師団司令部から大学本館へ

愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)は、愛知県豊橋市町畑町にある明治41年築の木造2階建の庁舎建築で、平成10年(1998年)1月16日に登録有形文化財(建造物)に登録された。竣工は明治41年(1908年)8月である。愛知大学豊橋キャンパスの構内に建ち、現在は愛知大学記念館として公開されている。

愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)という名が示すとおり、建設の目的は陸軍第15師団の司令部庁舎である。大正14年(1925年)の宇垣軍縮で師団そのものは廃止されたが、建物が空くことはなかった。騎兵第4旅団の司令部が入り、その後は陸軍教導学校本部、陸軍予備士官学校本部として使われている。

二度目の役割は昭和21年(1946年)に始まった。上海にあった東亜同文書院大学の学長だった本間喜一が、旧陸軍の施設を用いて愛知大学を創設する。以後この建物は平成8年(1996年)までの50年間、大学の本館だった。登録の翌年からは名称も「大学記念館」に改められ、展示施設として使われている。

登録の理由と、この建物の位置づけ

適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。文化庁の記録が指摘しているのは、見学者が素通りしがちな性質、つまりこの建物が意図して簡素につくられている点だ。外壁は下見板を貼るだけ、装飾はほとんど用いず、縦長の上下窓を等間隔に並べる。この均質さを標準化の傾向と読み、明治末期の陸軍による兵営建築の手法をよく示す建物として評価している。

登録番号は23-0009で、愛知県内では早い時期に登録された建造物のひとつにあたる。重要文化財の指定と違い、登録有形文化財の制度は現に使われている大規模な近代建築を想定しており、愛知大学旧本館はその趣旨によく合う物件だった。

簡素さの陰に隠れがちなもうひとつの価値が規模である。建築面積は1,859平方メートル。明治41年(1908年)にこれだけの木造建築を建てるのは相応の事業で、愛知大学は豊橋で最初の本格的な洋風建築物だったといわれる、と説明している。

南面に立って見るところ

玄関に入る前に、少し離れて全体を眺めたい。愛知大学旧本館の平面は角ばったコの字形で、東西方向に長い主翼があり、その両端から後方へ両翼が突き出る。かつては主翼中央部の背後と両翼の後方に木造平屋建の別棟が1棟ずつあり、渡り廊下で本庁舎とつながっていた。別棟が失われた今のほうが、コの字はかえって読み取りやすい。

玄関は南側正面の中央から前へ張り出す。入口の上部と玄関部分の上部の双方にペディメントが載り、この2つの三角形が外観のほぼ唯一の装飾になっている。外壁は白ペンキ塗のドイツ下見板張。屋根は桟瓦葺で、小屋組は木造トラスが受ける。煉瓦が姿を見せるのは外周の布基礎だけである。

次に、玄関の両脇と建物の隅を見てほしい。壁が厚くなって前へ出ている箇所がある。昭和57年(1982年)の補修工事で入れられたバットレスで、明治41年(1908年)の当初形式ではない。愛知大学旧本館はそれを隠さず、修理の履歴として外に出したままにしている。

内部では2階へ上がる階段が古い雰囲気をよく残す。上がりきった正面の部屋は、第15師団司令部時代の師団長室であり、戦後は学長室として使われた。1階は展示コーナーとなり、愛知大学とその源流にあたる東亜同文書院に関する資料が並ぶ。

見学の方法

入場は無料、予約も要らない。開館は月曜から金曜の10時から16時まで。土曜・日曜・祝日と、大学の創立記念日およびその他大学が定める休日は休館となる。団体で訪れる場合は事前に連絡してほしいとされており、連絡先は0532-47-4139である。

展示資料の一部には日本語・英語・中国語の音声ガイドが用意され、1階の事務室で無料で借りられる。館内の撮影可否については公式サイトに記載がないため、展示室で写真を撮りたい場合は事務室で確認するとよい。

愛知大学旧本館への行き方は分かりやすい。豊橋駅から隣接する新豊橋駅に移り、豊橋鉄道渥美線で約5分、愛知大学前駅で降りればキャンパスに隣接している。ただし現役の大学構内であることは忘れずに、通路と記念館の範囲で見学したい。

Q&A

Q愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)は見学できますか。開館時間と入場料は。
A見学できます。愛知大学記念館として公開されており、月曜から金曜の10時から16時まで、入場無料・予約不要でどなたでも入れます。土曜・日曜・祝日と大学が定める休日は休館です。団体の場合は0532-47-4139へ事前に連絡してください。
Q豊橋駅から愛知大学旧本館へはどう行きますか。
A豊橋駅に隣接する新豊橋駅で豊橋鉄道渥美線に乗り換え、約5分の愛知大学前駅で下車します。駅は愛知大学豊橋キャンパスに隣接しており、ホームから歩いてすぐです。
Q愛知大学旧本館は重要文化財ではなく登録有形文化財なのはなぜですか。
A指定と登録は別の制度だからです。登録は、築後およそ50年を経て現に使われている建造物を幅広く保護することを想定した制度です。この建物は平成10年(1998年)に、造形の規範となっているものという基準で登録されました。
Q愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)は大学になる前は何に使われていましたか。
A明治41年(1908年)に陸軍第15師団の司令部庁舎として建てられました。大正14年(1925年)の師団廃止後は騎兵第4旅団司令部、続いて陸軍教導学校本部と陸軍予備士官学校本部が置かれ、昭和21年(1946年)に愛知大学が引き継ぎました。
Q愛知大学旧本館では写真を撮れますか。
A外観は構内の通路から撮影できます。展示室内の撮影については大学が方針を公表していないため、1階の事務室で確認してください。学生や教職員が写り込まないよう配慮したいところです。

基本情報

名称愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)
所在地愛知県豊橋市町畑町1-1
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号23-0009
指定年平成10年(1998年)登録
員数1棟
寸法建築面積1,859平方メートル、木造2階建、瓦葺
所有者学校法人愛知大学
公開状況愛知大学記念館として公開。月曜から金曜の10:00から16:00、入場無料

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000435
愛知県教育委員会 文化財ナビ愛知「愛知大学旧本館(旧陸軍第15師団司令部庁舎)」
https://jmapps.ne.jp/aichi_bunkazai/det.html?data_id=1821
愛知大学記念館「記念館の歴史」
https://edu.aichi-u.ac.jp/toa/about.html
愛知大学記念館「ご利用案内」
https://edu.aichi-u.ac.jp/toa/guide.html

最終更新日: 2026.08.30