福田家住宅内塀 ― 片面を黒漆喰、片面を白壁とする塀

この塀には二つの表情がある。主屋へ至る通路側は腰を下見板張とした黒漆喰塗、内庭側へ回ると同じ塀が白壁となる。和歌山県岩出市山の福田家住宅の内塀であり、総延長13メートルの小さな構造物ながら、改まった導入路と私的な庭とを分け、庭に落ち着いた構えを与えるという明確な役割を担う。

塀は、表門から主屋に至る通路の西辺に南北棟で建つ。真壁とし、各柱間に窓を穿つ。中央北寄りに腕木門を開き、両端には木戸を構える。屋根は切妻造の桟瓦葺。建築は昭和前期、すなわち昭和元年(1926年)から同20年(1945年)にかけての時期にあたる。

塀の奥の屋敷

福田家は地主で、当主は村長も務めた。その居宅は、非常に丁寧な施工による、この地域の明治期を代表する農家建築の一つとされる。敷地は南北に細長く、南辺に門、ほぼ中央に南面して入母屋造・本瓦葺の主屋が式台玄関を突き出し、導入路の東に米蔵及び納屋、主屋の北に北蔵、西の道路沿いに土塀を築く。内塀はこの整った構成の一要素であり、働く農家を格の異なる空間の連なりへと組み替える役を果たす。

屋敷の門には小さな来歴がある。もとの長屋門は昭和24年(1949年)に焼失し、翌年、残った部材を再利用して薬医門として建て直された。こうした屋敷が固定された遺物ではなく、住む人の手で守られ、修され、つくり直されてきたことを示す一齣である。

登録の理由と見学について

内塀は平成24年(2012年)2月23日、福田家住宅の6棟の一つとして登録有形文化財(建造物)に登録された。平成8年(1996年)に始まったこの制度は、重要文化財や国宝より緩やかに、歴史的景観への寄与などを評価して建造物・工作物を保全するものである。本件では、規模こそ小さいながら、品格のある庭空間を生み出して屋敷全体の質を高めている点が認められている。

私邸であり一般には公開されていないため、内塀は登録された一群の構成要素として理解するのがよい。周辺の見どころとしては、岩出市は国宝の大塔で知られる根来寺が近く、こちらは広く公開されている。紀の川流域のこの一帯の建築に関心のある人には、ふさわしい目的地となるだろう。

Q&A

Qなぜ片面が黒、片面が白なのですか。
A通路側は腰を下見板張とした黒漆喰塗、内庭側は白壁です。改まった導入路と私的な庭を分け、庭に落ち着いた品格を与えるための仕上げの違いです。
Q腕木門とは何ですか。
A柱から突き出した腕木で小さな屋根を受ける簡素な門です。内塀の中央やや北寄りに一つ開いています。
Q城郭のような石垣のある福田家と同じですか。
A別の住宅です。石垣の福田家は南部の山間、すさみ町にあります。こちらの福田家は紀の川流域の岩出市にあり、同じ姓の別物件です。
Q見学はできますか。近くの見どころは。
A私邸のため非公開です。近隣では、国宝の大塔で知られる根来寺が広く公開されており、訪ねる価値があります。

基本情報

名称福田家住宅内塀(ふくだけじゅうたくうちべい)
所在地和歌山県岩出市山318
指定区分登録有形文化財(建造物)/平成24年(2012年)2月23日登録
年代昭和前期(1926年〜1945年)
構造土塀、切妻造桟瓦葺、総延長約13m、門付。通路側=黒漆喰塗・腰下見板張、内庭側=白壁
員数1基
公開状況私邸・非公開。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 福田家住宅内塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009208
わかやまの文化財(和歌山県教育委員会) 福田家住宅(岩出市)
https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai_555/

最終更新日: 2026.06.22