最古の蔵と、海鼠壁の下屋
石田家の敷地西辺、前蔵のすぐ北に並んで建つのが西蔵で、石田家に残る蔵のうち最も古い一棟である。厚い土壁で耐火性を高めた土蔵造の二階建、桁行四間、梁間二間半、切妻造桟瓦葺、建築面積は約五十四平方メートル。東面と南面に戸口を設ける。壁は敷地に共通する白漆喰と押縁下見板だが、隣の蔵と一線を画す要素がひとつある。
東面に、味噌多聞と呼ぶ土蔵造の下屋が張り出す。桁行三間、梁間一間半、母屋と同じ土蔵造で建つ。その名の示すとおり、この下屋は家の台所を支える味噌の貯えに用いられた。東面は海鼠壁で仕上げられ、平瓦を斜めに並べ、目地を白漆喰の蒲鉾形に盛り上げた格子が壁を覆う。
登録の理由
西蔵は平成十八年、ほかの四棟とともに登録有形文化財となった。江戸末期にさかのぼる本棟は、隣り合う前蔵より一世代古い。この二棟が敷地西辺に並ぶ姿は、農家が地域一貫の構法を守りながら、時をかけて収蔵を増していった過程を示している。
味噌多聞の海鼠壁は装飾にとどまらない。瓦の被覆が土壁を雨と湿気から守り、盛り上げた漆喰の目地が水を継ぎ目から逃がす。雪深く潮の飛ぶ沿岸にあって、黒瓦と白漆喰のこの文様は、美しさをそなえた実用の鎧である。
見どころ
西側の二棟を並べて見ると差異が浮かぶ。西蔵は小ぶりで古く、下屋を伴って増改築のあとをとどめる不定形の輪郭を持ち、南の前蔵は棟に笏谷石を戴く。二棟あわせて、見せるための構えではなく、働く収蔵の庭として読み取れる。
探すべきは下屋東面の海鼠壁の斜め格子である。黒い瓦と盛り上げた白漆喰が張り詰めた網目をなして交差する。蔵は個人の住居に属し立ち入れないため、敷地西辺が見える位置から道越しに眺めたい。
Q&A
- 海鼠壁とは何ですか。
- 平瓦を斜めに壁面へ張り、目地を白漆喰で蒲鉾形に盛り上げた壁です。湿気から壁を守りつつ、黒と白の格子模様をつくります。
- 下屋は何に使われたのですか。
- 味噌多聞と呼ばれ、味噌を貯えるために使われました。「味噌」に、細長い付属の棟を指す「多聞」を重ねた名です。
- 前蔵とはどう違いますか。
- 西蔵は江戸末期にさかのぼるより古く小ぶりの蔵です。南隣の前蔵は明治前期で、棟に笏谷石を載せます。
- いつの建築ですか。
- 江戸末期、およそ一八三〇年から一八六七年で、石田家の蔵のなかで最も古い一棟です。
- 内部に入れますか。
- 入れません。石田家住宅は個人の住居で非公開です。蔵は道路からの外観のみご覧いただけます。
基本情報
| 名称 | 石田家住宅西蔵(いしだけじゅうたくにしぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 福井県福井市川尻町33-87 |
| 区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録年月日 2006年10月18日 |
| 時代 | 江戸末期(1830-1867) |
| 構造・形式 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約54㎡。桁行四間・梁間二間半、切妻造、東面に海鼠壁の味噌多聞が付く |
| 員数 | 1棟 |
| 登録基準 | 国土の歴史的景観に寄与しているもの |
| 公開状況 | 個人住居につき非公開。外観のみ |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 石田家住宅西蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005837
- 文化遺産オンライン(文化庁) — 石田家住宅西蔵
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/185743
- 公益財団法人 歴史のみえるまちづくり協会 — 石田家
- https://www.fukui-rekimachi.jp/category/detail.php?post_id=27
最終更新日: 2026.07.04