1領の羽織 ― 2004年に重要文化財
紫地葵紋付葵葉文様辻が花染羽織は、愛知県名古屋市東区徳川町1017の徳川美術館が保管する工芸品で、2004年(平成16年)6月8日に重要文化財に指定された。国宝ではなく、重要文化財としての指定である。所有は公益財団法人徳川黎明会である。
員数は1領である。赤絲威鎧や小桜韋威鎧と同じ数え方で、あちらは甲冑、本件は衣服になる。
当サイトの記録では所在都道府県が東京都、愛知県の二つとされる。文化遺産オンラインの記録は愛知県のみである。所有者の財団と保管する美術館が別の都道府県にあることによると読める。
時代の欄は桃山だが、年代の範囲は1601年から1700年である
時代の区分と年代の範囲が、重ならない。
種別の欄は工芸品、時代の欄は安土・桃山とされる。
ところが年代の欄は、桃山/1601-1700である。
1601年から1700年は江戸時代にあたる。時代の区分は桃山でありながら、年代の範囲は100年幅で江戸に及んでいる。
石谷家住宅では、主屋が昭和、三号・四号蔵が大正と時代の欄が棟ごとに分かれていた。鳴無神社では、時代の欄が江戸中期で解説が江戸初期の系統としていた。
本件は時代の欄と年代の範囲が一つの記録のなかでずれている。解説文は袖の丸みの仕立てについて、桃山時代の特徴をよく示している、とする。
対になる寸法が、そろって一致する
八つの数値のうち、二組が同じ値になっている。
寸法は身丈112.0センチメートル、裄58.0センチメートル、前幅36.5センチメートルと後幅36.5センチメートル、袖丈51.5センチメートル、袖幅22.0センチメートルと袖口22.0センチメートル、襟幅13.0センチメートルである。
前幅と後幅がともに36.5センチメートル、袖幅と袖口がともに22.0センチメートルである。
金銅密教法具では、三つの杵が18.5、18.8、19.4センチメートルとわずかずつ違っていた。海獣葡萄鏡では、中央が薄く外縁ほど厚いと変化が記された。
本件は、対になる部分が同じ値でそろっている。
形については、身幅が広く、袖幅や袖口が狭い小袖仕立てで、袖の丸みは縫代を糸で括って仕立てている、とされる。
葵葉は数に幅があり、葵紋は五か所に定まる
同じ植物の文様が、二通りの置かれ方をしている。
文様は、全面に大柄の葵葉を二から五枚にまとめて散らし、とされる。二枚から五枚のまとまりで、数に幅がある。
一方、両胸、両後袖、背中の五か所に三つ葉葵紋を置く、とある。こちらは五か所と定まっている。
色も分かれる。葵葉は白、浅葱、萌葱、濃萌葱の四色である。葵紋は外輪を浅葱、その内を白抜き、葉を萌葱、濃萌葱とする。
いずれも葉脈や葉の上の露は白抜きとする、と共通する。
これらはすべて縫い締め絞りで表したいわゆる辻が花染である、と結ばれる。散らした葉と定位置の紋が、同じ技法で表されている。
鑑賞
保管は徳川美術館、所有は公益財団法人徳川黎明会である。鉄宝塔では奈良国立博物館と西大寺、撃蒙抄では天理図書館と天理大学に分かれていた。本件は美術館と財団の関係になる。
仕立ても記される。表は紫練貫、裏は浅葱平絹の綿入れ袷仕立てである、とある。
袖は幅と袖口が狭い小袖仕立てで、振りはない。襟は垂領、共裂で裾まで通し、衽はない、と続く。
解説文は類品を挙げる。桃山時代末期に徳川家康より新井源左衛門威忠が拝領したとされる水浅葱練緯地蔦模様三葉葵紋付辻が花染胴服が東京国立博物館にある、とされる。
撃蒙抄では、もう一本と比べて本件が唯一の善本とされていた。あちらは優劣である。本件は同じ種類の作を並べて示している。美術館が保管する品であり、常設で公開される性格のものではない。訪問前に確認したい。
Q&A
- この羽織はいつ指定されましたか。
- 2004年(平成16年)6月8日に重要文化財へ指定されました。国宝ではなく重要文化財で、員数は1領、所有は公益財団法人徳川黎明会です。
- いつのものですか。
- 時代の欄は安土・桃山ですが、年代の欄は1601年から1700年です。区分は桃山でありながら、年代の範囲は江戸に及んでいます。
- 寸法はどのくらいですか。
- 身丈112.0、裄58.0センチメートルなど8つの数値が記されます。前幅と後幅がともに36.5、袖幅と袖口がともに22.0センチメートルで一致しています。
- どのような文様ですか。
- 大柄の葵葉を2枚から5枚にまとめて全面に散らし、両胸、両後袖、背中の5か所に三つ葉葵紋を置きます。いずれも縫い締め絞りによる辻が花染です。
- 似たものはありますか。
- あります。文化庁は東京国立博物館の「水浅葱練緯地蔦模様三葉葵紋付辻が花染胴服」を類品として挙げ、徳川家康より拝領したとされる品と記します。
基本情報
| 名称 | 紫地葵紋付葵葉文様辻が花染羽織(むらさきじあおいもんつきあおいばもんようつじがはなぞめはおり) |
|---|---|
| 所在地 | 徳川美術館(愛知県名古屋市東区徳川町1017)/当サイトの記録では所在都道府県が東京都と愛知県の2つ |
| 指定区分 | 重要文化財(美術品・工芸品)/国宝ではない |
| 指定年 | 2004年(平成16年)6月8日 重要文化財 |
| 員数 | 1領 |
| 寸法 | 身丈112.0センチメートル、裄58.0、前幅36.5と後幅36.5、袖丈51.5、袖幅22.0と袖口22.0、襟幅13.0センチメートル。表は紫練貫、裏は浅葱平絹の綿入れ袷仕立て。時代の欄は安土・桃山、年代の欄は1601年から1700年 |
| 所有者 | 公益財団法人徳川黎明会 |
| 公開状況 | 美術館が保管する品で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 紫地葵紋付葵葉文様辻が花染羽織
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/135967
- 徳川美術館 公式サイト
- https://www.tokugawa-art-museum.jp/
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.06