金屋町の氏神、有礒正八幡宮
有礒正八幡宮は、富山県高岡市横田町にある神社で、明治16年(1883年)建立の本殿と、昭和10年(1935年)建立の釣殿・拝殿及び幣殿の社殿3棟が、平成18年(2006年)3月2日にそろって国の登録有形文化財に登録された。
読みは「ありそしょうはちまんぐう」。観光案内などでは「有磯正八幡宮」と書かれることもあり、地元では有礒神社の名でも呼ばれる。
富山県と高岡市がまとめた世界遺産暫定一覧表への提案書は、有礒正八幡宮を、高岡の町立て(慶長年間)の際に有磯宮と横田正八幡宮の二社を合祀して成った神社と説明している。神社が伝える由緒では合祀を慶長15年(1610年)とし、千保川の氾濫を受けて慶長17年(1612年)にいまの地へ移ったという。有礒宮はもと雨晴の海辺にまつられた「有礒の海」の守護神、横田正八幡宮は八幡神をまつる社で、二つの系統の神々が一つの社殿に同居している。境内を囲む石垣は、高岡城を築いた前田利長が奉納したものと伝わる。
旧北陸道の曲がり角と鋳物師の信仰
文化庁の日本遺産ポータルによれば、有礒正八幡宮は旧北陸道が横田から中島町へ折れる曲がり角の突き当たりに鎮座し、街道の面影をよく残している。千保川に架かる横田橋を渡ると、正面に社地が見えてくる位置である。
東へ歩いて数分の金屋町は、前田利長が砺波郡の西部金屋から7人の鋳物師を招いて開いた鋳物の町で、高岡鋳物の発祥地とされる。有礒正八幡宮はこの金屋の氏神で、鋳物師の守り神である石凝姥命(いしこりどめのみこと)をまつることから「鍋宮様」とも呼ばれてきた。
こうした結びつきから、有礒正八幡宮の社殿は日本遺産「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡」の構成文化財に選ばれている。
有礒正八幡宮の境内と社殿3棟
参道を進むと、まず正面に拝殿及び幣殿が建つ。その奥を釣殿がつなぎ、いちばん奥に本殿が控える。前から順に拝殿及び幣殿(建築面積159平方メートル)、釣殿(30平方メートル)、本殿(21平方メートル)で、手前ほど大きい。
建てられた時期は二つに分かれる。本殿は明治16年(1883年)の建物で、富山県と高岡市の提案書は名工・松井角平の手になると記す。その52年後の昭和10年(1935年)に拝殿・幣殿と釣殿が新たに建てられ、いまの社殿の形がそろった。屋根はどれも銅板葺である。
高岡市の歴史まちづくり計画は、拝殿・幣殿の八棟造の屋根と、本殿の入母屋造の屋根、組物の装飾を特徴に挙げている。神社では、幾重にも屋根を重ねたこの社殿の形を「有礒造」と呼んでいる。3棟の登録番号は16-0075から16-0077まで続き、登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
社殿のほかにも、境内には高岡市指定文化財が2件ある。参道に立つ1対の青銅随神像(平成26年(2014年)指定)と、天明5年(1785年)の作と伝わる神輿1基(平成13年(2001年)指定)で、随神像は神社によれば大正10年(1921年)の建立である。
御印祭と水天宮祭
有礒正八幡宮がもっともにぎわうのは6月の御印祭である。前田利長の命日にあたる6月20日に、利長への報恩感謝を込めて金屋町で営まれる祭りで、高岡市の歴史まちづくり計画によれば、前日に有礒正八幡宮から御神体が金屋町公民館に移され、そこで式典が行われる。19日の夜には鋳物づくりの作業唄に由来する弥栄節(やがえぶし)の町流しが金屋町の石畳通りで行われる。高岡観光ナビの案内では、20日の祭典は午後7時から有礒正八幡宮で執り行われる。
もう一つ、中島町の水天宮祭も有礒正八幡宮と縁が深い。水害で何度も場所を変えた御神体を守るため、ふだんは有礒正八幡宮に置かれ、祭りの日に中島町へ迎えられる。祭典のあとには数多くの灯籠が千保川に流される。
有礒正八幡宮の参拝と行き方
有礒正八幡宮の境内は参拝自由で、拝観料はかからない。社務所の受付は午前8時から午後8時までで、問い合わせは電話0766-22-0334。拝殿に上がって祈願を受ける昇殿参拝は、神社の案内によれば電話での完全予約制となっている。
あいの風とやま鉄道の高岡駅からは歩いて約25分、タクシーなら約10分。北陸新幹線の新高岡駅からは加越能バスで「金屋」バス停まで行き、そこから歩いて5分ほどである。車の場合は、神社裏手の参拝者専用駐車場を使える。金屋町の千本格子の町並みとは歩いて数分の距離にある。
本殿・釣殿の内部は公開されていない。各棟の見え方や撮影の注意は、それぞれのページで紹介している。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):有礒正八幡宮本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005269
- 国指定文化財等データベース(文化庁):有礒正八幡宮釣殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005270
- 国指定文化財等データベース(文化庁):有礒正八幡宮拝殿及び幣殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005271
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁):有礒正八幡宮(本殿・釣殿・拝殿及び弊殿)
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/294/
- 日本遺産ポータルサイト(文化庁):加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡
- https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story003/
- 富山県・高岡市:世界遺産暫定一覧表記載資産候補の提案書 近世高岡の文化遺産群(PDF)
- https://www.pref.toyama.jp/documents/8700/01112844.pdf
- 高岡市:高岡市歴史まちづくり計画 第2章(PDF)
- https://www.city.takaoka.toyama.jp/material/files/group/42/rekimachi_2.pdf
- 高岡市:市内文化財 登録有形文化財
- https://www.city.takaoka.toyama.jp/soshiki/kyoikuiinkai_bunkazaihogokatsuyoka/1/4/2/4508.html
- 高岡市:市内文化財 高岡市指定文化財
- https://www.city.takaoka.toyama.jp/soshiki/kyoikuiinkai_bunkazaihogokatsuyoka/1/4/2/4480.html
- 高岡観光ナビ(高岡市観光協会):高岡鋳物のまち・金屋町に受け継がれる御印祭
- https://www.takaoka.or.jp/feature/detail_229.html
最終更新日: 2026.10.04
基本情報
| 名称 | 有礒正八幡宮 |
|---|---|
| 所在地 | 富山県高岡市横田町3-1-1 |
| 所有者 | 宗教法人有礒正八幡宮 |
| 指定 | 登録有形文化財 3件 |
| 座標 | 36.74984, 137.00346 |