電波塔が重要文化財になるまで

名古屋テレビ塔は、愛知県名古屋市中区錦の久屋大通公園に建つ集約電波鉄塔で、昭和29年(1954年)に竣工し、令和4年(2022年)12月12日に国の重要文化財に指定された。現在はネーミングライツにより中部電力ミライタワーの名称で運営されている。

タワーとしては全国で初めての指定である。重要文化財建造物の名簿は寺社と城郭が大半を占め、そこに明治期の煉瓦造庁舎などが加わる。テレビの電波を送るために組まれた鉄骨の塔は明らかに異質で、文化庁は指定にあたって理由を立てる必要があった。

示された指定基準は二つ。「技術的に優秀なもの」と「歴史的価値の高いもの」である。両方とも根拠は同じ場所にある。複数の放送局の送信アンテナを一本の塔にまとめる、わが国初のテレビ放送用集約電波鉄塔だったという点だ。

指定を支えた三つの論点

集約という発想

昭和20年代後半、日本のテレビ放送は始まったばかりで、各局がそれぞれ自前の鉄塔を建てるものと考えられていた。名古屋は別の道を選ぶ。空襲の焼け跡に幅100メートルの久屋大通を通す都市計画が進んでおり、その軸線上に一本の塔を建てれば全局の送信を担い、同時に街の目印にもなる。

着工は昭和28年(1953年)。のちにNHK名古屋放送局と民放三局がこの一本からアナログVHFの電波を送り出した。文化庁の解説は、これを日本初の集約電波鉄塔と位置づけている。保存の対象は塔という物体だけでなく、その構想でもある。

内藤多仲と風の計算

構造設計を担ったのは早稲田大学教授の内藤多仲である。名古屋テレビ塔は、内藤が最初に手がけたテレビ塔だった。大阪の通天閣が昭和31年(1956年)、さっぽろテレビ塔が昭和32年(1957年)、東京タワーが昭和33年(1958年)と続く。塔の下に立つとき、その系譜の起点に立っていることになる。

内藤にとっての課題は風だった。国内に前例のない高さの自立式鉄塔には、拠るべき設計手法がない。当時一流の技術陣を集め、この構造物のために耐風の実験と計算が重ねられた。仕上がったのは鉄骨造および鉄骨鉄筋コンクリート造、高さ178.7メートル、脚間35.0メートルの躯体である。一般には180メートルと紹介されることが多いが、文化庁の登録値は178.7メートルとなっている。

工事そのものは別種の労働だった。建設機材は満足に揃わず、基礎の土掘りはツルハシとスコップ、鉄骨は人力で上げていったと伝わる。

アンテナも指定の一部

指定には附として旧バットウィング・アンテナ2面が含まれる。実際に電波を送っていた送信素子そのもので、この構造物が何のために建てられたのかを示す証拠として残された。平成23年(2011年)にアナログ放送が終了し、塔は送信施設としての役目を終えている。アンテナはいま設備ではなく資料として存在している。

訪ねるときに

指定文化財の下に免震装置を入れる

平成31年(2019年)1月から令和2年(2020年)9月まで、塔は開業以来初となる全体改修のため休業した。築65年を数える建ちのままの構造物の足元に、世界初とされる工法で免震装置を組み込む工事である。令和2年(2020年)9月18日、昭和29年当時の外観を変えずにグランドオープンした。

ここは立ち止まって考える価値のある部分だ。日本の建造物保存は、解体して元の部材で組み直す修理を基本としてきた。この塔で採られたのは、見えている躯体には手を入れず、その下で起きることを変えるという方法である。公共的な建物として使い続けるための選択だった。重要文化財の指定は、この改修の前ではなく二年後に行われている。

二層の展望フロア

地上90メートルの屋内展望台がスカイデッキ。天井と床に鏡を配し、万華鏡のように見える演出はミライ360と呼ばれる。晴れた日には木曽御嶽山や中央アルプスまで視野に入る。

ひとつ上、地上100メートルのスカイバルコニーは屋外である。風が当たり、植栽の庭がある。平成20年(2008年)11月に恋人の聖地のプレートが設置され、平成25年(2013年)11月には日本夜景遺産に認定された。

時間・料金・行き方

展望台の営業は午前10時から。平日と日曜は午後9時まで(最終入場午後8時40分)、土曜は午後9時40分まで(最終入場午後9時20分)。入場料は高校生以上1,300円、小中学生800円、未就学児無料。夜間にプロジェクションマッピングのイベントが行われる期間は大人1,800円となり、割引の適用がない。時間も料金もイベントによって変わるため、事前の確認をおすすめする。

3階までは入場無料である。つまりチケットを買わずに塔の真下まで入り、鉄骨の格子を見上げて帰ることもできる。休館は年2日程度のメンテナンスのみで、それ以外は通年営業。個人利用の撮影に制限はないが、機材を持ち込んでの撮影や取材は事前申請が必要とされている。

塔内にはザ・タワーホテル名古屋があり、運営側はタワー内に設けられた世界初のホテルと説明している。重要文化財に泊まるという選択肢はそう多くない。

アクセスは地下鉄東山線・名城線「栄」駅3番または4番出口から徒歩約3分。桜通線・名城線「久屋大通」駅なら南改札4B出口を上がってすぐである。塔が建つ久屋大通公園はレイヤードヒサヤオオドオリパークとして再整備されており、芝生や店舗を抜けて歩いて近づくかたちになる。

Q&A

Q名古屋テレビ塔はなぜ重要文化財に指定されたのですか。
A令和4年(2022年)12月12日に、「技術的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」の二つの基準で指定されました。複数局の送信を一本にまとめたわが国初のテレビ放送用集約電波鉄塔である点が評価されています。タワーとしては全国初の指定で、附として旧バットウィング・アンテナ2面が含まれます。
Q名古屋テレビ塔の展望台の料金と営業時間を教えてください。
A高校生以上1,300円、小中学生800円、未就学児無料です。営業は午前10時から、平日と日曜は午後9時まで、土曜は午後9時40分までで、最終入場は20分前。夜間イベント開催時は大人1,800円となります。3階までは無料で入れます。
Q名古屋テレビ塔はいまも電波を送信していますか。
A送信していません。平成23年(2011年)のアナログ放送終了により電波塔としての役目を終えています。現在は展望施設と飲食・物販・ホテルを備えた建物として使われており、残された旧バットウィング・アンテナが文化財指定の一部を構成しています。
Q名古屋テレビ塔の高さと設計者は。
A文化庁の登録値では高さ178.7メートル、脚間35.0メートルです(180メートルと紹介されることも多くあります)。構造設計は早稲田大学教授の内藤多仲。のちに通天閣、さっぽろテレビ塔、東京タワーを手がけました。
Q名古屋テレビ塔へは栄からどう行けばよいですか。
A地下鉄東山線・名城線「栄」駅の3番または4番出口から徒歩約3分です。桜通線・名城線「久屋大通」駅の南改札4B出口ならすぐ足元に出ます。地下街で迷った場合は一度地上に出ると分かりやすくなります。

基本情報

名称名古屋テレビ塔(なごやてれびとう)/通称 中部電力ミライタワー
所在地愛知県名古屋市中区錦3丁目46番地
指定区分重要文化財(建造物)/指定番号 02750。指定基準は「技術的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」
指定年令和4年(2022年)12月12日
員数1基(附:旧バットウィング・アンテナ2面)
寸法鉄骨造および鉄骨鉄筋コンクリート造、高さ178.7メートル、脚間35.0メートル、建屋・展望台・地上エレベーターシャフト付
所有者名古屋テレビ塔株式会社
公開状況展望台は午前10時から、平日・日曜は午後9時まで、土曜は午後9時40分まで(最終入場は20分前)。高校生以上1,300円、小中学生800円、未就学児無料。3階までは無料。年2日程度のメンテナンス休館を除き通年営業

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)/名古屋テレビ塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00005457
中部電力 MIRAI TOWER 公式サイト
https://www.nagoya-tv-tower.co.jp/
全日本タワー連盟/中部電力 MIRAI TOWER
https://www.japantowers.jp/nagoya_tv_tower/
名古屋観光情報 名古屋コンシェルジュ/中部電力 MIRAI TOWER
https://www.nagoya-info.jp/spot/detail/9/

最終更新日: 2026.08.29