旧本多家住宅主屋とは
旧本多家住宅主屋は、愛知県岡崎市欠町にある昭和初期の木造洋風住宅で、平成26年(2014年)に登録有形文化財(建造物)に登録された。木造2階建、瓦葺で、建築面積は305平方メートルある。岡崎市が所有し、旧本多忠次邸として一般に公開している。
建てられた場所は岡崎ではない。施主の本多忠次(1896年〜1999年)は、徳川四天王のひとり本多忠勝を始祖とする旧岡崎藩主本多家の子孫で、子爵家の次男として生まれた。学習院から東京帝国大学文科大学哲学科に進んだ忠次は、36歳のときに東京・世田谷の約7,100平方メートルの敷地を自ら選び、建築の基本設計まで自分で手がけている。施工にあたったのは白鳳社建築工務所で、完成までにおよそ1年を要した。
建築年については記録が分かれている。文化庁の国指定文化財等データベースは年代を昭和6年(1931年)とし、岡崎市は当初竣工年を昭和7年(1932年)としている。忠次はこの家に晩年まで住み続けた。取り壊しの話が出たのを受けて岡崎市が引き取り、2010年から2012年にかけて移築復原の工事が行われ、2012年に公開が始まった。
登録の理由と、この建物が持つ価値
旧本多家住宅主屋が満たした登録基準は「造形の規範となっているもの」である。同じ時期の住宅がどうつくられるべきだったかを示す見本として評価された、という意味になる。
文化庁の解説は、この住宅を洋風生活の浸透のなかで和室を調和よく取り入れた住宅の好例と位置づけている。外観はスパニッシュ様式でまとめられ、内部も洋間が主体である。それでいて2階には三室続きの和座敷が置かれている。洋館に和室を「付け足した」のではなく、接客の空間と家族の生活空間を区別する間取りのなかに和室が組み込まれた。岡崎市は、この間取りを、家族の団らんとプライバシーを重んじる現代の住宅へ向かう時代の先駆けと説明している。
移築復原の精度も、この建物の価値を支えている。岡崎市は復原にあたって使用したオリジナル部材の割合を、瓦78パーセント、タイル66パーセント、木材78パーセントと公表した。移された建物は往々にして材の入れ替わりが大きくなるが、旧本多家住宅主屋では元の材が主要な部分に残っている。登録は移築の2年後、平成26年(2014年)に行われ、岡崎市内では12件目の国登録有形文化財となった。
見どころ
屋根の色から入りたい。旧本多家住宅主屋は赤褐色のフランス瓦で葺かれ、外壁は色モルタル仕上げである。アーチや窓の枠にはスクラッチタイルが貼られており、近づくと表面に細かい縦の掻き傷が並んでいるのがわかる。全体はスパニッシュ様式だが、車寄せの尖りアーチだけはテューダー様式の要素で、様式がひとつに統一されていない点がこの家の設計者の判断を示している。
南面の構成も見ておきたい。1階の西側に車寄せをつけた玄関、南側の中央に三連アーチのアーケードテラス、その東端に2階まで届く半円形のボウ・ウィンドウが並ぶ。庭に向かって開く面に、性格の違う三つの装置が横一列に置かれている。
前庭には壁泉がある。吐水口はシャチのレリーフで、建物の妻飾りに置かれた獅子と向かい合う位置に造られている。建物と庭の装飾が視線で結ばれる仕掛けであり、立つ場所を変えると両者の関係が見えてくる。
室内では設備に注目したい。旧本多家住宅主屋の館内にはラジエターが各所に据えられ、廊下には消火栓がある。消火栓は当時の個人邸宅には珍しい設備である。照明器具や家具は施主の趣向で選ばれたもので、ステンドグラスやモザイクタイルが各室を彩る。2階の畳敷きの和座敷まで進むと、同じ建物のなかで空気が切り替わる。
見学方法とアクセス
旧本多家住宅主屋は旧本多忠次邸として公開されており、建物そのものが展示物になっている。開館時間は午前9時から午後5時まで、入館は午後4時30分までである。入館料は無料だが、企画展などの開催期間中は有料になる。休館日は月曜日で、月曜日が祝日や休日にあたる場合は翌日以降の最初の平日が休みになる。このほか1月1日から3日まで、12月29日から31日まで、および展示替えの期間は閉まっている。当時の家具やステンドグラスなどの調度品が常設で展示され、一部の部屋は貸展示室としても使われている。
公共交通機関を使う場合は、名鉄の東岡崎駅で降り、1番バスのりばから東公園口方面行きのバスに乗る。「東公園口」停留所で降りて徒歩3分である。車の場合は東名高速道路の岡崎インターチェンジから約5分、距離にして1キロメートルほどになる。ただし旧本多家住宅主屋に専用駐車場はなく、隣接する東公園の駐車場を使うことになる。南北の駐車場を合わせて約400台分あるが、土日や公園の催しの日は混み合う。
開館日や料金は変わることがある。訪問前に岡崎市の公式サイトで最新の案内を確認しておきたい。
Q&A
- 旧本多家住宅主屋は見学できますか。開館時間と入館料は。
- 旧本多忠次邸として一般公開されています。開館時間は午前9時から午後5時までで、入館は午後4時30分までです。入館料は無料ですが、企画展などの開催期間中は有料になります。
- 旧本多家住宅主屋の休館日はいつですか。
- 月曜日が休館です。月曜日が祝日や休日にあたる場合は、翌日以降の最初の平日が休館になります。ほかに1月1日から3日まで、12月29日から31日まで、および展示替えの期間も閉まっています。
- 旧本多家住宅主屋へのアクセスは。駐車場はありますか。
- 名鉄東岡崎駅の1番バスのりばから東公園口方面行きに乗り、「東公園口」下車、徒歩3分です。車では東名高速道路の岡崎インターチェンジから約5分です。専用駐車場はなく、隣接する東公園の駐車場(南北合わせて約400台)を利用します。
- 旧本多家住宅主屋はどこに建てられ、いつ岡崎市へ移されたのですか。
- もとは東京・世田谷に建てられた住宅です。文化庁のデータベースは年代を昭和6年(1931年)、岡崎市は当初竣工年を昭和7年(1932年)としています。岡崎市が2010年から2012年にかけて移築復原し、2012年に公開が始まりました。
- 旧本多家住宅主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか。
- 登録基準のうち「造形の規範となっているもの」に該当すると判断されたためです。スパニッシュ様式を基調にテューダー様式を加味した洋風住宅でありながら、2階に三室続きの和座敷を持ち、洋風生活の浸透のなかで和室を取り入れた住宅の好例とされています。平成26年(2014年)に登録されました。
基本情報
| 名称 | 旧本多家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県岡崎市欠町字足延40-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2014年登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積305平方メートル |
| 所有者 | 岡崎市 |
| 公開状況 | 一般公開、入館無料(企画展等の開催期間は有料) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 旧本多家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010166
- 旧本多忠次邸施設概要(岡崎市)
- https://www.city.okazaki.lg.jp/bunka/bunka_shisetsu/1004817/1004841/1004843.html
- 旧本多忠次邸について(岡崎市)
- https://www.city.okazaki.lg.jp/bunka/bunka_shisetsu/1004817/1004841/1004842.html
最終更新日: 2026.09.01