阿波で最初の道場と伝わる大山寺

大山寺(たいさんじ)は、徳島県板野郡上板町神宅の大山の中腹にある真言宗醍醐派の寺で、境内の本堂・大師堂・回廊・鐘楼門の4棟が平成23年(2011年)1月26日にそろって国の登録有形文化財に登録された。山号は仏王山、院号は玉林院という。地元では山の名から「おおやまさん」と呼ばれ、寺も道を尋ねるならこの通称のほうが通じると案内している。

同じ字を書く鳥取県大山町の大山寺(だいせんじ)とは別の寺である。上板町の大山寺は、文化庁のデータベースのふりがなも寺の名乗りも「たいさんじ」で、英語では Taisanji と書く。

寺の略縁起によれば、開基は西暦500年ごろ、武烈・継体天皇の時代の西範僧都で、阿波で最初に開かれた仏法の道場とされる。のちに弘法大師が阿波に入った折に堂塔を整え、仏王山の山号を付けて、師の恵果から授かった千手観音像を安置したと伝わる。

寺伝はさらに、寿永4年(1185年)に源義経が屋島の合戦に向かう途中で山に登って戦勝を祈ったこと、安貞年間(1227〜1229年)に土御門上皇が護摩堂を建てて不動明王像を納めたことを伝える。江戸時代には徳島藩主の蜂須賀家が祈願所とし、田地などを寄せた。いずれも寺の伝えであり、同時代の記録による裏づけは確認していない。

大山寺はいま、四国別格二十霊場の第1番と四国三十六不動霊場の第1番を兼ねる札所で、どちらの霊場でも最初に参る寺にあたる。

大山寺の登録4件と建築年代

4棟の登録番号は36-0094から36-0097まで続き、第69回の登録として同じ日に告示された。内訳は本堂(36-0094)、大師堂(36-0095)、回廊(36-0096)、鐘楼門(36-0097)である。登録基準は4棟とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされた。

もっとも古いのは本堂で、文化庁は江戸時代中期(1661〜1751年)の建築とし、寛政8年(1796年)に移築されたと記す。大師堂は文久3年(1863年)の建立と年まで特定されている。回廊と鐘楼門は江戸時代末期(1830〜1868年)の建物である。昭和60年(1985年)に本堂・大師堂・鐘楼門の3棟が改修され、本堂はそれより前の昭和27年(1952年)にも手が入っている。

4棟の性格はそれぞれ違う。本堂は龍や貘、植物の彫刻で飾った近世らしい仏堂、大師堂は江戸末期の標準的な弘法大師堂、鐘楼門は大柄で落ち着いた楼門と文化庁は評している。そのなかで回廊だけは、廊下そのものを信仰の場に仕立てた例で、文化庁の解説は「特殊な堂宇」と書く。

大山寺の境内の配置

文化庁の解説文から位置を拾うと、大山寺の4棟はいずれも東を正面にして建ち、ほぼ南北の線上に並んでいる。

鐘楼門は本堂の前方、石段を下りた一段低い位置に立つ。参拝者はこの門をくぐり、石段を上って本堂の前に出ることになる。本堂の北には大師堂があり、そのあいだを南北棟の回廊がつないでいる。回廊の中央の列には壇が設けられて三十三観音が並び、正面側の1間通りが拝所になっている。

本堂から回廊を経て大師堂まで、東向きの正面が一続きになる。鐘楼門をくぐって石段を上ると、この横に長い堂の列の前に出る。

大山寺の力餅と年中行事

大山寺の名を県内に広く知らせているのが、毎年1月第3日曜日の本尊初会式に行われる「力餅」である。86キログラムの大鏡餅を三方に載せ、合わせて169キログラムになったものを抱えて歩き、その距離を競う。

寺の説明では、戦国時代に近くの七条城の城主であった七条兼仲がこの寺に祈って怪力を授かり、お礼に九重の石塔と鏡餅を背負って山へ運び上げたという言い伝えがもとになっている。江戸時代になると、蜂須賀家が家臣に大鏡餅を担がせて力自慢を競わせた。

当日は午前10時から柴燈大護摩供と火渡りがあり、力餅は午後0時30分ごろに始まる。山道は時間を区切った一方通行になり、上ってきた車は決められた下りの時間まで下山できない。

このほか大山寺では、4月第1日曜日に縁結び祈願会、8月最終日曜日に奥の院黒岩山波切不動大祭、11月23日に三宝荒神祭が営まれる。境内の大イチョウは例年11月上旬から中旬に色づく。

大山寺の見学と行き方

大山寺は法務を営む寺で、札所として参拝者を迎えている。公式サイトには拝観時間や拝観料、写真撮影についての案内は見当たらない。登録された4棟の外観は境内から見られるが、堂内の公開の有無は寺の案内が無いため、法要の最中は妨げにならないよう心がけたい。問い合わせ先は大山寺(電話088-694-5525)である。

公共交通で向かう場合、寺はJR高徳線の板野駅からタクシーで20分ほど(約10キロメートル)と案内している。徳島駅から徳島バスの鍛冶屋原行きに乗り「神宅(かんやけ)」で降りる方法もあるが、そこから寺まではまだ約6キロメートルあり、電話で呼んだタクシーで15分ほどかかる。神宅から歩くなら、大山野外センターか「四国の路」の標識に従って車道を登る。四国ツーリズム創造機構は、駅やバス停から離れているので自家用車かタクシーを使うよう勧めている。

車では阿讃東部広域農道から大山野外センターの標識をたどる。寺の手前500メートルほどで野外センターへの道と分かれるので、そこからは寺の標識に従う。大山寺には駐車場があるが、料金の案内は資料によって分かれ、四国ツーリズム創造機構は無料、徳島県の観光情報サイト「阿波ナビ」は500円と記している。力餅の日は先に書いた一方通行の規制がかかる。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):大山寺本堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008591
国指定文化財等データベース(文化庁):大山寺大師堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008592
国指定文化財等データベース(文化庁):大山寺回廊
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008593
国指定文化財等データベース(文化庁):大山寺鐘楼門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008594
大山寺公式サイト(略縁起)
https://taisanji.jp/wp/
大山寺公式サイト:アクセス
https://taisanji.jp/wp/%e3%82%a2%e3%82%af%e3%82%bb%e3%82%b9/
大山寺公式サイト:力餅
https://taisanji.jp/wp/%e5%8a%9b%e9%a4%85/
大山寺公式サイト:行事
https://taisanji.jp/wp/%e8%a1%8c%e4%ba%8b/
四国別格二十霊場会:第一番 大山寺
https://www.bekkaku.com/?page_id=6
四国三十六不動霊場会:第1番 大山寺
https://sikoku36fudo.org/?page_id=43
四国ツーリズム創造機構:大山寺
https://shikoku-tourism.com/spot/24412
阿波ナビ:大山寺(四国別格1番)
https://www.awanavi.jp/archives/spot/1546
阿波ナビ:大山寺の力餅
https://www.awanavi.jp/archives/event/1858

最終更新日: 2026.09.29

基本情報

名称大山寺(上板町)
所在地徳島県板野郡上板町神宅字大山4
所有者宗教法人大山寺
指定登録有形文化財 4件
座標34.15933, 134.39974