文化七年建立の三間堂
吉良堂は、徳島県美馬郡つるぎ町貞光字吉良にある木造平屋建の仏堂で、文化7年(1810年)の建立、平成29年(2017年)に国の登録有形文化財となった。釈迦堂とも呼ばれる。
端四国八十八箇所霊場の第三十番札所にあたる。端四国は貞光一帯に設けられた写し霊場で、全行程はおよそ80キロメートル。本四国を巡る費用と日数を負担できない人々のために整えられた巡礼路である。札所には真光寺、西福寺、東福寺、神宮寺、多聞寺、十輪寺の六ヶ寺が含まれ、残りは各集落の堂宇が担う。吉良堂もそのひとつである。
所有は宗教法人東福寺。貞光字木屋にある真言宗御室派の寺院で、吉良堂はその飛地境内に建つ。
端四国の開創年代については資料に幅がある。東福寺は江戸時代中期ごろとし、つるぎ町の観光資料は江戸時代末期に巡礼ルートとしてまとめられたと記す。堂自体の年代は文化7年で固まっており、平成17年(2005年)に改修が加えられている。
十棟一括登録という判断
平成29年5月2日、端四国霊場の堂十箇所が一括して国の登録有形文化財となった。吉良堂の登録番号は36-0158、第86回登録である。うち東福寺所轄は浦山堂、引地堂、竹屋敷堂、皆瀬堂、吉良堂、長瀬堂、日浦堂の七棟にのぼる。
一括登録の背景には、阿波の堂宇の分布そのものがある。徳島県の山間地域には六百余の堂があり、とりわけ剣山北面の集落には五間から六間四方、三方に戸を設けない「三方吹き抜け」の大型堂が集中する。江戸期から昭和初期にかけて建てられ、建立当時の開放形式を保つものが約二十五箇所。その中から十箇所が選ばれた。
選から漏れた堂の事情も記録されている。集落の集会所として使うため、サッシ戸や雨戸を入れて三方を塞いだ例が多い。生活上は合理的な改変であり、同時に登録の要件を失わせる改変でもあった。
推挙にあたったのは、県下の堂を調査してきた東福寺名誉住職の沖田定信師である。ミニ霊場としての端四国の堂を推奨し、各堂の所轄寺院が個別に申請する形をとった。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。
虹梁と木鼻、そして石造物
構造は木造平屋建、寄棟造茅葺で、現状は鉄板の仮葺をかける。建築面積は35平方メートル。三間堂の形式をとり、文化庁の解説は端四国の堂の中では比較的大型と評価している。
平面は背面側を三間幅の仏間とし、その手前を三方吹放ちとする。三方には縁を廻す。正面中央間には虹梁をかけ、天井は棹縁天井とする。
背面中央間の柱に注目したい。ここだけ円柱とし、他の角柱と区別する。随所に彫刻を施し、木鼻を付ける点も、集落の堂としては手の込んだ仕事である。
令和6年(2024年)2月以降、堂内には同じ吉良地区の杉尾神社から移された石造物二基が安置されている。五輪塔一基と宝塔残欠一基で、いずれも香川県さぬき市寒川町産の凝灰岩、いわゆる長尾石を用いる。つるぎ町は同年7月10日、この二基を町指定有形文化財に指定した。五輪塔は水輪を欠いていたが、宝塔の基礎であった部材をこれに充てて完存となり、制作年代は十四世紀後半を有力としつつ十三世紀に遡る可能性も残す。宝塔残欠は相輪を欠き、十五世紀の作と推定される。
拝観は自由で、料金もない。集落の道沿いに建ち、三方が吹放ちであるため、縁に立てば内部の様子はそのまま見える。つるぎ町は端四国のおさんぽマップを公開しており、近接する数堂をまとめて歩くこともできる。ただし現役の信仰の場であり寺院の所有地であるから、撮影は外観と開放部にとどめ、それ以上は許可を得たい。堂には駐車場も便所もない。四百メートルほど歩けば吉良のエドヒガンに至る。樹齢約四百年、幹周り約4.5メートル、幹が三本に分かれて枝を広げる古木で、徳島県指定天然記念物、この種としては県内最大規模とされる。駐車場と水洗便所はこちらに整備されている。
Q&A
- 吉良堂は拝観できますか。拝観料はかかりますか。
- 拝観は自由で、料金はかかりません。三方吹放ちの構造のため、縁に立てば内部の様子を見ることができます。東福寺の飛地境内にある現役の信仰の場ですので、寺院の堂に参るのと同じ心得でお訪ねください。
- 吉良堂が札所となっている端四国八十八箇所とは何ですか。
- つるぎ町貞光一帯に設けられた四国八十八箇所の写し霊場です。本四国を巡る費用と日数の負担を軽減するために整えられ、全行程は約80キロメートル。札所には六ヶ寺のほか各集落の堂が含まれます。吉良堂は第三十番札所にあたります。
- 吉良堂はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
- 文化7年(1810年)の建立で、平成17年(2005年)に改修されています。登録は平成29年(2017年)5月2日、登録番号36-0158、第86回登録です。この日は端四国霊場の堂十箇所が一括して登録されました。
- 吉良堂の内部に安置されている石造物は何ですか。
- 五輪塔一基と宝塔残欠一基です。保存の観点から令和6年2月に同地区の杉尾神社から移され、同年7月10日につるぎ町指定有形文化財となりました。石材は香川県さぬき市寒川町産の凝灰岩です。五輪塔は十四世紀後半、宝塔残欠は十五世紀の制作と推定されています。
- 吉良堂の周辺に立ち寄れる場所はありますか。
- 同じ吉良地区に、徳島県指定天然記念物の吉良のエドヒガンがあります。樹齢約四百年、この種としては県内最大規模とされる古木で、駐車場と水洗便所が整備されています。所有者である東福寺は貞光字木屋にあり、天保4年(1833年)建立の本堂が国の登録有形文化財、明治29年(1896年)建立の山門が町指定有形文化財です。
基本情報
| 名称 | 吉良堂(きらどう) 別称:釈迦堂 |
|---|---|
| 所在地 | 徳島県美馬郡つるぎ町貞光字吉良346-3 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号36-0158 |
| 指定年 | 平成29年(2017年)5月2日登録・告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、茅葺(鉄板仮葺)、建築面積35平方メートル、三間堂、寄棟造 |
| 所有者 | 宗教法人東福寺(飛地境内) |
| 公開状況 | 三方吹放ちで常時拝観可、無料。駐車場・便所の設備なし |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「吉良堂」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011569
- 東福寺「東福寺所轄 端四国霊場のお堂7箇所 国登録有形文化財に登録」
- https://www.toufukuji.or.jp/publicity/594
- 東福寺「寺院案内」
- https://www.toufukuji.or.jp/temple
- つるぎ町「有形文化財-建造物」
- https://www.town.tokushima-tsurugi.lg.jp/docs/3516.html
- つるぎ町「観光案内(遊ぶ)」
- https://www.town.tokushima-tsurugi.lg.jp/docs/3457.html
- つるぎ町「観光案内(自然)」
- https://www.town.tokushima-tsurugi.lg.jp/docs/3456.html
最終更新日: 2026.08.23