新町通りに構えた廻船商家の屋敷

薗家住宅は、和歌山県御坊市薗の新町通りに面する旧廻船業の商家の屋敷で、江戸時代末期から昭和28年(1953年)頃までに建てられた主屋・土蔵・離れ・塀の7棟が、令和6年(2024年)8月15日に国の登録有形文化財となった。読みは「そのけじゅうたく」である。

御坊市の町並み案内によれば、薗家の当主は代々「薗喜太夫」の名を継ぎ、幕末のころには廻船業を営んでいた。廻船業は、船を仕立てて各地の産物を運び、売り買いする商いを指す。御坊の町は本願寺日高別院を中心とする寺内町として育ち、江戸時代には各地の特産物を扱う問屋が軒を並べた。薗家の屋敷もそうした商人の町の一角にある。

新町通りは東西にまっすぐ延びる通りで、寺内町の細い路地から出ると道幅がにわかに広くなる。屋敷は通りの北側に建ち、表に見えるのは軒の低い平屋の主屋だけである。その奥では、蔵と離れと長い塀が中庭を取り囲んでいる。敷地の北側には下川が流れ、離れの2階の窓からはその川面が見える。

7棟の配置と、しまう物で分けた蔵

主屋は敷地の南端で通りに南面する。北辺には西から離れ・西土蔵・東土蔵の3棟が一列に並ぶ。東土蔵の東端からは片塀が延び、北東の隅で折れて東辺を南へ下り、その先に南土蔵が建つ。西辺の南寄りには人形蔵がある。主屋の背後の空地は、こうして北・東・西の三方を建物と塀で囲まれている。

蔵の数が多いのは、納める物ごとに建物を分けていたためである。人形蔵には雛人形など、西土蔵には膳など、東土蔵には家財、南土蔵には食器などの道具を納めた。片塀も囲いにとどまらず倉庫を兼ねており、南端の一角は漬物部屋になっている。祝いの席で出す膳や器、年に一度飾る人形、日々の保存食まで、置き場所がそれぞれ決まっていたことが、建物の数と用途から読み取れる。

建てられた時期は三つに分かれる。主屋・人形蔵・西土蔵・東土蔵・片塀の5棟が江戸時代末期、南土蔵が大正時代後期、離れが昭和28年(1953年)頃である。主屋と南土蔵も昭和28年頃に改修を受けており、この時期に屋敷の各所へ手が入ったことがうかがえる。幕末の商家の骨格に、大正の蔵と戦後の離れが加わって、今の屋敷構えができあがった。

登録の経緯と評価

国の文化審議会は令和6年(2024年)3月15日、薗家住宅の7棟を登録有形文化財(建造物)とするよう文部科学大臣に答申し、同年8月15日に登録された。登録番号は主屋の30-0362から片塀の30-0368まで連番になっている。地元紙の日高新報は、この答申で和歌山県内の登録有形文化財(建造物)が132か所357件、御坊市内が11か所41件になったと伝えている。

7棟はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録された。文化庁の解説は、主屋を地域の歴史的景観の核とし、蔵・離れ・塀については、それぞれが敷地の北辺や東辺、西側の景観をつくっていると評価する。和歌山県教育庁の解説も、これらの建物群が薗の町並みの形成に大きく寄与していると述べる。1棟の建物の出来よりも、通りの主屋から奥の蔵と塀までがそろって残る屋敷構えそのものが評価の対象になっている。

見学とアクセス

薗家住宅は個人が所有する住宅で、7棟とも内部は公開されていない。敷地への立ち入りもできない。公開日や見学受け付けの案内は、和歌山県と御坊市の文化財情報のいずれにも見当たらなかった(2026年9月24日確認)。見学は公道から外観を見る形に限られ、その中心は新町通りに面した主屋の正面になる。撮影を禁じる掲示の情報は確認できなかったものの、住まいであることを考え、敷地の奥へレンズを向けるのは控えたい。

鉄道では、JRきのくに線の御坊駅で紀州鉄道に乗り換え、終点の西御坊駅で降りる。紀州鉄道は営業距離2.7キロメートルの短い路線で、御坊駅から西御坊駅まではおよそ8分。運行は1時間に1本ほどで、昼どきに間隔の空く時間帯もあるため、時刻は事前に確かめておくとよい。西御坊駅から薗家住宅までは東へ300メートルほど、歩いて5分前後である。

御坊市は寺内町の町歩きを案内しており、市の「御坊街並みウォッチング」でも新町を通るコースで薗家が取り上げられている。日高別院のまわりの町家と続けて歩くと、廻船商家の屋敷が寺内町のどのあたりに構えていたかがつかみやすい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015071
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅人形蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015072
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅離れ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015073
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅西土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015074
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅東土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015075
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅南土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015076
国指定文化財等データベース(文化庁) 薗家住宅片塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015077
和歌山県教育庁「わかやまの文化財」 薗家住宅
https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai-spot-1041/
御坊市 御坊街並みウォッチング(シリーズ3)
https://www.city.gobo.lg.jp/sosiki/sangyokensetu/syoko/tanto/kankou/miru/jinaimati/matinamiwatch/1382928710644.html
御坊市 寺内町 概要
https://www.city.gobo.lg.jp/kankojoho/miru/jinaimachi/1395036243044.html
御坊市 紀州鉄道
https://www.city.gobo.lg.jp/sosiki/sangyokensetu/syoko/tanto/kankou/miru/kisyutetudou/1395033027817.html
日高新報 御坊の薗家住宅主屋等 国登録有形文化財に(2024年3月16日)
https://hidakashimpo.co.jp/?p=92063
NAVITIME 御坊から西御坊 時刻表(紀州鉄道)
https://www.navitime.co.jp/diagram/depArrTimeList?departure=00002303&arrival=00004763&line=00000272&updown=1

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称薗家住宅
所在地和歌山県御坊市薗691
所有者個人
指定登録有形文化財 7件
座標33.88631, 135.15564