エチソウビル:本郷通りに佇む大正時代の近代建築

東京都文京区本郷の本郷通り沿い、角地に堂々と建つエチソウビルは、大正13年(1924年)に竣工した鉄筋コンクリート造の商業ビルです。糸物商・越惣商店(合資会社越惣商店)の自社ビルとして建てられ、その名は創業者である越前屋惣兵衛(えちぜんや そうべえ)に由来しています。

令和5年(2023年)2月に国の登録有形文化財(建造物)に登録されたエチソウビルは、白いモルタル仕上げの外壁、頂部のデンティル装飾、窓上のアーチといった優美な意匠が特徴的です。東京大学のお膝元として知られる本郷の街並みにおいて、この建物は「アイストップ」として景観を形成する重要な存在となっています。

歴史的背景

エチソウビルは、大正13年(1924年)に糸物商・越惣商店の店舗兼事務所として建設されました。本郷は東京大学を擁する文教地区であると同時に、大正から昭和初期にかけては学生街・商業地としても大いに賑わった地域です。越惣商店は毛糸類の卸売・小売を営む商店で、この地域の商業を支える存在の一つでした。

建物は当初の西側部分を取り込む形で、昭和初期に鉄筋コンクリート造で増築が行われました。この増築により、南東隅を一段高くした塔屋付きの現在の姿が完成しています。関東大震災の翌年に竣工し、第二次世界大戦の戦災も乗り越えて約100年の歴史を刻むこの建物は、東京に残る初期鉄筋コンクリート商業建築として極めて貴重な存在です。

文化財としての価値

エチソウビルは令和5年(2023年)2月27日、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。国の文化財登録制度は、建築後50年を経過した建造物のうち、時代の特徴を示すもの、デザインが優れているもの、再現が容易でないものなどを対象としています。

エチソウビルがこの基準を満たす理由は多岐にわたります。大正時代の鉄筋コンクリート構造物として、日本における近代建築技術の初期導入を示す貴重な事例であること。頂部のデンティルや窓上のアーチなど、西洋建築の意匠を巧みに取り入れた装飾的な外観を持つこと。そして、本郷通り沿いの角地に位置し、街区の景観を形成する「アイストップ」として機能していることが、登録の大きな理由となっています。

建築の見どころ

エチソウビルは鉄筋コンクリート造3階建て(一部4階・塔屋付き)、建築面積236平方メートルの建物です。主な見どころは以下の通りです。

  • デンティル装飾:屋根の頂部に施されたデンティル(歯飾り)は、西洋古典建築に由来する装飾要素です。整然と並ぶ小さな突起が、建物に格調高い印象を与えています。
  • アーチ窓:上層階の窓上部にはアーチ形の装飾が施され、ファサードにリズミカルな優雅さを添えています。
  • 丸みを帯びたコーナー:建物の角は鋭角ではなく緩やかなカーブを描いており、柔らかく親しみやすい印象を生み出しています。
  • 南東隅の塔屋:南東の角が一段高く設計されており、タワーのようなアクセントが建物に独特の非対称なプロポーションを与えています。
  • 白いモルタル仕上げ:外壁は白いモルタルで仕上げられ、周囲の現代的な建物の中にあっても清潔感のある明るい存在感を放っています。

設計者・施工者は不明とされていますが、装飾の質の高さと建物全体のバランスの良さからは、西洋建築に精通した技術者の関与がうかがえます。

訪問案内

エチソウビルは東京都文京区本郷2丁目39-7、本郷通り沿いの角地に位置しています。本郷三丁目交差点からやや南側にあり、目印となる白い外壁と角地の塔屋がすぐに目に入ります。

民間の商業ビルのため、内部の一般公開は行われていませんが、テナントとして入居している飲食店などを利用することは可能です。建物の最大の魅力はその外観にあり、周囲の通りから自由に鑑賞できます。

最寄り駅は東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線の本郷三丁目駅で、1番出口から徒歩約1分と非常にアクセスの良い場所にあります。本郷通りを歩けば、他にも多くの歴史的建造物に出会えるため、近代建築散策のコースに組み込むのがおすすめです。

周辺の見どころ

本郷地区は東京でも有数の歴史的建造物の宝庫です。エチソウビルの周辺には、徒歩圏内に数多くの注目スポットがあります。

  • さかえビル:本郷通り沿いに建つ昭和9年(1934年)竣工の国登録有形文化財。昭和初期の洗練された商業建築デザインが見られます。
  • 日本基督教団弓町本郷教会:大正15年(1926年)竣工のコンクリートブロック造教会建築。国登録有形文化財に登録されています。
  • 日本基督教団本郷中央教会:昭和4年(1929年)竣工の旧日本メソヂスト中央会堂。ロマネスク・リバイバル様式の国登録有形文化財です。
  • 東京大学本郷キャンパス:北へ徒歩数分の場所にある東京大学の本郷キャンパスには、安田講堂をはじめとする戦前のゴシック・リバイバル様式の校舎群が数十棟残されています。
  • 湯島聖堂:元禄3年(1690年)に創建された孔子廟。昭和10年(1935年)に建築家・伊東忠太の設計で再建された鉄筋コンクリート造の建築群が見事です。
  • 旧伊勢屋質店:明治の女流作家・樋口一葉が通ったことで知られる質屋。国登録有形文化財・文京区指定有形文化財です。

Q&A

Q「エチソウ」という名前の由来は何ですか?
A「エチソウ」は、創業者の越前屋惣兵衛(えちぜんや そうべえ)の名前に由来しています。越前屋の「エチ」と惣兵衛の「ソウ」を組み合わせた屋号で、糸物商・越惣商店として営業していました。
Q建物の内部を見学することはできますか?
Aエチソウビルは民間所有の商業ビルであり、文化財としての一般公開は行われていません。ただし、テナントとして入居している飲食店などを利用する形で内部を訪れることは可能です。建物の魅力は主に外観にあり、通りから自由にご覧いただけます。
Q最寄り駅からのアクセスを教えてください。
A東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線の本郷三丁目駅1番出口から徒歩約1分です。本郷通り沿いの角地に建っており、白い外壁と塔屋が目印です。
Qいつ文化財に登録されましたか?
A令和5年(2023年)2月27日に、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
Q近くに他の文化財はありますか?
Aはい、本郷地区には多くの歴史的建造物があります。同じ本郷通り沿いのさかえビル、弓町本郷教会、本郷中央教会のほか、東京大学本郷キャンパスの戦前建築群、湯島聖堂、旧伊勢屋質店など、徒歩圏内に数多くの文化財が集まっています。

基本情報

名称 エチソウビル
指定区分 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 令和5年(2023年)2月27日
竣工年 大正13年(1924年)、昭和初期に増築
構造 鉄筋コンクリート造3階建、塔屋付、建築面積236㎡
所有者 合資会社越惣商店
所在地 東京都文京区本郷2丁目39-7
アクセス 東京メトロ丸ノ内線・都営大江戸線 本郷三丁目駅 1番出口より徒歩約1分

参考文献

エチソウビル – 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/602449
国指定文化財等データベース – エチソウビル
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014455
国登録文化財 – 文京区
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b047/p004380.html
文京区南部の近代建築 – 伝統の日本紀行
https://www.visiting-japan.com/ja/articles/tokyo/j13bu-bunkyo-kinken-s.htm
東京本郷のエチソウビル – レトロな建物を訪ねて
https://gipsypapa.exblog.jp/23519958/

最終更新日: 2026.03.29