ジョーキュウ醤油とは ― 福岡・大名に残る醤油醸造場の6件

ジョーキュウ醤油は、福岡県福岡市中央区大名1丁目にある安政2年(1855年)創業の醤油醸造場で、敷地に残る建物と工作物の6件が平成27年(2015年)3月26日に国の登録有形文化財に登録された。6件は仕込蔵・米蔵・表座敷・裏座敷・煙突・若宮神社で、年代は寛政4年(1792年)の若宮神社から昭和前期の裏座敷までにわたる。

所有者は株式会社ジョーキュウである。会社の沿革によると、松村家「楠屋」の分家として松村半次郎が旧紺屋町に「楠屋醤油」を開いたのが始まりで、明治43年(1910年)に三代目の松村久吉が、自分の名の一字に「上等」の意味を掛けた「上久」の商標を登録した。ジョーキュウという社名はこの商標の読みから来ている。組織は大正15年(1926年)に合名会社松村久商店となり、平成元年(1989年)に株式会社ジョーキュウへ改められた。

大名は福岡城の東にあたる町で、会社の案内は、城の堀から那珂川まで延びていた大濠の西、紺屋町堀(中堀)の南という位置を示している。天神の繁華街に隣り合う一角だが、ジョーキュウ醤油は創業からずっとこの場所で醤油を造り続けてきた。

ジョーキュウ醤油の敷地と6件の配置

文化庁の解説文は、各棟の位置を敷地の中の方角と隣の建物を手がかりに書いている。つなぎ合わせると、ジョーキュウ醤油の6件は次のように並ぶ。

  • 仕込蔵(文久2年・1862年):敷地の中央、米蔵の東に南北棟で建つ大型の土蔵。いまも醤油の仕込みに使われている
  • 米蔵(明治4年・1871年):敷地の中央に建つ2階建の土蔵で、南の中庭へ出入口を向ける
  • 表座敷(明治前期):敷地の南西隅に建つ2階建の接客用の座敷
  • 裏座敷(昭和前期):敷地の西辺、表座敷の北に建つ2階建の座敷
  • 煙突(大正4年・1915年):敷地の南東、火入れ場に残る煉瓦造の煙突
  • 若宮神社(寛政4年・1792年):敷地の東辺中央、切石積の壇の上に建つ小さな社

醸造の蔵、道具を納める蔵、客を迎える座敷、住まいとして使われた座敷、火入れの煙突、屋敷の社と、醤油屋の仕事と暮らしに要るものが一つの敷地にそろっている。登録基準は、煙突が「造形の規範となっているもの」、残る5件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

年代順に見ると、若宮神社の寛政4年(1792年)は創業の安政2年(1855年)より60年あまり早い。創業から7年後に仕込蔵、明治に入って米蔵と表座敷、大正に煙突、昭和前期に裏座敷が加わった。各棟の造りと見どころは、それぞれのページで扱う。

ジョーキュウ醤油の歩みと、焼け残った建物

会社の沿革には、醸造場の規模の移り変わりも記されている。大正4年(1915年)に高さ19メートルの赤煉瓦の煙突を築き、大正末から昭和初期にかけて仕込タンク34基、桶102本を構えるまでになった。

転機は昭和20年(1945年)の福岡大空襲である。周囲を大火に囲まれ、現在の社屋の南北にあった仕込タンクと桶の並ぶ各棟が全焼した。登録された6件は、この火災をくぐり抜けて残った建物ということになる。

平成元年(1989年)には新しい社屋を建て、平成3年(1991年)にその本社社屋が福岡市都市景観賞を受けた。平成17年(2005年)の福岡県西方沖地震では煙突の上部が崩れ、高さは9.5メートルになっている。国の登録は、創業160年にあたる平成27年(2015年)のことだった。

道をはさんだ北側には、三代目久吉の自宅として昭和11年(1936年)に建てられた松村家住宅があり、主屋・洋館・土蔵・門及び塀の4件が同じ日に登録されている。会社は、住宅改良会の設計による昭和初期の和洋併設住宅として紹介しており、現在は「松楠居」の名で使われている。

ジョーキュウ醤油を訪ねるには

ジョーキュウ醤油の本社と小売館は福岡市中央区大名1丁目12-15にあり、登録された6件はこの本社の敷地に建つ。登録上の所在地(大名1-330-1ほか)は地番による表記である。福岡県の公式観光サイト「クロスロードふくおか」によれば、西鉄の天神駅(西鉄福岡(天神)駅)から徒歩約10分で、駐車場はない。

小売館の営業時間は午前10時から午後6時で、日曜と祝日が定休日となっている(会社の直営店案内、2026年9月確認)。公益社団法人福岡県物産振興会の紹介は、小売館を併設し、登録有形文化財の建物などを見学できるとしている。クロスロードふくおかも、明治期の土蔵や母屋、創業当時の道具類、大名の歴史を伝えるパネルを見られると案内している。

ただし、見学できる範囲や時間、撮影の可否を定めた公式の案内は見当たらない。ジョーキュウ醤油はいまも醤油を仕込んでいる工場で、仕込蔵は現役の醸造蔵である。訪ねるときは小売館の営業時間内に店で声をかけ、見てよい範囲と撮影の可否を確かめてから敷地に進みたい。

毎年5月には、会社の恒例行事「ジョーキュウのれん市」が開かれる(クロスロードふくおか)。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油仕込蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010531
文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油米蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010530
文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油表座敷」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010527
文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油裏座敷」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010528
文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油煙突」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010533
文化庁 国指定文化財等データベース「ジョーキュウ醤油若宮神社」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010532
ジョーキュウ「登録有形文化財」
https://www.jokyu.co.jp/history/property/index.html
ジョーキュウ「ジョーキュウの歩み」
https://www.jokyu.co.jp/history/index.html
ジョーキュウ「直営店」
https://www.jokyu.co.jp/shop/index.html
ジョーキュウ「会社概要」
https://www.jokyu.co.jp/company/about.html
公益社団法人 福岡県物産振興会「醤油 ジョーキュウ」
https://www.bussanfukuoka.jp/member/member-338/
クロスロードふくおか「株式会社ジョーキュウ」
https://www.crossroadfukuoka.jp/spot/10803

最終更新日: 2026.09.30

基本情報

名称ジョーキュウ醤油
所在地福岡県福岡市中央区大名1丁目
所有者株式会社ジョーキュウ
指定登録有形文化財 6件
座標33.58794, 130.39510