日蓮が九年を過ごした山

身延山久遠寺は、山梨県南巨摩郡身延町身延にある日蓮宗の総本山で、文永11年(1274年)に日蓮聖人が身延山に入ったことに始まり、境内の祖師堂や三門、祖廟塔など27棟が平成30年(2018年)と令和2年(2020年)に国の登録有形文化財に登録された。山号を含めた正式な寺号は身延山妙法華院久遠寺で、一般には「身延山(みのぶさん)」の名でも呼ばれる。

寺の由緒によると、日蓮聖人はこの地を治めていた地頭・南部(波木井)実長の招きで、文永11年5月17日に身延山へ入った。同年6月17日から鷹取山のふもとの西谷に構えた草庵に住み、足かけ9年にわたって法華経の読誦と弟子の教育を続けた。弘安4年(1281年)には草庵を改めて本格的な堂宇を建て、自ら久遠寺と名づけたという。

翌弘安5年(1282年)、日蓮聖人は療養と両親の墓参のために山を下り、その途上の武蔵国池上(現在の東京都大田区)で亡くなった。「墓は身延の沢に」という遺言に従って遺骨は身延山に納められ、久遠寺は祖廟を守る祖山となった。

寺はその後、六老僧の一人日向とその門流に継がれた。文明7年(1475年)に第11世日朝が、狭く湿気の多い西谷から現在の本坊のある場所へ伽藍を移し、武田氏や徳川家の崇敬を受けて栄えた。宝永3年(1706年)には皇室の勅願所となっている。

総門から山頂まで、四つの区域

境内は総門の内側だけで約300万坪におよぶと寺は案内している。登録有形文化財27棟は、その広い山域のなかで大きく四つの区域に分かれて建つ。

一つ目は、門前町の手前に立つ総門の内側である。参道に沿って総門茶屋が、参道と直交する石段の上に発軫閣が建つ。発軫閣は元文4年(1739年)の堂で、27棟のなかでもっとも古い。

二つ目は、三門から始まる本坊域である。三門をくぐると、本堂へ向かって287段の石段「菩提梯」がまっすぐに延びる。寺の説明では、南無妙法蓮華経の7字になぞらえて7区画に分けてある。登り切った先の高台に祖師堂・御真骨堂とその拝殿・仏殿納牌堂が並び、東に大客殿・法喜堂・旧書院・新書院、南に大鐘楼と甘露門、本坊域の背後に本地堂が建つ。三門の北西には太子堂、中心伽藍の北側上方には莚師堂がある。

三つ目は、日蓮聖人の草庵があった西谷である。聖人の墓所である祖廟には祖廟塔・祖廟拝殿・水屋が建ち、その入口に常唱殿、西谷の高台に三昧堂と水行堂、瑞門が並ぶ。四つ目は標高1,153メートルの身延山頂で、日蓮聖人が故郷の両親をしのんだと伝わる奥之院思親閣の仁王門と鐘堂がある。

登録有形文化財27棟

身延山久遠寺の建造物は、平成30年(2018年)5月10日に19棟、令和2年(2020年)8月17日に8棟が国の登録有形文化財に登録された。最初の19棟は祖師堂及び御供所・御真骨堂拝殿・仏殿納牌堂・大客殿・法喜堂・旧書院・新書院・大鐘楼・時鐘楼・甘露門及び門番所・太子堂・三門・本地堂・祖廟塔・常唱殿・三昧堂・水行堂・瑞門・思親閣仁王門で、2回目の8棟は御真骨堂・祖師堂前香炉屋・祖廟拝殿・祖廟域水屋・莚師堂・奥之院思親閣鐘堂・発軫閣・総門茶屋である。

建てられた年代は、元文4年(1739年)の発軫閣から昭和33年(1958年)の常唱殿までおよそ220年にわたる。江戸時代のものは発軫閣のほか、文政5年(1823年)の三昧堂、嘉永5年(1852年)の本地堂、明治元年(1868年)の甘露門で、残りは明治以降の建物である。寺によれば明治8年(1875年)の大火で五重塔が焼失しており、祖師堂(明治14年・1881年)や大客殿(明治19年・1886年)など、明治前期の大規模な堂がその後に続く。昭和6年(1931年)の仏殿納牌堂、昭和17年(1942年)の祖廟塔と祖廟拝殿など、昭和の造営も厚い。

本堂(昭和60年・1985年の再建)や五重塔(平成21年・2009年の再建)は登録の対象に含まれていない。本堂の地階にある身延山宝物館は、身延文庫の収蔵品を展示している。

参拝時間と見学のきまり

境内の参拝に拝観料はかからない。寺の案内では、拝観と受付の時間は午前5時から午後4時20分までで、総受付は報恩閣にある。お勤めは朝が午前5時30分(本堂)、昼が正午と夕方が午後3時(いずれも仏殿)で、誰でも参列できる。祖師堂の大宮殿の扉を開いて日蓮聖人の像を拝むお開帳は予約なしで申し込め、所要約15分、一人2,000円である。

堂内には基本的に自由に入れるが、立ち入りできない場所や時間がある。堂内の写真撮影は原則として禁止で、屋外は自由に撮影できる。身延山宝物館は午前9時から午後4時まで(入館は午後3時30分まで)、木曜日休館で、拝観料は一般500円、中学生・小学生200円である。

境内の名物のしだれ桜は、寺によれば例年3月中旬ごろから咲き始める。日蓮聖人の祥月命日にあたる10月13日にはお会式が営まれ、前夜12日の万灯練り供養が知られる。

アクセス

鉄道ではJR身延線の身延駅が最寄りで、駅前から身延山行きの路線バスに乗り、終点の身延山(門前町)まで約12分である。門前町の商店街を抜けると三門に着く。三門から本堂へは菩提梯を登るか、迂回路の男坂・女坂を使う。車の場合は中部横断自動車道の身延山インターチェンジから約15分で、甘露門下の駐車場は無料、西谷のせいしん駐車場は有料である。久遠寺の境内は車で通り抜けられない。

せいしん駐車場から本堂の脇までは斜行エレベーターで上がれ、階段を使わずに本坊域へ入れる。祖廟(御廟所)へは、本堂から斜行エレベーターで下り、西谷参道を歩いて10分から15分ほどである。

奥之院思親閣へは、本堂の裏の久遠寺駅から身延山ロープウェイで山頂の奥之院駅まで片道約7分、徒歩なら登山道で約2時間かかる。ロープウェイの運賃は令和8年(2026年)4月1日の改定で大人往復1,700円、運行は午前9時から(上りの最終は午後4時)で、時期により変わる。所在地は山梨県南巨摩郡身延町身延3567、電話は0556-62-1011(代表)。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 身延山久遠寺祖師堂及び御供所
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012341
国指定文化財等データベース(文化庁)— 身延山久遠寺三門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012352
国指定文化財等データベース(文化庁)— 身延山久遠寺発軫閣
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013392
身延山久遠寺 公式サイト — 久遠寺の歴史
https://www.kuonji.jp/history/
身延山久遠寺 公式サイト — 境内案内
https://www.kuonji.jp/precincts/
身延山久遠寺 公式サイト — 御廟所
https://www.kuonji.jp/precincts/gobyosho/
身延山久遠寺 公式サイト — 奥之院思親閣・七面山敬慎院
https://www.kuonji.jp/annex/
身延山久遠寺 公式サイト — 宝物館
https://www.kuonji.jp/m-muse/
身延山久遠寺 公式サイト — よくある質問
https://www.kuonji.jp/faq/
身延山久遠寺 公式サイト — 交通案内
https://www.kuonji.jp/access/
身延山ロープウェイ — ご利用料金
https://www.minobusanropeway.co.jp/fee/
身延山ロープウェイ — アクセス
https://www.minobusanropeway.co.jp/access/

最終更新日: 2026.10.01

基本情報

名称身延山久遠寺
所在地山梨県南巨摩郡身延町身延3567
所有者宗教法人身延山久遠寺
指定登録有形文化財 27件
座標35.38030, 138.42430