寺が消えても書院は残った
清風荘(旧宝幢寺書院)は、山形県山形市東原町2-16-7のもみじ公園内に建つ江戸時代後期の書院建築で、平成13年(2001年)11月20日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。木造平屋建、鉄板葺、建築面積290平方メートル。所有者は山形市である。
もとは真言宗の巨刹・宝幢寺の書院だった。宝幢寺は明治初期の神仏分離とそれに続く動きのなかで廃寺となり、寺は消えたが書院は建物として残された。
外観は抑制されている。屋根は片入母屋、壁面に装飾はない。この建物の見どころは内部と北面に集まる。北側には池泉回遊式の庭園が広がり、座敷の開口はその庭に向けて取られている。
年代については資料が分かれる。文化庁の国指定文化財等データベースは江戸後期、西暦にして1751年から1829年の範囲を示す。一方、山形市の施設案内は、創建時の宝幢寺は焼失し、文久2年(1862年)頃に再建された建物の書院部分が現在の清風荘だと記す。両者は一致しない。ここでは一次資料である文化庁の記載を採る。
上段の間に置かれた床・棚・付書院
文化庁の評価は内部に集中している。簡素な外観の奥に、床を一段高く上げた上段の間がある。その場に列する者のうち最も格の高い人物の座を示すための床構えで、江戸期の書院建築における序列の装置である。
設えは正統的な三点で構成される。掛物を掛ける床、高さを違えた棚板を組む違い棚、そして庭側へ張り出し、地板の上に低い明かり障子を設けた付書院。いずれも派手さを狙う造りではない。
登録の理由として明記されているのは、この構成に加えて用材の吟味である。よく建てられた地方寺院の座敷と、上質な書院造の遺構とを分けるのは、多くの場合そこにある。登録基準は「造形の規範となっているもの」、登録番号06-0039、第31回の登録にあたる。登録年月日は平成13年11月20日、告示は同年12月4日。
規模は、山形市が公表する貸出用の部屋割りから読み取れる。1号室が上段と下段に分かれ、上段およそ5畳、下段6畳。2号室から4号室は各10畳前後。和室は4室で、そのうち格式を担うのは1室のみである。
清風荘は博物館ではなく、現に稼働している市の文化施設である。その位置づけが建物の維持を支えてきた反面、茶道や華道、謡曲の団体による利用が日常的に入っている。
庭園と、昭和54年の茶室
清風荘が建つもみじ公園は、宝幢寺の庭園を前身とする。昭和31年(1956年)に市が寺跡を買収し、翌昭和32年に建物が中央公民館分館「清風荘」として開館した。庭は池を中心とする回遊式で、山形城主を務めた松平氏によって改修されたと伝わり、城内の庭園に用いた石の残りを使ったとする説がある。遠州流と紹介する解説も見られるが、市の公式案内は様式の系統には触れていない。公園の名の通りモミジが多く、色づきは11月前半が目安となる。
昭和54年(1979年)、市は庭園に茶室「宝紅庵」を建てた。設計は数寄屋建築の研究と実作で知られた中村昌生。公共が持つ茶室としては全国に先駆けたものである。名は宝幢寺の「宝」と紅葉の「紅」から取られた。小間は4畳半に1畳を加えた構成、広間は8畳半、これに椅子で座る立礼席が併設される。
昭和60年(1985年)からは、この宝紅庵を舞台に鈍翁茶会が続いている。実業家で茶人の益田鈍翁が遺愛した蹲踞や灯籠が寄贈されたことを機に始まり、地元の茶道18流派が流派の別を越えて協力する体制で運営されてきた。開催はさくらんぼの実る6月下旬。山形市は、京都の光悦会、東京の大師会と並ぶ大寄せの茶会として紹介している。令和8年度で第42回を数える。
訪ねる前に ― 見学と呈茶
利用時間は午前8時から午後10時まで。見学の場合は午後4時30分までに入荘する必要があり、窓口の受付は午後5時までである。休館日は月曜日と年末年始(12月29日から1月3日)で、このほか年度ごとに休館日が設定される。
注意すべき点が一つある。清風荘は貸出施設であるため、利用状況によっては見学できない日がある。市は事前に清風荘事務室(023-622-3690)へ問い合わせるよう案内している。この一本の電話が、上段の間を見られるかどうかを分ける。
最も確実な方法は日釜である。山形茶道宝紅会が担当する立礼席(椅子席)の呈茶で、宝紅庵において午前10時から午後2時のあいだに席が設けられ、一服500円(菓子付き)。1回の茶席はおよそ10名。前日までの予約が必要で、申し込みは023-622-3692。作法や服装を問わない席として案内されている。このほか、どなたでも参加できる市民の茶会も年間を通じて開かれている。
部屋を借りる場合の使用料は、和室1室が8時から12時まで600円、12時から17時まで900円、17時から22時まで1,200円。茶室(小間・広間・立礼席)は一間あたり同じ時間区分で1,500円、2,200円、3,000円。冷暖房費は実費で別途、支払いは現金のみ。予約受付は利用月の2か月前の1日からである。
もみじ公園そのものは無料開放されているため、庭と外観だけなら手続きなしに眺められる。清風荘はJR山形駅の東、直線で2キロ弱、徒歩なら20分ほど。ベニちゃんバス東くるりんの「清風荘・もみじ公園口」から徒歩4分、山交バス県庁行きの「東原3丁目」から徒歩5分。コミュニティサイクル「ベニちゃり」のサイクルポートも置かれている。駐車場は施設南側に14台、東側に10台あるが、東側の道は幅が非常に狭い。
Q&A
- 清風荘(旧宝幢寺書院)は見学できますか。料金はかかりますか。
- 見学は無料で、利用時間は午前8時から午後10時まで、見学の入荘は午後4時30分までです。ただし貸出施設のため利用状況により見学できない日があります。事前に清風荘事務室(023-622-3690)へお問い合わせください。休館日は月曜日と年末年始です。
- 清風荘へのアクセス方法を教えてください。
- JR山形駅の東、2キロ弱のもみじ公園内にあり、徒歩なら約20分です。ベニちゃんバス東くるりん「清風荘・もみじ公園口」下車徒歩4分、山交バス県庁行き「東原3丁目」下車徒歩5分。駐車場は南側14台、東側10台です。
- 清風荘でお茶をいただくことはできますか。
- 併設の茶室「宝紅庵」で日釜が催されています。椅子に座る立礼席で、午前10時から午後2時のあいだ、一服500円(菓子付き)。前日までに023-622-3692へ予約が必要です。作法や服装を問わない席として案内されており、1席おおむね10名です。
- 清風荘の見どころはどこですか。
- 床を一段高くした上段の間です。掛物を掛ける床、違い棚、庭側へ張り出す付書院が揃い、文化庁は用材の吟味も含めて上質な書院造の遺構と評価しています。北側の池泉回遊式庭園に向けて開かれた開口部の取り方も見どころです。
- 清風荘ともみじ公園を訪ねるのに適した季節はいつですか。
- 公園名の通りモミジが多く、色づきは11月前半が目安です。もう一つの機会は6月下旬で、宝紅庵を舞台とする鈍翁茶会が開かれます。公園自体は無料で通年開放されています。
基本データ
| 名称 | 清風荘(旧宝幢寺書院)(せいふうそう/きゅうほうどうじしょいん) |
|---|---|
| 所在地 | 山形県山形市東原町2-16-7(もみじ公園内) |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 06-0039 |
| 指定年 | 平成13年(2001年)11月20日登録、同年12月4日告示(第31回登録) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、鉄板葺、建築面積290平方メートル。年代は文化庁データベースで江戸後期(1751年から1829年) |
| 所有者 | 山形市 |
| 公開状況 | 利用時間8時から22時、見学の入荘は16時30分まで。休館日は月曜日および12月29日から1月3日。見学無料だが利用状況により不可の場合あり、事前に023-622-3690へ問い合わせ。日釜は一服500円、10時から14時、前日までに023-622-3692へ予約 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「清風荘(旧宝幢寺書院)」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002503
- 文化遺産オンライン「清風荘(旧宝幢寺書院)」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/182413
- 清風荘(山形市公式ホームページ 施設案内)
- https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/shisetsu/bunkasports/1008032/1005881.html
- 日釜(ひがま。清風荘の椅子席の呈茶)(山形市)
- https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/bunkasports/geijyutsu/1006702/1005834.html
- 山形市の指定・登録文化財(山形市)
- https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/bunkasports/bunkazai/1006708/1005891.html
- もみじ公園(やまがたへの旅 山形県公式観光サイト)
- https://yamagatakanko.com/attractions/detail_1958.html
最終更新日: 2026.08.11