東海道に残る一里塚
愛知県岡崎市大平町、旧東海道のかたわらに、ひし形をした低い塚が一つ残っている。大平一里塚である。一里塚は、慶長9年(1604年)に江戸幕府が街道を整えた際、江戸日本橋を起点として一里(約4キロメートル)ごとに築かせた道標で、塚の上には主に榎を植え、旅人の目印とした。大平一里塚は、日本橋から数えて80里目にあたる。
東海道の一里塚づくりには永井白元と本多光重が奉行として当たり、実際の築造は公領では代官、私領では領主に命じられた。大平では、近くの西大平を領していた本多重次の子、成重が築いたとされる。重次は徳川家康に仕えた剛直な家臣で、「鬼作左」の異名で知られる。塚は岡崎宿と藤川宿のあいだに位置する。
史跡に指定された理由
岡崎にはかつて、本宿・藤川・矢作・大平の4か所に一里塚があった。道路の改修や開発が進むなかで他は失われ、20世紀の初めには大平の塚だけが街道の両側に残っていた。さらに昭和3年(1928年)の道路改修で片側の塚が壊され、現在は1基のみとなっている。この1基が、昭和12年(1937年)12月21日、交通・経済活動に関わる遺跡として国の史跡に指定された。
価値はこの塚が示すものにある。江戸の街道網は、人や物資、公用の通信、そして大名行列を運ぶ動脈であった。一里塚はその実用を支える基盤で、旅人に道のりを知らせ、人足や馬の駄賃の目安ともなった。鉄道の開通や道路の拡幅を経て、こうした土盛りの道標はほとんど姿を消した。大平一里塚は岡崎で唯一現存する一里塚であり、東海道全体を見ても数少ない遺構の一つである。
見どころ
塚の高さは約2.4メートル、底部はおよそ7.6メートルと8.5メートルのひし形をなす。頂には榎が生えており、これは当時の定めに沿うものだが、創建時の木ではない。かつては樹齢350年とされる榎が塚を覆い、東海道の一里塚らしい姿をかたちづくっていたが、昭和28年(1953年)の台風で倒れた。今ある木はその後に植えられた2代目で、よく育っている。
足もとにも目を向けたい。昭和45年(1970年)、荒れていた塚のまわりに高さ約1メートルの石垣がめぐらされ、鎖で囲まれ、内側には玉石が敷かれた。風雨で崩れかけていた塚の形は、この整備によって保たれている。
塚は道標のほかにも役目を負っていた。前に石垣を積んで柵をめぐらし、高札を立てることがあったため、高札場と呼ばれた。また参勤交代の時期には、大名行列が通るたびに藩が使者をここへ差し向け、礼をとらせたことから、御使者場とも呼ばれた。
周辺の見どころとアクセス
岡崎は徳川家康の生誕地である。中心部の公園に再建された岡崎城を核に、その生涯にちなむ史跡や博物館、散策路が広がる。東へ向かえば、旧東海道の宿場町である藤川には松並木や古い家並みが残り、この塚が測っていた街道のありさまをしのばせる。
大平の一帯には固有の歴史もある。西大平の地は、のちに「大岡裁き」で知られる大岡忠相の家が藩主を務めた土地である。塚へは、名鉄東岡崎駅から大平方面行きの名鉄バスに乗り、「大平西町」で降りる。所要およそ20分で、停留所からすぐ南にある。
Q&A
- 一里塚とは何ですか。
- 江戸時代の街道に築かれた土盛りの道標です。慶長9年(1604年)以降、幕府が江戸日本橋を起点に一里(約4キロメートル)ごとに築き、頂に木を植えて道のりの目印とし、旅人に木陰も与えました。
- 江戸からどのくらいの距離ですか。
- 日本橋から80里目で、旧街道沿いに約320キロメートルの地点にあたります。塚は岡崎宿と藤川宿のあいだに位置しています。
- 頂の榎は当時のものですか。
- いいえ。初代の木は樹齢約350年とされましたが、昭和28年(1953年)の台風で倒れました。今ある榎はその後に植えられた2代目です。
- 自由に見学できますか。
- 道沿いに公開されており、料金や決まった開館時間はありません。塚は高さ約1メートルの石垣と鎖で囲まれているため、外側から眺める形になります。
- アクセスを教えてください。
- 名鉄東岡崎駅から大平方面行きの名鉄バスに乗り、「大平西町」で下車します。所要約20分で、塚は停留所のすぐ南にあります。
基本情報
| 名称 | 大平一里塚(おおひらいちりづか) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県岡崎市大平町 |
| 指定区分 | 国指定史跡 |
| 指定年月日 | 昭和12年(1937年)12月21日 |
| 種別 | 東海道の一里塚(日本橋から80里目) |
| 由来 | 慶長9年(1604年)頃の築造。本多成重が築いたとされる |
| 規模 | 高さ約2.4メートル、底部は約7.6メートル×8.5メートルのひし形 |
| 樹木 | 2代目の榎(初代は1953年の台風で倒木) |
| アクセス | 名鉄東岡崎駅から名鉄バス「大平西町」下車、約20分 |
| 公開 | 道沿いに常時公開、料金なし |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 大平一里塚
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/1434
- 岡崎市公式ホームページ 国指定:史跡 大平一里塚
- https://www.city.okazaki.lg.jp/bunka/torikumi_bunka/1004568/1004592/1004726/1004729.html
- 岡崎おでかけナビ(岡崎市観光協会) 大平一里塚
- https://okazaki-kanko.jp/point/459
- 西三河ぐるっとナビ 大平一里塚
- https://www.nishimikawanavi.jp/spots/detail/472/
最終更新日: 2026.06.14