俵島 ― 玄武岩の柱が積み上がる向津具半島先端の小島

山口県北部、向津具半島の先に油谷島がある。その南西の沖、わずか100メートルほど離れた海上に浮かぶのが俵島だ。高さは約30メートル、周囲は約500メートルの小さな島で、目を引くのはその成り立ちにある。島全体が玄武岩でできており、これはおよそ850万年前に噴き出した溶岩が冷え固まったものだ。

船の上から、あるいは油谷島の崖の上から眺めると、岩の柱がさまざまな向きを見せる。垣根のように直立するもの、斜めに傾くもの、横たわるもの、ゆるやかに湾曲するもの。赤みを帯びた灰色の岩肌には黒褐色の小さな斑晶が散り、自然の岩というより、波止場に積まれた荷のように見える。島の名はここに由来する。俵とは米などを入れた藁の包みのことで、積み重なった岩柱が、横に縦に積まれた米俵を思わせたのだという。

柱はどのようにできたのか

岩柱の正体は柱状節理である。厚い玄武岩の溶岩が冷えると体積が縮み、収縮する岩に割れ目が走る。条件が均一なところでは割れ目が多角形の網目になり、岩は冷却面に対してほぼ直角の長い柱に分かれていく。俵島の岩柱は幅およそ35〜45センチメートル、断面は四角形から六角形まである。

見どころは水面上の玄武岩だけではない。その下には、より古い第三紀の地層が砂岩・礫岩・泥板岩として横たわる。泥板岩と砂岩のあいだには厚さ約2メートルの石灰岩がはさまり、これはほぼすべてが石灰藻リソサムニウムの遺骸からできている。指定にあたっての調査は、この石灰岩について藻類化石の構造がきわめて明瞭で、ほかに比べられる露頭が少ないと記録している。

海もまた島を彫り続けてきた。割れ目に沿って打ち寄せる波が岩をくぼませ、いくつもの洞穴をうがった。波の高い日には日本海のうねりが岩壁に打ちつけ、調査記録はその光景を見ごたえのあるものと評している。

なぜ守られているのか

俵島は二つの指定を受けている。最初の指定は昭和2年(1927年)、内務省の告示によるもので、名勝と天然記念物の両方に挙げられた。昭和34年(1959年)には保護される範囲が一部広げられている。

二つの区分は、それぞれ異なる価値を指している。天然記念物としては、柱状節理の明瞭さ、岩と割れ目の組み立て方、そして玄武岩の下に眠る化石を含む石灰岩といった、地質学上の意味が評価された。名勝としては、どの面も柱に整えられた小島が移ろう湾の水を背に立つ、その眺めそのものが価値とされた。

島で見るべきもの

もっとも見ごたえがあるのは、少し高い位置からの眺めだ。岬の小さな灯台の西側に立ち、崖を見下ろすと、十数メートルの範囲にわたって割れ目の切り口が一度に現れる。四角形や六角形の小部屋がびっしりと並ぶさまは、蜂の巣を思わせる。

ここでは足を止めたい。柱は一様ではない。一本を目で追えば、溶岩が不均一に冷えた箇所で柱が曲がっているのがわかる。その隣には、ほとんど水平に横たわる柱がある。規則正しさと不揃いのあいだの揺れこそが、この島の性格そのものだ。写真より、しばらく立ち止まって眺めるほうが、その妙はよく分かる。

海上から見ると、島はまた違った顔を見せる。油谷湾に面した南側は一年の多くを通じて舟を寄せられるほど穏やかで、そこからは岩柱が海から直接そびえ立つように見える。

訪れるには

俵島は向津具半島の先端にあり、たどり着くにはそれなりの手間がかかる。JR山陰本線の人丸駅からは車で約30分。公共交通機関なら大浦方面へのバスがあり、そこからはかなりの距離を歩く。最後は道を外れ、畑のあいだの細い小道を下って浜へ出る。

浜からは飛び石が島へと続いている。干潮時の渡りは難しくないが、石の一部は崩れており、足元を濡らす覚悟がいる場合もある。満潮時には島は切り離される。もっとも、渡らなければ楽しめないわけではない。柱状節理は浜からもはっきり見え、岸から眺めるだけの人も多い。料金所も係員も設備もないため、飲み物と歩きやすい靴を用意しておくとよい。

半島をめぐる

向津具半島は、急がずに車を走らせたい場所だ。本土側へ4キロメートルほど戻ると楊貴妃の里がある。唐の時代に名を知られた楊貴妃がこの海岸に流れ着いたという地元の伝説にちなんだ一帯だ。近くの二尊院には釈迦如来と阿弥陀如来の坐像が伝わり、いずれも鎌倉時代の作で、重要文化財に指定されている。

同じ海岸をさらに進むと、元乃隅神社が朱色の鳥居の列を草の斜面から海へと下ろしている。その近く、海を見下ろす斜面には東後畑の棚田が広がり、初夏には水を張った田が夕暮れの空の色を映す。

Q&A

Q島へは歩いて渡れますか。
A干潮時には飛び石づたいに渡れます。ただし石の一部が途切れており、潮位によっては足元が濡れることもあります。満潮時には渡れません。柱状節理は島に渡らず岸からでも十分に観察できます。
Q訪れるのに適した時期はいつですか。
A海が穏やかで晴れた日が見やすく、渡るのにも安心です。昭和2年の調査記録でも、油谷湾側は一年を通じて舟を浮かべられる一方、玄海側は波の静かな日に限ると記されています。
Q入場料や設備はありますか。
A入場無料で、料金所も設備もありません。案内看板も整っていないため、飲み物と歩きやすい靴を用意してください。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR山陰本線の人丸駅から車で約30分です。バスの場合は大浦方面行きに乗り、下車後はかなり歩きます。最後は道を外れ、畑のあいだの細い道を下って浜へ出ます。
Qなぜ岩が六角形の柱になるのですか。
A厚い玄武岩の溶岩が冷えて収縮すると、規則的な割れ目が入り、多角形の柱に分かれます。俵島の岩柱は幅35〜45センチメートルで、断面は四角形から六角形です。

基本情報

名称俵島(たわらじま)
所在地山口県長門市油谷向津具下字俵島
指定区分国指定名勝及び天然記念物
指定年月日昭和2年(1927年)6月14日(内務省告示第352号)/昭和34年(1959年)5月29日 地域一部追加
規模高さ約30メートル、周囲約500メートル
地質玄武岩の柱状節理(約850万年前に噴出)
管理者長門市
アクセスJR山陰本線・人丸駅から車で約30分
公開見学自由(料金所・設備なし)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/2384
山口県の文化財(山口県)
https://bunkazai.pref.yamaguchi.lg.jp/sp/bunkazai/summary.asp?mid=30005
俵島(長門市公式ウェブサイト)
https://www.city.nagato.yamaguchi.jp/site/kanko/2214.html
俵島(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/俵島

最終更新日: 2026.05.23