城内にただ一つ残る、江戸の門

和歌山城の城内には、かつて天守をはじめ多くの建物が建ち並んでいた。その大半は昭和20年(1945)7月の空襲で焼け落ちたが、城の南東に立つ岡口門だけは焼失を免れて今に残る。二階建ての櫓門で、下の通路の上に防御のための部屋を渡した構えをとる。現在見られる門は元和7年(1621)のものと考えられている。

この門は、もとは反対の役割を担っていた。慶長5年(1600)に浅野幸長が紀州を治めていたころ、ここは城の正面にあたる大手門だった。元和5年(1619)、徳川家康の十男・頼宣が入国して紀州徳川家の祖となると城の構えが改められ、正面は北東の一の橋口へ移される。岡口門は元和7年に搦手門(裏門)として建て直され、その姿のまま現在に至っている。

なぜ守られているのか

国の重要文化財に指定されたのは昭和32年(1957)6月18日である。価値の一つは、その希少さにある。和歌山城には旧国宝の天守をはじめ指定建造物がいくつもあったが、昭和20年7月9日の空襲で天守などの大半が焼け落ちた。岡口門と隣の土塀は数少ない生き残りで、江戸時代の城の姿を今に残す実物として貴重である。

門の北側に続く延長約40メートルの土塀は、附(つけたり)として門とともに指定されている。鉄砲を撃つための狭間が12か所開けられているが、これを木と漆喰で枠取りせず、一枚の石をくり抜いて作っている点が珍しい。土塀単独でも指定の対象となっているのは、この珍しい造りによるところが大きい。

見どころ

門の下に立ったら、まず扉を見たい。扉は内側に開く造りで、表面と柱の角には鉄板が張られている。攻め手が斬りつけたり焼いたりして破るのを防ぐためのものだ。屋根は切妻造で、本瓦で葺かれている。

二階の壁面にも目を向けてほしい。守りの都合から壁を厚く見せる必要があり、柱や長押(なげし)を外側に漆喰で塗り出して、壁面が一続きに見えるよう仕上げている。建物には大正中頃と昭和初期、さらに昭和35年(1960)ごろにも修理の記録が残る。

土塀の石の狭間は見落としやすい。北側をゆっくり歩いて数えてみると、一枚石をくり抜いた12の小窓が、外から近づく者へ狙いを定めるように開いているのがわかる。

門の周辺

岡口門は無料で入れる和歌山城公園の中にあり、外観はいつでも見学できる。内部は通常公開されていない。門から坂を少し上ると、空襲で焼けたのち昭和33年(1958)に鉄筋コンクリートで外観復元された天守閣がある。開館は9時から17時30分(入場は17時まで)、入場料は大人410円、小・中学生200円で、12月29日から31日は休館となる。

門のすぐそばには岡公園が広がる。ここは城の古い石垣に使われた青石(緑色片岩)の採石場で、岩肌に切り出しの跡が残っている。城内には名勝に指定され紅葉で知られる西之丸庭園(紅葉渓庭園)、御橋廊下、無料の動物園などもある。アクセスは、JR和歌山駅からバスで約10分の「和歌山城前」下車、徒歩約10分。南海和歌山市駅からは徒歩約10分である。

Q&A

Q門の中に入れますか。
A内部は公開されていません。ただし鉄板を張った扉や二階の漆喰仕上げなど、外観は公園内からいつでも自由に見学できます。
Q岡口門は城のほかの建物と何が違うのですか。
A天守を含め、現在の建物の多くは戦後の再建です。岡口門と隣の土塀は、空襲を免れた江戸時代そのままの建造物です。
Qなぜ大手門が裏門になったのですか。
A元和5年(1619)以降、徳川頼宣が城を改めた際に正面が一の橋側へ移り、岡口門の側は元和7年に搦手(裏門)となりました。
Q土塀の見どころはどこですか。
A12か所の鉄砲狭間です。木や漆喰の枠ではなく一枚の石をくり抜いて作られており、土塀単独でも指定の対象となっています。
Q門の見学に料金はかかりますか。
Aかかりません。門は無料の城公園内にあります。料金が必要なのは再建された天守閣(大人410円)だけです。

基本データ

名称和歌山城岡口門(わかやまじょう おかぐちもん)
所在地和歌山県和歌山市一番丁3番地の2
指定区分国指定重要文化財(建造物)/昭和32年(1957)6月18日指定
時代・年代江戸時代(現在の門は元和7年・1621年)
構造二階建の櫓門、切妻造、本瓦葺
附指定北側の土塀(延長約40m、石造の鉄砲狭間12か所)
所有者和歌山市
アクセスJR和歌山駅からバス約10分「和歌山城前」下車、徒歩約10分/南海和歌山市駅から徒歩約10分
公開外観は城公園内で常時見学可(無料)。内部は非公開

参考文献

和歌山城岡口門 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/195480
国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2823
史跡和歌山城 公式サイト
https://wakayamajo.jp/history/kozo.html

最終更新日: 2026.06.05