永住寺山門 名高い信州立川流が刻んだ総欅の門

愛知県新城市の曹洞宗寺院、永住寺。その南端を開くこの門は、多くの訪問者がまず目を留め、もっとも長く記憶にとどめる建物だろう。四脚門で、切妻造の屋根に格式ある本瓦を葺き、堅く貴ばれた欅の木で全体を造る。手がけたのは信州立川流。長野の諏訪地方を本拠とした宮大工の一門で、その彫刻によって中部一円に名をはせた。門の建立は寛政6年(1794年)である。

永住寺のほかの登録建造物が、機能する修行寺のなかでの位置づけによって価値づけられるのに対し、この門はその彫りの技そのものによって際立つ。登録は他より遅れて令和5年(2023年)、単独で、「再現することが容易でないもの」という基準のもとに行われた。近づいて眺めれば、その理由がわかる。

立川の彫り手の刻印

立川流は18世紀の後半、諏訪の大工であった立川和四郎富棟によって興された。江戸で修行を積み、郷里に戻って、ほかとは一線を画す華やかな造形で建てた人物である。一門は何より彫刻で知られる。梁や組物に深く立体的な彫りを施し、構造材を浮彫の彫刻に近いものへと変えてしまう。その手は、諏訪大社下社秋宮の幣拝殿のような代表作にも読み取れる。

永住寺では、その一門の特色が妻面の組物にあらわれている。挿肘木による斗組が独特の立体を組み上げ、虹梁の周囲には彫刻がめぐらされる。木材は単に継がれているのではなく、彫り起こされているのだ。三河の一地方寺院がこの諏訪の名工の仕事を備えていること自体が興味深く、一門の評判がいかに広く及んだかを示す一例でもある。

門を読む

くぐる前に、しばし足を止めて眺めたい。円柱は礎盤の上に立つ。控柱の間に虹梁を架け、貫でこれを棟持柱たる主柱に締め、軸組全体を一つの堅固なまとまりとして結び合わせる。上には二軒の繁垂木が密に並び、重い瓦屋根を支える。全体の印象は、重厚さと豊かさを同時に備えるというもの。堅牢でありながら華やかな門であり、土台から棟まで、すべてが欅である。

この地には、何世紀にもわたって門が立ってきた。17世紀には領主水野分長のもとで先代の門が建てられている。立川の彫刻をもつ今日の建物は寛政6年(1794年)に属し、南北に長い軸線にそって配された境内の、南の入口を画している。

登録の理由

門は令和5年(2023年)、登録有形文化財として国の登録簿に加えられた。登録基準は「再現することが容易でないもの」。登録制度は、国宝や重要文化財の指定よりも緩やかな保護の仕組みだが、ここで適用された基準は、ある特定のことを指し示している。すなわち、この門が、今日では容易には再び生み出せない水準の彫りの技を備えているということだ。一体として残る珍しい曹洞宗の伽藍の入口であると同時に、各地に伝わった立川流の仕事の一例として、この門はその慎ましい大きさには見合わぬ重みをもっている。

Q&A

Qこの門は誰が建てたのですか。
A手がけたのは信州立川流です。長野の諏訪地方を本拠とした宮大工の一門で、精緻な彫刻で名をはせました。現在の門は寛政6年(1794年)の建立です。
Q立川流の何が特別なのですか。
A立川和四郎富棟が興したこの一門は、梁や組物を彫刻に近い造形へと変える、深く立体的な彫りで知られました。その仕事は諏訪大社下社秋宮をはじめとする主要な建物にも見られます。
Q総欅造とはどういう意味ですか。
A門の全体が欅で造られているという意味です。欅は堅く木目の細かい木で、強さと美しさの両方が貴ばれます。全体に用いることで、重厚で木目の豊かな姿となり、立川の彫り手の深い彫刻にもよく合います。
Qなぜ他の建物と別に登録されたのですか。
A永住寺の建物の多くは平成31年(2019年)に登録されましたが、門はそれより遅れて令和5年(2023年)に、「再現することが容易でないもの」という基準のもとで加えられました。その傑出した彫りが認められたものです。
Q門は見学できますか。
A門は境内の南の入口に建ち、境内から眺めることができます。永住寺は新城市の中心部にあり、JR飯田線で向かえます。

基本情報

名称永住寺山門
所在地愛知県新城市字裏野3
指定区分登録有形文化財(建造物) 2023年2月27日登録
登録番号23-0586
年代寛政6年(1794年)
構造1棟 木造の四脚門、瓦葺切妻造、総欅造、間口3.5メートル
大工信州立川流
所有者宗教法人永住寺
公開状況活動中の寺院。境内南の入口で見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 永住寺山門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014487
新城市 永住寺本堂ほか6棟
https://www.city.shinshiro.lg.jp/kanko/minzokugeino/eijuji-hondo.html

最終更新日: 2026.06.24