日本最古の屋上観覧車が残る場所
名古屋の繁華街・栄の中心に位置する名古屋三越栄店の屋上に、ひっそりとたたずむ小さな観覧車があります。オリエンタルビル屋上観覧車は、1956年(昭和31年)に設置された、現存する屋上観覧車としては日本最古のものです。2007年(平成19年)に国の登録有形文化財に登録され、デパートの屋上が子どもたちの歓声に満ちていた昭和の時代を今に伝える、かけがえのない文化遺産として大切に保存されています。
戦後のデパート文化を映す鏡
この観覧車の歴史は、1954年(昭和29年)5月にオリエンタル中村百貨店が名古屋市中区栄の3階建てビルに開店したことに始まります。開業時に屋上に初代の観覧車が設置され、1956年(昭和31年)10月にビルが3階建てから7階建てに増築されたのに伴い、現在の2代目観覧車が屋上に新設されました。当時の名古屋市中心部には高層ビルが存在せず、観覧車からは愛知県庁舎まで見渡すことができたといいます。
高度経済成長期の日本では、百貨店の屋上遊園地は家族の憩いの場でした。オリエンタルビルの屋上には観覧車のほか、メリーゴーラウンドやロケットライドなどの遊具も設置され、休日には1日2,000人もの人が観覧車に乗るほどの賑わいを見せました。屋上にはソフトクリームやコーラの売店、犬・小鳥・金魚を扱うペットショップもあり、まさに子どもたちのワンダーランドでした。開業当初の乗車料金は1人80円で、入口と出口を別々にしなければならないほどの大人気でした。
文化財に登録された理由
オリエンタルビル屋上観覧車は、2007年(平成19年)7月31日に国の登録有形文化財に登録されました。日本国内に現存する最古の屋上観覧車であることが、その大きな理由です。
この観覧車は鉄骨造で、高さ12メートル、脚間6.2メートル。2基の三角錐状鉄骨架構の支柱の間に直径10メートルの鉄骨製円形ホイールを取り付け、ホイールの外周部に4人乗りのゴンドラ9個を吊り下げています。ゴンドラは赤・緑・黄の3色に塗り分けられています。製造元は、東京都北区にあった娯楽遊戯施設の専門メーカー・昭和鉄工株式会社です。約70年にわたり風雨に耐えながら原形をとどめている点でも、日本の近代娯楽産業の歴史を物語る貴重な遺構といえます。
見どころと魅力
直径わずか10メートルという小ぶりなサイズは、現代の巨大観覧車とは比べものになりません。しかし、大都市の百貨店の屋上にちょこんと鎮座するその姿には、昭和のデパート文化への深い郷愁が宿っています。子どもたちがにこにこと観覧車に乗り、それを親たちが嬉しそうに眺めていた時代の空気を、この小さな観覧車は静かに語り続けています。
赤・緑・黄のカラフルなゴンドラは、60年以上の歳月を経てなお良好な状態を保っています。観覧車のそばには、オリエンタル中村百貨店時代のマスコットだったカンガルー像が置かれています。これは日本グラフィックデザインの先駆者・河野鷹思氏がデザインしたもので、1962年(昭和37年)から1980年(昭和55年)の三越改称まで正面入口に設置されていた歴史あるオブジェです。
現在は安全上の理由から乗車はできませんが、三越の営業時間中であれば自由に見学・撮影が可能です。日曜日や祝日の正午頃および15時頃には、点検・保守のために観覧車を回転させることがあり、その動く姿を見られる貴重な機会となっています。
百貨店のシンボルから文化遺産へ
観覧車は1956年から2005年(平成17年)7月まで、約50年間にわたって営業を続けました。1周約4分というゆっくりとした回転で、何世代にもわたる名古屋の家族に愛されてきました。しかし、郊外にテーマパークや大型遊園地が開業するにつれ、屋上遊園地の来場者は次第に減少。1995年(平成7年)には月間利用者が約500人にまで落ち込み、晩年にはお客さんが来たらスイッチを入れるという状態でした。
2005年の営業終了後も、観覧車は撤去されることなく動態保存されてきました。これは、オリエンタルビル株式会社の創業者・平松さわ初代社長が屋上遊園地を造り、孫にあたる潤一郎現社長も幼少期からそこで遊んだ思い出があるためです。ビルの建て替え構想が持ち上がっている現在も、同社は観覧車を名古屋のシンボルとして新ビルに移設する方針を打ち出しており、この文化遺産の未来が注目されています。
周辺の見どころ
観覧車がある栄地区は、名古屋を代表するショッピング・エンターテインメントエリアです。訪問前後にぜひ足を運びたいスポットをご紹介します。
- サンシャインサカエ&スカイボート:わずか150メートルほどの距離にある商業ビルの壁面に設置された直径40メートルの観覧車。最高地点は地上52メートルに達し、全面透明のゴンドラから栄の街並みを一望できます。レトロな屋上観覧車との対比も楽しめます。
- オアシス21:栄駅近くにある、ガラスの大屋根「水の宇宙船」が印象的な複合施設。ショップやレストランのほか、夜のライトアップは名古屋を代表する景観のひとつです。
- 中部電力 MIRAI TOWER(旧名古屋テレビ塔):1954年に完成した日本初の集約電波鉄塔で、同じく登録有形文化財。展望台からは名古屋の街を360度見渡せます。周辺の久屋大通公園の散策もおすすめです。
- 名古屋城:栄から北へ約2キロ。金のシャチホコで知られる名古屋のシンボル。復元された本丸御殿の見事な障壁画は必見です。
Q&A
- 観覧車に乗ることはできますか?
- 残念ながら、2005年7月の営業終了以降、安全上の理由から乗車はできません。ただし、三越の営業時間中(おおむね10:00〜20:00)は屋上で自由に見学・撮影が可能です。
- 観覧車が動いているところを見られますか?
- 点検・保守の目的で、日曜日や祝日の正午頃や15時頃に観覧車を回転させることがあります。ただし、スケジュールは変動する場合がありますので、事前に店舗にお問い合わせいただくことをおすすめします。
- 屋上へはどうやって行けますか?
- 観覧車は名古屋三越栄店の8階「オリエンタルビル屋上広場」にあります。店内のエレベーターまたはエスカレーターで8階まで上がり、屋上テラスに出てください。最上階までのエレベーターでは屋上階に止まらない場合がありますので、ご注意ください。
- 入場料はかかりますか?
- いいえ、見学は無料です。名古屋三越栄店の営業時間中に8階の屋上広場へお越しください。
- 最寄り駅はどこですか?
- 名古屋市営地下鉄東山線・名城線の栄駅が最寄りです。8番出口から徒歩約2分で名古屋三越栄店に到着します。
基本情報
| 名称 | オリエンタルビル屋上観覧車 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県名古屋市中区栄3-5-1(名古屋三越栄店 屋上) |
| 竣工年 | 1956年(昭和31年) |
| 構造 | 鉄骨造、高さ12m、ホイール直径約10m、4人乗りゴンドラ9基 |
| 製造 | 昭和鉄工株式会社(東京都北区) |
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物)(2007年7月31日登録) |
| 所有者 | オリエンタルビル株式会社 |
| アクセス | 名古屋市営地下鉄 栄駅 8番出口より徒歩約2分 |
| 見学時間 | 名古屋三越栄店の営業時間内(おおむね10:00〜20:00) |
| 料金 | 無料(見学のみ、乗車不可) |
参考文献
- 文化遺産オンライン — オリエンタルビル屋上観覧車
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/171072
- 国指定文化財等データベース — オリエンタルビル屋上観覧車
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005764
- Wikipedia — オリエンタルビル屋上観覧車
- https://ja.wikipedia.org/wiki/オリエンタルビル屋上観覧車
- 中日スポーツ — "観覧車王国"の愛知県…日本最古の屋上観覧車
- https://www.chunichi.co.jp/article/535641
- 三井広報委員会 — 名古屋三越栄店 屋上観覧車
- https://www.mitsuipr.com/sights/encyclopedia/KEI-020/
最終更新日: 2026.04.04