いまも生徒が通る、昭和初期の石門

愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)は、愛知県碧南市向陽町の校地南面に建つ昭和初期の花崗岩製の門柱で、平成29年(2017年)6月28日に登録有形文化財(建造物)に登録された。建設は昭和4年(1929年)頃とされる。文化財でありながら、毎朝ここを生徒が通り抜けていく。

学校が開いたのは大正15年(1926年)。四ヶ町村組合が設立した「碧南国民学校」がその始まりである。この校名には少し説明がいる。昭和16年(1941年)の国民学校令によって全国の小学校が国民学校と呼ばれるようになるが、こちらはそれより15年早く、しかも小学校ではない中等程度の学校として、開校時からこの名を用いていた。

現在地に新校舎ができたのは昭和2年(1927年)で、門柱はその前後、昭和2年から4年(1927年から1929年)にかけて据えられた。文化庁の記録は年代を昭和4年頃、改修を昭和37年(1962年)頃とする。以後、校名は四度変わったが、門柱は据えられた場所に立ち続けている。

門柱2本が登録された理由

適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。門は学校のうちで町に向いている部分であり、愛知県立碧南高等学校正門門柱は碧南のこの一角をおよそ1世紀にわたって画してきた。

登録は単独ではなかった。平成29年(2017年)6月28日、県内の県立高校13校の門柱が一括して登録され、愛知県教育委員会はこれを門柱の一括登録として全国初と説明している。前提となった調査は平成27年度(2015年度)に行われ、県立高校24校に28件の歴史的建造物が確認された。

その13件のなかで、愛知県立碧南高等学校正門門柱はやや性格が異なる。同じ日に登録された門柱には、大正期の愛知県の標準設計にもとづき、石積みに似せてつくられた鉄筋コンクリート造のものが少なくない。碧南の門柱は、石そのものを刻んだ花崗岩製である。

石を読む

愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)の高さは2.75メートル、間口は6.4メートル。表面はこぶ出し仕上げで、各面の四隅だけを平滑に整え、中央部分は意図して凹凸を残し、そのほかは荒のみ仕上げで応じている。時刻によって見え方が変わる。正午の平坦な光では素っ気なく見え、低い横からの光が当たると面全体が陰影に割れる。

いま建っているのは、もとの門の一部分にすぎない。学校が保管する昭和4年(1929年)3月撮影の第1回卒業写真には、主門柱2本と脇門柱2本、計4本からなる門が写る。当時の主門柱には柱身部の上に柱頭部があり、さらに笠石と球形の照明器具が載っていた。笠石は岩津高等学校の門柱に残るものとよく似た形だったという。

昭和37年(1962年)頃の改修が門の姿を変えた。主門柱は外側へ動かされて有効開口が広がり、柱頭部は撤去されて柱身部だけが据え直された。いまの門柱が上に何も載らない一本ものの石柱に見えるのはこのためである。脇門柱はこのとき取り払われた。校地を東へ歩いて東門の門柱を見ると、表面加工の状況と石に残る痕跡から、旧正門の脇門柱を上下逆にして再利用したものと考えられる、と愛知県の登録資料は述べている。登録の範囲には、主門柱から東西へ延びる土塁留も含まれる。

見学の方法

ここは博物館ではなく現役の高等学校である。その一点が愛知県立碧南高等学校正門門柱の見学のかたちを決める。門は校地南面で公道に面しているため、門柱の外観は敷地の外からいつでも見ることができ、料金も開門時間もない。校地内に立ち入るには学校の許可が必要で、問い合わせは0566-41-2564となる。

脇門柱の転用と考えられている東門の門柱は校地の内側にあるので、近くで見るにはやはり許可がいる。平日の朝と夕方は生徒の登下校と重なるため、訪ねる時間帯としては避けたい。写真に収めるのは石であって、生徒ではない。

鉄道では名鉄三河線の碧南中央駅から徒歩8分。学校は所要時間を刈谷駅から碧南中央駅まで28分、知立から35分と案内している。

Q&A

Q愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)は見学できますか。料金はかかりますか。
A校地南面の公道に面しているため、敷地の外からであればいつでも無料で見学できます。校地内に入る場合は学校の許可が必要で、問い合わせは0566-41-2564です。授業や部活動の妨げにならない範囲でご覧ください。
Q愛知県立碧南高等学校正門門柱へは電車でどう行きますか。
A名鉄三河線の碧南中央駅で下車し、徒歩8分です。学校の案内によれば、碧南中央駅までは刈谷駅から28分、知立から35分かかります。
Q愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)は建てられた当時どんな姿でしたか。
Aいまより2本多い、4本の門でした。昭和4年(1929年)3月撮影の第1回卒業写真には、主門柱2本と脇門柱2本が写り、主門柱の上には笠石と球形の照明器具が載っています。昭和37年(1962年)頃の改修で開口を広げ、柱頭部と照明が失われ、脇門柱も撤去されました。
Q愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)はなぜ平成29年に登録されたのですか。
A県立高校13校の門柱が平成29年(2017年)6月28日に一括して登録され、そのうちの1件だからです。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。愛知県教育委員会は、門柱をまとめて登録した例として全国初と説明しています。
Q愛知県立碧南高等学校正門門柱は写真を撮ってもよいですか。
A公道側からの撮影であれば問題ありません。朝夕の低い光のほうが、こぶ出し仕上げの凹凸がよく出ます。生徒が写り込まないよう配慮し、登下校の時間に門前をふさがないようにしてください。

基本情報

名称愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)
所在地愛知県碧南市向陽町4丁目12
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号23-0488
指定年平成29年(2017年)登録
員数1基
寸法石造、間口6.4メートル、門柱の高さ2.75メートル、東西土塁留付
所有者愛知県
公開状況現役の高等学校の正門。校地南面の公道から無料で外観を見学可能。校地内への立ち入りは学校の許可が必要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「愛知県立碧南高等学校正門門柱(旧愛知県碧南国民学校正門)」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011718
愛知県「登録有形文化財(建造物)の登録についてお知らせします」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/bunkazai/tourokubunnkazaikenzoubutsu.html
愛知県「文化財建造物の登録理由及びその概要 資料4」(PDF)
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/233619.pdf
愛知県「県立高等学校の歴史的建造物について」
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/bunkazai/kenritsukokorekishirekikenzobutsu.html
愛知県立碧南高等学校「学校沿革」
https://hekinan-h.aichi-c.ed.jp/cms/page-31.html
愛知県立碧南高等学校「アクセス」
https://hekinan-h.aichi-c.ed.jp/cms/info/page-123.html

最終更新日: 2026.08.30