寒川家住宅 ― 日高川上流の山あいに残る社家の屋敷
寒川家住宅は、和歌山県日高郡日高川町寒川にある旧家の屋敷で、嘉永3年(1850年)頃に建てられた茅葺の主屋を中心に、明治から昭和前期にかけて整えられた7件の建造物が、平成25年(2013年)12月24日にそろって登録有形文化財(建造物)となった。
地名と家名の「寒川」は、この土地では「そうがわ」と読む。文化庁のデータベースも「そうがわけじゅうたく」とふりがなを振っている。神奈川県の寒川(さむかわ)とは読みが違うので、地図アプリや乗換案内で探すときは読みに気をつけたい。
寒川は日高川上流の山あいにある集落で、町の中心部から車でおよそ1時間かかる。屋敷は集落の寒川神社の東側に構えており、神社とは小さな門一つで結ばれている。
地頭の家、寒川神社の社家
和歌山県教育委員会の解説によれば、寒川家は6代目が鎌倉幕府からこの地の地頭職に任じられたと伝わる旧家で、近くの寒川神社の社家を代々務めてきた。登録の答申を伝えた日高新報は、そのとき関東から移り住んだとされる、と書き添えている。
家の由来は中世にさかのぼるが、いま残る建物で最も古い主屋は江戸時代末期のもので、形式は大規模な農家の住まいである。座敷に据えられた大型の神棚と、神社の祭礼のときにだけ使う小門が、社家としての顔を建物に残している。
令和3年(2021年)2月の町の広報紙は、寒川神社の宮司を務める家族が今もこの屋敷で暮らしていると伝える。寒川家住宅は見学のために整えられた施設ではなく、現に使われている住まいである。
寒川家住宅の屋敷構え ― 7件の配置と年代
屋敷地は約350坪(約1,155平方メートル)ある。中央に主屋が南を向いて建ち、その西に渡廊下でつながる離れ、南東に土蔵が置かれる。南辺の中央には表門が開き、門の東西へ塀が折れ曲がりながら延びる。西へ延びた塀の先で屋敷地の南西辺を区切るのが石垣で、その先、離れの南西にあたる西辺に小門がある。寒川神社はさらにその西側に位置する。
建てられた順に並べると、嘉永3年頃の主屋に始まり、明治中期の土蔵、大正前期の離れ、大正後期の小門と続く。昭和12年(1937年)に表門と塀が建ち、昭和前期の石垣で今の屋敷構えが整った。江戸末期から昭和前期まで、代ごとに少しずつ建て足してきた屋敷である。
道から表門の前に立つと、正面に杉皮葺の門、左右に黒い壁の塀が延び、右手の奥に土蔵の白壁がのぞく。茅葺の主屋は門の奥にある。各棟の構造と細部は、それぞれのページで扱っている。
寒川家住宅が登録有形文化財になった理由
平成25年7月19日、文化審議会は寒川家住宅の7件を登録有形文化財とするよう答申し、同年12月24日に官報告示を経て登録された。7件の登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
評価されたのは、個々の建物というより屋敷構えの全体だった。文化庁の解説は主屋について、敷地内の建物とあいまって山間地の農村景観に寄与すると述べる。日高新報は、江戸末期の姿をとどめる茅葺の主屋を含む屋敷構えは再現が難しく、山里の景観によくなじんでいる点が評価されたと報じた。町の広報紙によれば、日高川町で最初の登録有形文化財でもある。
茅葺屋根を守るということ
主屋が今も茅葺を保っていることは、登録の際にとくに貴重な点として挙げられた。その維持は所有者の手に委ねられている。令和2年(2020年)には主屋の茅の葺き替えが行われ、町の広報紙は翌年2月号の特集で、葺き替えの前後の姿を並べて紹介した。
同じ特集は、昭和63年(1988年)に放送されたNHKの連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」の舞台となった屋敷としても寒川家住宅を取り上げている。
寒川家住宅の見学案内 ― アクセスと見学の心得
寒川家住宅は家族が暮らす個人の住宅で、一般には公開されていない。敷地にも建物の中にも入れず、見学は屋敷の南側を通る道から外観を眺める形になる。表門・塀・石垣と土蔵の白壁は道から見えるが、門の内側をのぞき込んだり、敷地に足を踏み入れたりするのは控えたい。写真を撮るなら道からにとどめ、住む人の暮らしが写り込まないよう気を配ってほしい。
公共交通を使う場合は、JR紀勢本線の御坊駅から熊野御坊南海バスの日高川線に乗り、終点の川原河まで約1時間。そこで日高川町コミュニティバスの寒川線に乗り継ぎ、終点の「寒川」まで35〜45分ほど乗る。コミュニティバスの運賃は1乗車200円。寒川線は1日に数便しかなく、乗り継ぎの時刻も限られるため、町や観光協会が公開している時刻表で行きと帰りの便を確かめてから出かけたい。
車の場合、町の広報紙は日高川町役場の本庁から約1時間としている。山あいの道が続くので、時間には余裕を見ておきたい。見学者向けの駐車場は案内されておらず、集落の生活道路に車を止めることは避けてほしい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009819
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅離れ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009820
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅土蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009821
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅表門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009822
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009823
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅小門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009824
- 国指定文化財等データベース(文化庁)寒川家住宅石垣
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009825
- 文化遺産オンライン 寒川家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/230428
- わかやまの文化財(和歌山県教育庁文化遺産課)寒川家住宅
- https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai-spot-881/
- 日高新報「日高川の寒川家 国の登録文化財に」(2013年7月21日)
- https://hidakashimpo.co.jp/?p=22856
- 広報日高川町 2021年2月号 特集「茅葺屋根を次世代に繋ぐ」
- https://www.town.hidakagawa.lg.jp/tyousei/kouhou/kouhoushi/kouhoushi2021/files/PDF_2021_02.pdf
- 日高川町 コミュニティバス
- https://www.town.hidakagawa.lg.jp/kurashi/doro_koutsu/communitybus.html
- 日高川町観光協会 寒川線・龍神日高川線 時刻表(令和6年4月1日改正)
- https://hidakagawa-kanko.jp/wp-content/uploads/2024/04/%E5%AF%92%E5%B7%9D%E7%B7%9A%E6%99%82%E5%88%BB%E8%A1%A81.pdf
- 熊野御坊南海バス 日高川線 時刻表
- https://kumanogobobus.nankai-nanki.jp/cms/wp-kumanogobobus/wp-content/uploads/hidakagawaline.pdf
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 寒川家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県日高郡日高川町大字寒川273 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 7件 |
| 座標 | 33.95663, 135.46706 |