六所神社:徳川家康公の産土神が守る極彩色の社殿群
愛知県岡崎市明大寺町に鎮座する六所神社は、徳川家康公の産土神(うぶすながみ)として江戸幕府から格別の崇敬を受けた由緒ある神社です。三代将軍徳川家光公の命により寛永年間に造営された本殿・幣殿・拝殿・神供所、そしてやや遅れて建立された楼門の五棟が国の重要文化財に指定されており、金箔と極彩色に彩られた権現造の社殿は、日光東照宮にも通じる壮麗な美しさを今に伝えています。安産の神様としても広く信仰を集め、岡崎を訪れる際にはぜひ足を運びたい名社です。
悠久の歴史と由緒
六所神社の創建は、社伝によると第37代斎明天皇(在位655〜661年)の勅願により、奥州塩竃六所大明神を勧請し、神領の寄進を受けて創立されたと伝えられています。その後、桓武天皇(在位781〜806年)の時代には、坂上田村麻呂が東夷征伐に向かう折に祈願し、天皇に願い出て許可を得たことで再建され、「六所大明神」の勅額を賜ったとの言い伝えも残されています。
松平氏(のちの徳川氏)との深い縁は、松平氏の初代・松平親氏が加茂郡六所山(現在の豊田市)に奥州塩釜六所大明神を勧請したことに始まります。松平郷の六所神社は、鹽竈神社の六所宮より勧請を受けたもので、六柱の神を祀っていました。その後、家康公の祖父・松平清康が岡崎在城の頃にこの地へ遷座させたとされ、猿田彦命・塩土老翁命・事勝国勝長狭命の三神の分祀を受けました。
天文11年(1542年)、岡崎城にて竹千代君(のちの徳川家康公)がご誕生の折には、産土神としてご拝礼があったと伝えられています。これにより六所神社は「家康公の産土神」として江戸幕府の厚い保護を受けることとなり、楼門前の石段は五万石以上の大名だけが上がることを許されるという格式の高さを誇りました。
徳川将軍家の庇護と社殿造営
江戸幕府が開かれる前年の慶長7年(1602年)、六所神社は家康公からご朱印状と62石7斗を贈られ、慶長9年(1604年)には社殿を造営して神器の品々を下されました。
三代将軍家光公も、寛永11年(1634年)の上洛の折に岡崎城から遥拝し、名代として松平伊豆守を遣わして百石を加増しました。朱印状には「六所大明神は東照大権現降誕の地にある霊神なり、是を以て崇敬他と異なり」と記されており、家康公の誕生地に鎮座する霊神として特別な崇敬を受けていたことがうかがえます。
家光公はさらに寛永11年(1634年)から寛永13年(1636年)にかけて、御普請奉行として岡崎城主・本多忠利(本多伊勢守)を、そして神主大竹大膳久次とともに社殿と神供所の造営を命じました。幕府御大工である藤原(鈴木)長次が建造を手がけ、本殿・幣殿・拝殿が連結した華麗な彩色の権現造の社殿が完成しました。
重要文化財に指定された理由と価値
昭和10年(1935年)5月13日、本殿・幣殿・拝殿・神供所・楼門の五棟が国の重要文化財に指定されました。附(つけたり)として御神体を納める御厨子6基と社殿の棟札6枚も指定されています。
これらの建物は、幕府の命によって造営されただけに壮麗な造りで、彫刻・彩色には豪華な手法が取り入れられています。岡崎市内の伊賀八幡宮とともに、近世初めの神社建築を代表する遺構として高く評価されており、江戸幕府が徳川家ゆかりの聖地にどれほど心血を注いだかを物語る貴重な文化遺産です。
五棟の建造物の見どころ
本殿・幣殿・拝殿(権現造社殿)
寛永11〜13年(1634〜1636年)に建立された社殿の中核をなす三棟は、権現造と呼ばれる様式で一体的に連結されています。本殿は三間社流造で檜皮葺。拝殿は桁行五間・梁間三間の入母屋造で、正面に千鳥破風を付し、向拝一間は唐破風造となっています。屋根はいずれも檜皮葺です。金箔と極彩色で彩られた社殿は、まさに江戸初期の装飾建築の極致と評されています。
楼門
社殿よりやや遅れて貞享5年(1688年)に建立された三間一戸の楼門は、入母屋造・檜皮葺で、二軒の繁垂木による優美な軒を持ちます。和様と唐様の折衷による意匠が施され、鮮やかな朱塗りの外観は、石段を上がった参拝者の目に飛び込む印象的な存在です。かつて五万石以上の大名のみが上ることを許されたという石段の上に堂々とそびえ立つ姿は、徳川家の威光を今に伝えています。
神供所(しんくしょ)
神供所は、御祭神にお供えする神饌(しんせん)を調理・準備するための専用の建物で、社殿と同時期の寛永11〜13年に建立されました。こけら葺きの屋根を持つこの建物は、日本の神社建築において残存例が少なく、建築史的にも貴重な遺構です。同様の建物は近隣の伊賀八幡宮にも「御供所(ごくしょ)」として現存しています。
二度の大修復
六所神社の社殿群は、昭和48〜51年(1973〜1976年)に第一次の大修復工事が行われました。この修復では日光東照宮と同じ手法が用いられ、建立当時の美しい彩色が蘇りました。
さらに平成26〜29年(2014〜2017年)には3年にわたる平成の大修復が行われ、平成29年11月に竣功。社殿は再び建立当時の絢爛豪華な姿に蘇り、訪れる人々を圧倒する美しさを取り戻しました。
安産の神様と境内の見どころ
六所神社は、家康公の産土神であったことから「安産の神様」として広く信仰されています。安産祈願に訪れる方には、ストラップ型の御守りが授与されるなど、現在も多くの参拝者に親しまれています。
境内には、安産を象徴する「母子犬」の銅像、三晃大黒社に安置された大黒様の木像、そして公益財団法人徳川記念財団所蔵の家康公の手形(右手)を岡崎産の御影石に彫ったものなど、見どころが豊富です。宮城県から贈られた塩竃桜も植えられており、六所神社の故郷である塩竈との縁を今に伝えています。
また、参道には名鉄電車の踏切を渡って楼門前の石段まで続く約150メートルにわたる松並木があり、樹齢約350年の老松は、三代将軍家光公の時代に社殿改築に併せた参道整備の際に植えられたと伝えられています。
元旦限定で「宝船図」が授与されるほか、金運上昇のご利益があるとされる「宝袋」も人気を集めています。御朱印は9時から17時まで受け付けており、葵の御紋と手毬と桜をあしらったオリジナルの御朱印帳も好評です。
周辺情報とアクセス
六所神社は名鉄名古屋本線・東岡崎駅の南口から徒歩約2分という好立地にあり、岡崎観光の拠点としても最適です。
駅の北側には徳川家康公誕生の地として知られる岡崎城があり、2023年にリニューアルオープンした歴史博物館で三河武士の歴史を学ぶことができます。同じく市内には、六所神社と並ぶ権現造の重要文化財建造物を有する伊賀八幡宮もあり、あわせての参拝がおすすめです。
周辺のグルメスポットとしては、岡崎名物の八丁味噌を使った料理を楽しめる飲食店のほか、和菓子の「ますだ屋本店」や「和泉屋明大寺店」、洋食の「オーマイキッチン こも」なども近くにあり、参拝後の食事やお土産探しにも事欠きません。
Q&A
- 六所神社の重要文化財はどの建物ですか?
- 本殿・幣殿・拝殿・神供所・楼門の五棟が国の重要文化財に指定されています。附(つけたり)として御厨子6基と棟札6枚も指定対象に含まれています。昭和10年(1935年)5月13日に指定されました。
- 六所神社と徳川家康公の関わりを教えてください。
- 六所神社は徳川家康公の産土神(うぶすながみ)です。天文11年(1542年)に竹千代君(のちの家康公)が岡崎城で誕生した際に産土神として拝礼されました。その後、江戸幕府から特別な崇敬と保護を受け、三代将軍家光公の命により現在の壮麗な社殿が造営されました。
- 六所神社へのアクセス方法は?
- 名鉄名古屋本線・東岡崎駅の南口から徒歩約2分です。名古屋方面からは名鉄本線の特急・急行で約30分で東岡崎駅に到着します。駐車場は約60台分が用意されています。
- どのようなご利益がありますか?
- 家康公の産土神であったことから、安産・子授けの神様として広く信仰されています。また、金運上昇や開運のパワースポットとしても知られ、元旦限定の「宝船図」や「宝袋」などの授与品も人気です。
- 御朱印はいただけますか?
- はい、社務所にて9時から17時まで御朱印を受け付けています。葵の御紋・手毬・桜をあしらったオリジナルの御朱印帳も授与されています。安産祈祷を受けた方には、ストラップ型の御守りもいただけます。
基本情報
| 名称 | 六所神社(ろくしょじんじゃ) |
|---|---|
| 文化財指定 | 国指定重要文化財(昭和10年5月13日指定):本殿・幣殿・拝殿・神供所・楼門/附:厨子6基・棟札6枚 |
| 建築様式 | 権現造(本殿・幣殿・拝殿連結)/本殿:三間社流造、檜皮葺/拝殿:入母屋造、正面千鳥破風付、向拝一間唐破風造、檜皮葺/楼門:三間一戸、入母屋造、檜皮葺 |
| 建立年 | 本殿・幣殿・拝殿・神供所:寛永11〜13年(1634〜1636年)/楼門:貞享5年(1688年) |
| 造営者 | 三代将軍徳川家光の命により、御普請奉行・本多忠利(岡崎城主)、幕府御大工・藤原(鈴木)長次が建造 |
| 御祭神 | 猿田彦命、塩土老翁命(安産の神)、事勝国勝長狭命 ほか計15柱 |
| 所在地 | 〒444-0864 愛知県岡崎市明大寺町耳取44 |
| アクセス | 名鉄名古屋本線・東岡崎駅南口より徒歩約2分 |
| 駐車場 | 約60台 |
| 電話番号 | 0564-51-2930 |
| 所有者 | 六所神社 |
参考文献
- 国指定:建造物 六所神社本殿、幣殿、拝殿、神供所、楼門(附:厨子、棟札) — 岡崎市
- https://www.city.okazaki.lg.jp/1300/1304/1332/p021517.html
- 六所神社 (岡崎市) — Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E6%89%80%E7%A5%9E%E7%A4%BE_(%E5%B2%A1%E5%B4%8E%E5%B8%82)
- 六所神社 — 岡崎おでかけナビ(岡崎市観光協会公式サイト)
- https://okazaki-kanko.jp/point/494
- 第一番札所 六所神社 — おかまいり(岡崎市観光協会)
- https://okazaki-kanko.jp/feature/okamairi-12sha36zizo/12sha-rokusho
- 六所神社 本殿、幣殿、拝殿 — 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144908
- 六所神社 — 愛知県の観光サイト Aichi Now
- https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/1966/
最終更新日: 2026.04.04
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