内日の谷に築かれた下関最初の水がめ

下関市水道局内日貯水池は、山口県下関市大字内日上(うついかみ)にある水道水源の貯水池群で、明治39年(1906年)に完成した内日第一貯水池と、昭和4年(1929年)に完成した内日第二貯水池からなる。両池の周りに残る取水塔2基・事務所1棟・溢水隧道入口1基の計4件が、平成10年(1998年)1月16日に登録有形文化財に登録された。

内日は「うつい」と読む。市街地から北へ入った山あいの農村で、下関市水道局内日貯水池の水はここから導水管で約12キロ南の高尾浄水場と日和山浄水場へ送られている。

バルトンの調査から給水開始まで

港町の下関は大きな川に恵まれず、飲み水と防火の水をどう確保するかが長く市政の課題だった。明治24年(1891年)、市は帝国大学で衛生工学を教えていたスコットランド人技師W.K.バルトンに調査を依頼し、同年12月からの調査で豊浦郡内日村一の瀬、現在の大字内日上が水源地に最もふさわしいと報告された。

すぐには着工できなかった。明治29年(1896年)に水道調査委員会が組織され、大阪市の水道工師長だった瀧川釼二がバルトンの報告書をもとに実施設計をまとめたが、財源の手当てがつかず、布設の認可が下りたのは明治34年(1901年)2月である。

工事は同年3月、内日貯水池の築造から始まった。明治39年(1906年)1月1日に市内の一部へ給水が始まり、3月に予定の工事がすべて終わる。市は、岡山市に続く全国9番目の近代水道だったとしている。第一貯水池の貯水量は100万立方メートルとされる。

大正期に入ると人口の増加と、鉄道・船舶への給水で水が足りなくなった。第3期拡張事業として既設の貯水池の上流に新しい貯水池を築くことになり、大正14年(1925年)11月に着工、昭和4年(1929年)2月に完成したのが内日第二貯水池である。貯水量は90万立方メートルとされ、同時に市内の日和山に浄水場が新設された。

4件の登録と、その並び

下関市水道局内日貯水池の4件は、高尾浄水場の4件、旧日和山浄水場事務所とあわせた9件の一括登録のうちの一部である。市は、下関市で初めての登録有形文化財であり、取水から配水までの一連の施設がまとめて登録されたのは全国でも初めてだったと説明している。文化庁のデータベースでは、4件とも登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

第一貯水池の側には、池の南端に明治39年(1906年)の煉瓦造の取水塔が立ち、道を挟んだ南側に同年の木造の事務所がある。上流の第二貯水池では、池の南寄りに昭和4年(1929年)の鉄筋コンクリート造の取水塔があり、そのさらに南に石造アーチの溢水隧道入口が口を開ける。

明治の煉瓦の塔と昭和のコンクリートの塔を見比べられるのがこの貯水池群の面白さで、文化庁の解説も2基の意匠を「好対照」と評している。

見学と行き方

下関市水道局内日貯水池は、いまも下関市の水源として稼働している施設である。市の文化財紹介ページが事前申し込みによる見学を案内しているのは水道資料室と高尾浄水場の施設だけで、内日の4件は対象に含まれていない。塔や隧道、事務所の内部には入れず、見学は貯水池のまわりから外観を眺める形になる。水源を守るため、立ち入りが制限された場所には入らないようにしたい。

内日上は下関の市街地から北へ入った山あいにある。公共交通の本数は多くないため、バスで向かう場合はサンデン交通の時刻表で行き帰りの便を確かめておくと安心である。第二貯水池は第一貯水池よりも上流にあり、2つの池は歩いてまわれる距離ではあるが、坂道を上ることになる。

施設についての問い合わせ先は、下関市上下水道局の総務課総務係(電話083-231-3121)である。市の案内では、ダムの貯水状況や水道資料室の見学についてもこの係が窓口になっている(2026年9月確認)。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「下関市水道局内日第一貯水池取水塔」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000480
文化庁 国指定文化財等データベース「下関市水道局内日貯水池事務所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000481
文化庁 国指定文化財等データベース「下関市水道局内日第二貯水池取水塔」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000486
文化庁 国指定文化財等データベース「下関市水道局内日第2貯水池溢水隧道入口」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000487
下関市「水道に関する登録有形文化財をご紹介します」
https://www.city.shimonoseki.lg.jp/site/water/5626.html
下関市「水道事業の沿革を紹介します」
https://www.city.shimonoseki.lg.jp/site/water/5621.html
下関市「上下水道局のお問合せ先一覧」
https://www.city.shimonoseki.lg.jp/site/water/5619.html
国土交通省「明治期に築造された施設(中国地方)下関市水道施設」(PDF)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/infratourism/assets/pdf/meiji/tyugoku030.pdf

最終更新日: 2026.09.27

基本情報

名称下関市水道局内日貯水池
所在地山口県下関市大字内日上
所有者下関市
指定登録有形文化財 4件
座標34.06455, 130.95325