四国最西端に立つ大正の鉄筋コンクリート灯台
佐田岬灯台は、愛媛県西宇和郡伊方町の佐田岬半島先端に建つ大正7年(1918年)建築の鉄筋コンクリート造灯台で、平成29年(2017年)に登録有形文化財となった。灯塔の高さは18メートル、建築面積は82平方メートル。四国でこれより西に立つ建造物はない。
初点灯は大正7年(1918年)4月1日。伊方町の資料は光達距離を18.5海里としている。昭和16年(1941年)には増築が行われており、いま目にする姿は二つの時期の工事を含んでいる。
海の向こうは九州である。豊予海峡はここで幅を狭め、潮の流れが速い。行き交う船は、甲板の様子まで見える近さを通る。
佐田岬灯台が登録された理由
佐田岬灯台に適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説が挙げるのは構造そのもので、灯塔は八角形平面、灯室は円形平面とし、その上に鋼製の灯籠を置く。足元には方形の付属舎が付く。この組み合わせが、我が国の鉄筋コンクリート造灯台として初期の形式をよく残している。
灯塔が登録有形文化財に登録されたのは平成29年(2017年)6月28日。伊方町によれば、現役の灯台の灯塔がこの扱いを受けるのは四国で初めてだった。ここが実際に効いてくる。佐田岬灯台は機器を外して保存された遺構ではなく、いまも毎晩海峡に光を送る現役の航路標識であり、そのまま保護建造物でもある。
大正7年(1918年)当時、日本の灯台にとってコンクリートはまだ新しい材料だった。それ以前は石造や鉄造が主流である。塩を含んだ風が絶えず当たる岬の突端で、鉄筋を仕込んだコンクリートを打つ判断は当たり前のものではなかった。初期の現存例が注意深く調べられているのは、そのためでもある。
佐田岬灯台の見どころ
佐田岬灯台の足元まで来ると、まず気づくのは灯塔が円筒ではないことだ。八角形である。浅い角度で八つの面が接し、日が回るにつれて陰の線が面ごとに切り替わる。丸い塔のなだらかな明暗とは、見え方がまるで違う。
塔の上端で平面は円に変わり、灯室になる。ここで見ておきたいのが、灯室をめぐる手摺りと、出入口の上に付く小さな庇である。どちらにも四角形を組み合わせた幾何学的な意匠が入っている。彫って作った装飾ではない。コンクリートを流し込む型枠の形がそのまま出たもので、大正から昭和初期にかけての建築が好んだ趣味がはっきり読み取れる。
塔の下には二つの目印がある。ひとつは灯台と背くらべができる地点、もうひとつは点灯100年を記念して置かれたモニュメントだ。いずれも近年の設置で登録の対象ではないが、灯塔を見上げる位置としてはよくできている。
佐田岬灯台の見学方法
佐田岬灯台の外観はいつでも見学でき、料金はかからない。灯塔の内部は公開されていない。外観の撮影に制限はなく、東側の低い位置から狙うと、八角形の塔と開けた海がいちばんすっきり収まる。
ただし歩く。駐車場から灯台までは遊歩道が1.8キロメートル続き、片道はおよそ30分。往復に灯台での滞在を足すと、1時間を大きく超える見当になる。道は林の中を上り下りしてから海に開ける。散歩ではなく歩行である。滑りにくい靴があると安心で、岬の上に雨をしのぐ場所はない。
車では、愛媛県の案内が三崎港にある佐田岬はなはなから灯台の駐車場までを約14.4キロメートルとしている。国土交通省四国地方整備局の案内では、JR八幡浜駅から終点までバスで約65分、そこから車で約30分の椿山展望台があり、尾根越しに佐田岬灯台を遠望できる。半島のバスは本数が限られるため、最後の区間は自動車か自転車を使う人が多い。
Q&A
- 佐田岬灯台は見学できますか。料金はかかりますか。
- 見学できます。灯台の周囲は時間の制限がなく、料金も不要です。半島の道路の終点にある駐車場から、徒歩で向かいます。
- 佐田岬灯台の灯塔の中に入れますか。
- 入れません。現役の航路標識として運用されているため、内部は公開されていません。見学できるのは外観のみです。
- 佐田岬灯台まで駐車場からどのくらい歩きますか。
- 遊歩道は1.8キロメートルで、片道およそ30分です。林の中と海沿いを通り、行きも帰りも高低差があるため、歩く時間だけで1時間ほどをみておくとよいでしょう。
- 佐田岬灯台はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
- 大正7年(1918年)の建築で、同年4月1日に初点灯しました。昭和16年(1941年)に増築されています。登録有形文化財への登録は平成29年(2017年)6月28日です。
- 佐田岬灯台で写真を撮ってもよいですか。
- 外観の撮影は自由です。西面に光が回るのは午後遅い時間帯で、塔の向こうの海は船の往来が多く、待つ価値があります。
基本データ
| 名称 | 佐田岬灯台 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県西宇和郡伊方町正野2935 |
| 指定区分 | 登録有形文化財 |
| 指定年 | 2017年(平成29年)登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 高さ18メートル、建築面積82平方メートル |
| 所有者 | 国(国土交通省) |
| 公開状況 | 外観は常時見学可、無料。灯塔内部は非公開。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)佐田岬灯台
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011835
- 文化遺産オンライン 佐田岬灯台
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/247131
- 文化庁 近代の文化遺産の保存と活用 佐田岬灯台
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/058/index.html
- 伊方町 佐田岬灯台が国登録有形文化財に登録されます
- https://www.town.ikata.ehime.jp/site/rekishibunka/9086.html
- 伊方町 文化財 佐田岬灯台
- https://www.town.ikata.ehime.jp/map/rekishibunka/4042.html
- 愛媛県 八幡浜支局商工観光室 伊方町_佐田岬灯台
- https://www.pref.ehime.jp/page/35998.html
- 国土交通省四国地方整備局 四国八十八景(愛媛県)
- https://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/88-kei/en/scenery/52_ehime.html
最終更新日: 2026.09.05