戸(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006739
鎌村家住宅北井戸(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/172042
鎌村家住宅東井戸(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006738
鎌村家住宅東井戸(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144001
鎌村家住宅中庭土塀(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006733
鎌村家住宅中庭土塀(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/182946
鎌村家住宅西土塀(国指定文化財等データベース/文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006734
鎌村家住宅西土塀(文化遺産オンライン)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/119807
鎌村家住宅〔国登録有形文化財〕(美馬市観光サイト)
https://www.city.mima.lg.jp/kanko/map/list/4052.html
龍馬のおまるや布団が現存!徳島・鎌村家住宅と金毘羅参詣道(ORICON NEWS、2019年1月)
https://www.oricon.co.jp/article/662430/

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称鎌村家住宅
所在地徳島県美馬市美馬町字坊僧231
指定登録有形文化財 9件
座標34.06340, 134.07701