石に開いた一つの穴

清水川第一堰堤の水通し下部中央には、約1メートル四方の大きな水抜き穴が開く。石積の堰堤でこれほどの開口はめずらしく、平時の流れを通しながら、出水時の土砂や流木を受け止めるという設計の意図が読み取れる。鳥取県倉吉市関金町、山あいを流れる清水川の上流部を横切る重力式の砂防堰堤で、竣工は昭和12年(1937)である。

清水川に並ぶ五基の砂防堰堤のうち、第一堰堤は最も早く完成し、堤高7.0メートルは五基中で最も高い。最上流の第五堰堤から約1キロメートル下った地点に位置する。

災害から生まれて

きっかけは一つの嵐だった。昭和9年(1934)の室戸台風は西日本を襲い、天神川水系の各河川を氾濫させた。清水川はその支流にあたる。復旧にあたった内務省は、土砂を貯え、下流の農地へ達する前に激流を鎮めるため、清水川に一連の砂防堰堤を配置した。工事は昭和12年から19年にかけて進み、第一堰堤はその最初の一基となった。

構造は重力式コンクリート造で、堤体の表面を練積の石積で覆う。大部分は石を斜めに組む谷積とし、水通し天端の一層のみを水平に積む布積とする。この組み合わせは清水川の各堰堤に共通し、群としての作風を与えている。平成16年(2004)、現存する五基は国土の歴史的景観への寄与を理由に登録有形文化財となった。

壁を読む

堰堤の下手に立つと、水抜き穴が石組の中に据えられた眼のように見える。その上で天端は一段、水平の布積が帯となって、周囲の斜めの谷積とは異なる光を返す。夏の斜面は濃い緑に覆われるが、これはかつて侵食で裸地化した山肌に植林を重ねてきた結果である。石積は灰色に枯れて、林の中へ沈み込むように収まっている。

いずれも公有地に建つ現役の土木構造物で、屋外の川沿いにあり、門も入場料もない。ただし一帯は山間部で、細い林道を通ってたどり着く。関金温泉や蒜山高原へ向かう道筋を拠点にすると回りやすい。水辺の足場は不安定な箇所もあるため、間近に近づく際は現地の状況を確かめてから歩きたい。

Q&A

Q清水川第一堰堤はいつ造られましたか。
A昭和12年(1937)の竣工で、清水川に登録された五基のうち最も早く完成しました。
Q他の堰堤と比べて第一堰堤の特徴は。
A堤高7.0メートルは五基中で最も高く、水通し下部中央に約1メートル四方の大きな水抜き穴を設けている点が目を引きます。
Qなぜこの地に堰堤群が築かれたのですか。
A昭和9年の室戸台風による水害を受け、内務省が天神川水系上流の土砂流出を抑えるために設けた砂防堰堤群です。
Q「谷積」とはどのような積み方ですか。
A石を斜めに、角を突き合わせて組む石積の手法です。堤体の大部分がこの谷積で、水通し天端のみ水平の布積となります。
Q見学はできますか。
A公有地の屋外構造物で入場料はありません。ただし山間の遠隔地にあり、自動車での訪問が現実的です。

基本情報

名称清水川第一堰堤(しみずがわだいいちえんてい)
所在地鳥取県倉吉市関金町堀
区分・登録登録有形文化財(建造物)/平成16年(2004)7月23日登録
登録番号31-0065
竣工昭和12年(1937)
構造・形式重力式コンクリート造堰堤(練積石積化粧)/堤長52メートル、堤高7.0メートル
員数1基
所有者国(国土交通省)
公開屋外の土木構造物、見学自由(山間部のため車利用が現実的)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 清水川第一堰堤
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004292
文化遺産オンライン — 鳥取県倉吉市の文化財
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/region/31/31203
国土交通省 河川データブック — 天神川水系
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen/jiten/nihon_kawa/0711_tenjin/0711_tenjin_01.html
国土交通省 — 砂防
https://www.mlit.go.jp/river/sabo/index.html

最終更新日: 2026.07.05