二合目から下りてきた本殿
富士御室浅間神社本殿は、山梨県南都留郡富士河口湖町にある慶長17年(1612年)建立の神社本殿で、昭和60年(1985年)5月18日に国の重要文化財に指定された。神社自身は現在「冨士御室浅間神社」と表記する。
この建物は、その生涯の大半を今の場所で過ごしていない。もとは富士山吉田口登山道の二合目、標高およそ1700メートルに建ち、三世紀半にわたってそこにあった。昭和48年(1973年)に解体、翌49年5月に河口湖畔の里宮境内で復元工事が完工している。移築は保存のための措置だった。積雪と風、霧に晒される立地は修理を繰り返させ、昭和39年に富士スバルラインが開通すると旧登山道は荒廃した。
神社は二つの境内を保持している。二合目の旧境内は現在「奥宮」と呼ばれ、富士吉田市域のなかにある富士河口湖町の飛び地で、年に一度祭事が行われる。両境内は平成25年(2013年)6月、世界文化遺産「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として一体で登録された。
慶長十七年の木割
造営したのは鳥居成次(1570年から1631年)。徳川家の家臣で、当時この地方の領主だった。年紀は慶長17年、西暦1612年にあたる。棟札一枚が附として指定されており、建立年次が推定でなく確定として扱われるのはそのためである。
文化庁の記載による形式は、桁行正面一間・背面二間、梁間一間、一重、入母屋造、向拝一間、軒唐破風付、銅板葺。神社側の説明はこの銅板が檜皮葺の形を写したものとしており、遠目には檜皮の勾配に見える。
一間社の本殿は通例小ぶりに納まる。この本殿はそうではなく、評価文も「大型の一間社入母屋造」と明記する。木割が太く雄健で、全体の均整に破綻がない。彫刻は面を埋め尽くさず、要所に嵌め込まれる。内陣の扉廻りには透彫が入り、破風や棰木には金箔の飾金具が打たれ、背面両脇には彫刻を嵌めた脇障子が立つ。内部の彩色も当初のものをよく残すとされる。
指定理由には地理の要素が絡む。この密度の桃山建築は関東近辺に例が少なく、しかも建立年次が確実である。その二点が重なった。
向かい合う二つの社殿
大鳥居から参道に入ると、配置がそのまま説明になる。正面奥に里宮の社殿が構え、移築された桃山の本殿は左手に、富士山を遥拝できるよう北面して鎮座する。大鳥居と里宮を結んだ延長線の先に、富士山が望める。
社伝では、本宮は文武天皇3年(699年)に藤原義忠が二合目へ奉斎したとし、富士山中最古の浅間神社とする。一方、文化11年(1814年)成立の『甲斐国志』は9世紀初頭の勧請とし、社殿の造営を永正5年(1508年)まで遡らせる。二つの記述は資料上並存しており、どちらかが退けられた形跡はない。湖畔の里宮は天徳2年(958年)の建立と伝え、参拝と祭儀の便を図ったものとされる。
祭神は木花開耶姫命。武田家は三代にわたって当社を祈願所とし、社蔵の古文書には信玄が娘・黄梅院のために記した安産祈願文が含まれる。文正元年(1466年)から永禄6年(1563年)まで書き継がれた年代記『勝山記』も当社の所蔵で、諸本比較のうえで最善本と位置づけられている。
参道には杉の並木が続き、根元の張り出しに樹齢を思わせる木も混じる。境内は河口湖の南岸にほぼ接している。毎年4月29日には近くのシッコゴ公園で流鏑馬祭が行われ、神社は九百年以上続く行事と伝える。
参拝の実際
所在地は富士河口湖町勝山3951。富士急行線河口湖駅から車で約12分、中央自動車道河口湖インターチェンジからも約12分で、無料駐車場が60台分ある。バスなら河口湖駅から西湖周遊バス(グリーンライン)で15分ほど、「富士御室浅間神社」下車すぐ。
境内は開放されており、社殿を外から拝観するのに予約も料金も要らない。社務所の開所時間は9時から16時、御祈祷の受付は9時30分から15時30分。外祭などで閉所が早まる場合があるため、祈祷を希望するなら0555-83-2399へ事前連絡がよい。
撮影については神社が明確に定めている。社殿内での撮影は不可。社殿に背を向けて正面で撮ることも禁じられている。ほか参拝者の妨げになる場所での撮影も控えるよう求められている。境内での飲食は遠慮するよう案内があり、盲導犬・介助犬を除きペットを連れての参拝も控えるようにとされている。
湖畔遊歩道がすぐ近くを通り、シッコゴ公園から小海公園までおよそ1.6キロ。参拝と組み合わせやすい。二合目の奥宮は事情が異なり、吉田口登山道沿いの山中にあって徒歩でしか到達できず、残る拝殿は腐朽が進んでいる。
Q&A
- 富士御室浅間神社本殿は拝観できますか。料金はかかりますか。
- 境内は開放されており、本殿を外から拝観するのに料金はかかりません。内部の一般公開は行われていません。社務所の開所は9時から16時です。
- 富士御室浅間神社で写真撮影はできますか。
- 社殿内での撮影と、社殿に背を向けて正面で撮影することは禁止されています。参拝者の迷惑となる場所での撮影も控えるよう案内されています。
- 富士御室浅間神社へは河口湖駅からどう行けばよいですか。
- 車で約12分、または西湖周遊バス(グリーンライン)で15分ほど、「富士御室浅間神社」下車すぐです。無料駐車場が60台分あります。
- 富士御室浅間神社本殿はなぜ富士山から移されたのですか。
- 標高約1700メートルの二合目という気象条件では永久保存が難しく、富士スバルライン開通後に旧登山道が荒廃したためです。昭和48年から49年にかけて解体・移築されました。
- 富士御室浅間神社は富士山の世界文化遺産に含まれますか。
- 含まれます。二合目の本宮境内と河口湖畔の里宮境内が一体で、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産として平成25年6月に登録されました。
基本データ
| 名称 | 富士御室浅間神社本殿(神社の表記は冨士御室浅間神社) |
|---|---|
| 所在地 | 山梨県南都留郡富士河口湖町浅川(神社住所は同町勝山3951) |
| 指定区分 | 重要文化財(建造物)/近世以前・神社。世界文化遺産「富士山」構成資産 |
| 指定年 | 昭和60年(1985年)5月18日/指定番号 02168 |
| 員数 | 1棟(附 棟札1枚) |
| 寸法 | 桁行正面一間・背面二間、梁間一間、一重、入母屋造、向拝一間、軒唐破風付、銅板葺 |
| 所有者 | 富士御室浅間神社 |
| 公開状況 | 境内開放、外観の拝観は無料。社務所9時から16時、御祈祷受付9時30分から15時30分。社殿内撮影不可。電話0555-83-2399 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)富士御室浅間神社本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/905
- 冨士御室浅間神社 公式サイト 概要・アクセス
- https://www.fujiomurosengenjinja.com/overview-access
- 文化遺産オンライン 世界遺産構成資産 冨士御室浅間神社
- https://online.bunka.go.jp/special_content/component/117
- 富士の国やまなし観光ネット 冨士御室浅間神社
- https://www.yamanashi-kankou.jp/kankou/spot/p1_4350.html
- 富士河口湖町観光連盟 冨士御室浅間神社
- https://fujisan.ne.jp/sightseeing/1513/
最終更新日: 2026.08.11